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「『恋愛というか、人間関係の相談です』…?まじか。」
はい、出ました。私の苦手分野。
人間関係は兎も角、恋愛経験が一切無いからなぁ。
うーん、かなり手間が掛かりそう。
よし、ここは手っ取り早く…!
『ご相談料は3万円となりますが、よろしいでしょうか?』
ここまでぼったくれば(?)流石に良いとは言わな…
ピコン
『はい、是非とも宜しくお願い致します!』
…まじか。
「ということがありまして…こういうのってどうすればいいんかね」
「んー、俺もそういうのはわっかんねぇなー…」
「………色んな女の子からモテた挙句、『私と違って』元カノも何人か居るのに?しかも友達いっぱいいるし」
こうなったら皮肉たっぷり言ってやる
「…お前、黙れ」
こちら、私の幼馴染であり、この学校で唯一同じ『園芸部』である『草津 悠希(くさつ ゆうき)』。
あ、ちなみに私は『露原 莉乃(つゆはら りの)』。
「えー悠希の恋バナ聞きたいなぁ…」
「なんでそうなんだよ」
「なんか気になるじゃん?幼馴染の恋愛事情とか。てか、今好きな人居ないの?」
「え。それは…まぁ、うん」
「おぉー………いいよねぇ、学校で恋バナって」
「本当はしたくないんだけど。」
「まぁいいじゃんいいじゃん、どーせ部員うちらしか居ないんだし」
「顧問来たらどうすんだよ」
「…そんときはそんとき?私に被害無いし」
「お前なぁ………」
あ、ちなみに家族以外で「相談室」のことを知っているのは、この悠希と顧問(校長)のみ。
つまり、「相談室」のことを知っているのは園芸部の人だけなのだ。
…まぁ、園芸部ってのも表向きってだけで、実際は相談室の事ばかりやってるんだけどね。
顧問もおっとりとした信頼出来る先生だし、何よりも校長先生なので、今のところ問題は無い。
「それに、顧問無しじゃ『この部室とお庭』も見れないし使えないからねぇ…」
そう、今いる「部室」は凄く綺麗な庭園みたいな感じになっている。
隣が図書館になっていて、更にパソコンまでご丁寧にある為、調べ放題!
そこを通って部室(庭園)に辿り着く。
顧問の趣味なんだとか。
そもそもこの部室の存在自体、学校内でも知っている人は私たちだけではないのだろうか。
その代わり手入れしてと頼まれているのだが。
だから”表向きは”園芸部ということになっている。
元々「相談部」にでもして部活を立ち上げようと思ったのだけれど。
校長先生に申請の際相談したら、なんな色々あってこうなっていた。
秘密基地みたいな感じになってて、私は凄く愛用させて頂いてます。ありがとう校長先生。
というか入部希望されても、これ以上相談室のことを外部の人に話したくない事もあって困るから、部員を増やす気も更々無いんだけども。
「まぁ俺の恋愛事情は置いといて」
「えぇー…」
「はいはい文句言わない、そもそも引き受けたのだってお前だろ?」
「いや、だからそれは高い相談料出したら引いてくれるかなーって…」
「それでOKされたら引き受けたことになるんだっつーの!」
「うっ…」
まぁ、いつものやり取りですね。はい。
「で、DMなんて来てたんだよ?」
「んとねー…」
『初めまして。
ここはなんでも相談可能だと聞きました。
僕には好きな人が居ます。
でも、その好きな人には過去に恋愛に対してのトラウマがあります。
それで浮気されたことがありましてね。
彼女は「もうわかんない。恋愛がなんなのか。”好き”って何、?」って言っていました。
彼女がこんな状態なので、自分の想いを彼女に伝える気はありません。
彼女の”恋愛に対してのトラウマを克服する方法”を教えてください。』
「だってさ。」
「いやいや、「だってさ。」じゃなくて。案件持ってきたのお前な?」
おっしゃる通りです。悠希さん。
「でも、あれだけ値段ぼったくったのに、OKするって、相当この女の子のこと好きなんだね。この人。」
「うーん、この値段でOKしたって、なんか裏があるような気すっけどなぁ…」
「うーん、裏かぁ、例えば、?」
「例えば、ねぇ…法に触れるようなこととか?」
「あー…裏垢とかそこら辺?被害多いって聞くよね。SNSが関連してくると余計に。」
法に触れるようなこと。
いや、私たち弁護士じゃないのですが。
「とりあえず、詳細聞いてみたら?」
確かに悠希が言うのも一理あるか。
『改めまして、この度はこの「相談室」をご利用下さり、誠にありがとうございます。
相談者様だけのDMだと、まだ判断しかねる部分がございます。
相談者様からお金を頂いているからには、そんな無責任なことは出来ません。
現段階で話せる範囲でも構いませんので、もう少し詳しい内容を教えて頂けませんか?』
こんなもんでいいかな。
「…悠希はさ、これ、どれぐらいの日数で解決出来ると思う?」
なんとなく気になった。
「…今はなんとも言えないかな。…一週間掛かんないといいけど。」
悠希はそう呟いた。
悠希にもそういう経験があるのだろうか。
幼なじみでも、意外に知らないことも多そうだな。
「今は相談者のDMを待つことしか私たちには出来ないんだよね…」
「…まぁ、そうだな。」
謎の沈黙。
でも、この沈黙さえも心地よく感じてしまう。
昔からの仲だからだろうか。
まぁ、何れ分かる時が来るだろう、
「…とりあえず、他の相談依頼の方を解消しとこっか。」
「…そうだな。」
そして、2人はPCと向かい合ったのだった。