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_誕生日、前日
「うーん…みぞれさんって、何なら喜ぶんだろう…」
レイマリは、みぞれの誕生日プレゼントを買おうと、街を彷徨っていた。
「うーん…」
「どうしよう…」
シェアハウスを始めて半年、レイマリは悩んでいた。
「…せっかく私も成人したし、何か高いものとか買いたいなぁ…。 」
「…通りにでも入ってみようかな…普通のスーパーとかデパートじゃ、なんか違う気がする…」
レイマリは悩みながらも、小さな通りに入る。
_道は狭いが、長い通りだ。
普通の住宅街くらい静かで、あまり人通りもないように思う。
レイマリは考え込みながら、段々と人が少なくなる道を歩いた。
「…ん…」
気が付くと、古い内装がガラス越しに見える建物の前まで来ていた。
「…これは…?」
_壺や家具等、どこか古めかしいものが沢山並んでいる。
なんとなくだが、これだ_そう思い、骨董品屋らしき店の扉を開けた。
チリンチリン、と鈴の音が鳴り、しばらくして老人が裏からカウンターまでゆっくりと歩いてくる。
「いらっしゃいませ。」
大分歳の行っていそうな老人は、ゆっくりとそう言った。
レイマリは店をを見て回る。
壺、皿、カメラ_色々なものが並んでいる。
だが、奥の方に一際美しい、宝石の入った腕時計があった。
(…きれい…!!)
レイマリはすぐに、それを手に取る。
針はズレて止まっているが、幸いなことに調整できそうであった。
レイマリはすぐにそれを手に取り、老人が経つカウンターへ向かう。
「…5万円だよ。」
レイマリはその値段に少し驚きながらも、誕生日だから、いつもメンバーからは貰ってばかりだからとクレジットカードを出す。
会計が終わった後、何気なく聞く。
「…この宝石って、なんなんですか?」
老人はすぐさま答えてくれる。
「あぁ、その宝石は”ブルージルコン”って言ってね。」
「カンボジアから仕入れたんだよ。」
「…そうなんですね…!綺麗…」
「お嬢ちゃんは若そうなのに、ありがとうねぇ。」
「…それと、それの扱いには気をつけてねぇ。」
「凄く繊細なものだから_。」
「…はい!ありがとうございます!!」
レイマリはウキウキした様子で外へ出ると、足取り軽くシェアハウスへと向かった。
_16時
「ただいまです!」
レイマリがご機嫌な様子で帰ってくる。
「…お、おかえりなさい。」
桃色のツインドリルの少女_菓子が、暗い表情でそう返す。
レイマリは異変に気が付くと、困った様子で聞く。
「…え?どうし、たんですか?」
_今日の夕食の材料を買おうと、メテヲとみぞれが出かけている時であった。
___
「…あ、あぁ、ぁ」
メテヲは、横断歩道の端の方で、動けずにいた。
信号機の音
人々の怒号と悲鳴
警察がそれを静止する音
夕日を写す純白の髪に付着する、夕日よりも残酷な紅
「…いや、いやだ、みぞれ、さ…」
「そんな…嘘、でしょ…?」
4人の救急隊員と、5人の警察がみぞれを取り囲む
「そこの方!!大丈夫ですか!?」
1人の警察が、メテヲに声をかける
かすり傷からくる嫌な痛み、そしてこちらを心配する警察の声すら、かき消されてしまう。
視界も、音もぼやけていく
憎しみだけが、塗りつぶしていく
_どうして
どうして彼女が、こんな目に遭わないといけなかった?
「…う、うぅ、うっ…」
涙が溢れ、一切止められなくなる。
溢れ続ける、吐きそうになる
「おえ…っ…」
この現実を、受け入れるのが苦しい。
受け入れたくない
嫌だ、出来ることなら、みぞれをこんな目に遭わせたあいつを殺してくれ。
そして、みぞれを庇えなかったメテヲを
呪ってくれ。
___
居眠り運転だった。
犯人には、相応の罪が下された。
だが、彼ら彼女らの心が晴れることは無かった。
本人のいない誕生日を迎えた。
_最悪だった。
各々が、贈るはずだったプレゼントを出した。
だがそれを受け取る人は、もうここにはいない。
誕生日が終わると、リビングには誰1人来なくなった。
ただ静かで、皆で大好きだったゲームをするなんて一切なくなってしまった。
1ヶ月
それくらいの時間が経っても、リビングで顔を合わせるのはせいぜい2人か3人だ。
もう、誰かが楽しそうに話すことはない。
(……ねぇ、やり直したいよ。)
レイマリは後悔で頭がおかしくなりそうであった。
いや、とうに正気は、無くなっていたかもしれないか_
(…魔法でもあれば、良かったのに)
(…魔法があったら、みぞれさんは…)
(助かるなら、なんでもするから、魔法でも、なんでもするから…)
(…もう、消えたいよ…助けてよ…)
「…う、うぅうっ…みぞ、れさん…」
レイマリは、しばらく苦しみ泣きながらも、考え込んだ。
そして、思い出す。
(…あの人、この時計の扱いに気をつけて、って言ってた、よね)
(…これ、なら…)
(これが…魔法だったら… )
レイマリは、針が合わさった時計の、針を動かすパーツに指を置く。
そして__
回す。
___
メテヲは、貰った診断書を自分の部屋の床に投げ捨て、ベッドに入り込んだ。
そうして、何時間も、天井をただ眺めていた。
ここから、もう動きたくない
ここから動いたら、また誰かを_
そう思い込んでしまう。
気づけば窓から差し込む光は消え、今が夜であることに気がつく。
その瞬間であった。
頭に、激痛が走る。
「…うっ!!がぁ…!!!?」
「な、に…?」
キーーン!!と強い耳鳴りが脳内で絶えず響き、何度も意識を失いそうになる
「な、にが、おこって……?」
メテヲは抗おうとした、だがそれも虚しく、ただ_倒れるように眠りについてしまった。
_それが、始まりだったのだ。