テラーノベル
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_最初のうちは、何も問題はなかった。
事故が起こる前のまま、”ソレ”だけが消された別世界”が始まったのだと、そう思い込んでいた。
だが、そんなに都合のいい”魔法”など存在しなかったのだ。
_ループの最後には、必ず”タヒ”があった。
レイマリとみぞれだけが覚えているループの最後に、レイマリはタヒに、みぞれだけが最後まで生き残る
そうして最後に、みぞれの悲痛な叫びが耳に届き、眠る。
_それは唯一、みぞれに灯る魂だけが、事故、そしてそこから肉体が消失するまでを、覚えているかのようであった。
10回ほど繰り返して、このループは、みぞれを中心に動いていることに気がついた。
(…ごめん、なさい。)
みぞれが苦しむところを見るのは嫌だった。
だが、この一瞬の夢に、魔法に、縋っていたかった。
_その数はいつしか100を超えていた。
何度繰り返しても、固定された結末だけは、変わることはない
_そんなことはわかっていた。
時空が、段々と歪んでいく。
200を超えた頃から、みぞれがおかしくなっていった。
軽い頭痛を訴え始めたのだ。
(…大丈夫かな。)
_だが、50回程は、それだけだった。
253回目、みぞれがずっとふらついた様子に変わった。
__何度、やり直したっけ?
レイマリももはや、どうして何度も繰り返しているのか、分からなくなっていた。
「何か、あったんですか?」
レイマリは罪悪感に苛まれながら、そう聞く。
(…ごめんなさい、ごめんなさい…)
「あの、ロキソニンとか、いりますか?」
みぞれをなるべく気遣った。
だが、みぞれの魂が、どんどん、どんどんと歪んでいくような気がした。
「わかりました!」
_
(…もう、時間なんて残されてないよ… …なんで、私は…私は…… )
「……ごめん、っなさい…」
レイマリは、リビングに入る前、そう小さく、誰にも聞こえないように呟く。
そして、息が詰まる。
(……どうして、こんなことをしてしまったんだろう?)
レイマリはいつしか、このループに陥れてしまったことを強く後悔し始めた。
_そして、みぞれに会うのが怖くなった。
頭ではわかっていた。
このみぞれは、偽物であると。
本物は、もう居ないのだと。
わかっているくせして、ぐるぐる迷う自分が嫌だった。
時空は歪む
_そして、”本来の”、事故があった記憶が、混ざり込んでいた。
___
255回目のループの事だった。
メテヲは、いつもの朝だと思い込んで、目を覚ます。
だが、自身の部屋の床に、今までなかったはずの”少しくしゃしゃになった紙”が裏返しになって放置されている。
メテヲは瞬間、ひどい悪寒が走り、紙を拾い上げた
_それは
“心療内科の診断書”だった。
_単純性PTSD
メテヲの、診断名。
255回目のループから脳内にあった”違和感”
それが、突如頭の中で顔を出し、殻を破った。
_そうして、メテヲは、全てを思い出した。
(…みぞれさん_)
これは、このループを終わらせ、みぞれに現実を突きつけるということだ。
これが、正しいことだとは思わない。
だが、終わりは、せめて、自身を呪ってしまえばいい。
みぞれの”魂の終わり”を突きつける_という、自分への呪いをかけてしまえばいい。
(…行かなきゃ)
(…メテヲが、せめて…)
みぞれさんの呪いを、解いてあげなければ。
____
…
泣き疲れて眠った後、みぞれははっきりとした意識を持ったまま_冷たい声の女がいる場所にいた。
みぞれは、上げられなかった頭を上げ、女の見えなかった顔を見た。
そこには_自分がいた。
目はタヒんでいるが、こちらを少し睨んでいる、そんな”自分らしきなにか”。
彼女は、言葉を発する。
「…▋▋▋リさん、これが、最後になると思います。」
「…きっと、貴方が望むような結末は訪れない。」
その声は、あの時よりもいくらか…あたたかいものだった。
「_けれど、あなたを支えてくれる仲間がいます。」
「…だから、だからどうか、この夢を_」
「終わらせてあげてください。」
「_”あの子”が、精神を完全におかしくしてしまう前に。」
やはり、確信が揺らぐことはない。
これは、自分に向けられた言葉ではない。
これは_レイマリに向けられたものだ。
自身の体を見る。
_黄緑の、服を着ている。
頭あたりを軽く触れば、自分とは正反対の、ショートヘアをしている。
ループの中で、みぞれと同じくらい苦しむ、彼女に向けた”言葉”
ずっと、蔑みの言葉なのか、そう思っていた。
だがこれは、”警告”で、ある種の”救い”でもある。
_彼女は、返そうとする。
そうして、”みぞれ”は確信する。
意識はみぞれだが、身体は_レイマリの形をしていること。
初めて、女に対し言葉を紡いだ。
「…あり、がとう、ござい、ます。」
そういうと、みぞれらしきなにかの表情は、少しばかり安らかなものへ変わると、身体をノイズが侵食し始める
それは目を、口を、鼻を、手足を
最後に耳を侵食し、冷たい声の女は、忽然と姿を消してしまった。
次第に彼女のいる部屋が、真っ黒に染まっていく。
視界は揺らぎ、明滅し、倒れ込んでしまう
心臓にまで届く時計が、また聞こえてくる
カチ、カチ、カチ、カチ
それは心臓の鼓動に重なったかと思うと、次第に弱まり、最後には_消えた。
(…もう、最期だ。)
(もう、受け入れるしかないんだ_。)
そう思い、彼女は、この部屋に別れを想い、目を瞑った。
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