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そうして、典華がこの家に来て、二十五年もの歳月が経った。
そんなある日、典華が男の幽霊を家に連れてきた。そう、男だ。
おかげで亜津沙や杏那は大慌て、俺は腰が抜けた。盟典は俺から話を聞いてあんぐりと口を開けている。
この時、何ともおかしな絵面が完成した。
「恋人とかそう言うんじゃねぇから!ただの友達だって言ってるだろ!」
そう典華が叫んでも、亜津沙と杏那はキャーキャーと騒ぎたて、盟典の思考回路は今は正常では無いらしくポカーンとしたままだ。それは勿論、俺も例外では無く、盟典と共に思考を放棄していた。
「大体俺のタイプはこんな、ちょっと馬鹿な感じの奴じゃねぇから!」
『ばっ、馬鹿?え?』
典華は男の幽霊を指さしてそう叫ぶ。男の幽霊は馬鹿と言われて少々ショックなようだ。
この一言で俺と盟典は、ハッと現実に戻されたような感覚がした。亜津沙と杏那もこれで落ち着くと思ったんだが、現実はそうも上手くはいかなかった。
『じゃあどんな人がタイプ?!』
目をキラキラと輝かせた亜津沙と杏那が典華に詰め寄り、奥の部屋へと連れ込んで行った。
『珈琲でも飲むか?』
『はい』
男の幽霊が少し可哀想に思えて、肩にそっと手を置き、俺は一言、そう言った。男の幽霊は少し細々とした声で二つ返事をした。
男の幽霊、晶斗も、何だかんだでこの家に住み着いた。
晶斗は、生前の記憶がしっかりと有るらしく、生前はマジシャンをしていたそうだ。だから、『俺の未練はもっと沢山の人を笑わせたいって事だと思う』と言っている。