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椎名遥陽~はるひ~
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「おーい、快斗おぉお!! また青子の机にハト仕込んだでしょ!」
「おっと失礼、可愛いレディへの朝のサプライズさ!」
朝からいつも通り快斗と青子が教室内を大声で追いかけっこしている。その喧騒をBGMに、窓際の一番後ろの席で、工藤翔はいつものように少し猫背で机に突っ伏し、気だるげに寝息を立てていた。
そこへ、一人の女子生徒がドカドカと足音を荒げて歩み寄ってくる。ポニーテールを快活に揺らしたその少女――柊杏奈は、翔の机の前に立つなり、容赦なく彼の背中をバシッと叩いた。
「おら起きて、翔! 朝から死んだマグロみたいな顔してんじゃないわよ!」
「……痛っ。朝からゴリラ並みの破壊力で叩くなよ、杏奈……。脳震盪起こすだろ」
翔が薄く目を開け、けだるげに杏奈を睨み返す。
「誰がゴリラよ! あんたが夜更かしばっかりして学校で使い物にならないからでしょ。ほら、これ!」
杏奈はフンと鼻を鳴らし、購買で争奪戦に勝ってきたという焼きそばパンを翔の机に乱暴に放り投げた。
「あんた、朝ごはん抜きで来たんでしょ。倒れられたら迷惑だから、これでも食べてシャキッとしなさい!」
「わ、焼きそばパンじゃん。……サンキュ。やっぱり杏奈は俺の飼育員さんとして優秀だなー」
翔がニヤリと不敵に笑いながらパンの袋を開けると、杏奈は顔を真っ赤にして拳を握りしめた。
「誰が飼育員よ! 感謝の言葉に余計な一言を混ぜるな!」
「あはは、怒るとますますゴリラっぽい」
「あんたマジで一回表に出なさい!!」
ギャーギャーと騒ぎ始める二人を、少し離れた席から見ていた快斗が「お、あっちも朝から盛んにやってるねぇ」と青子に笑いかけ、青子も「ほんと、翔くんと杏奈ちゃんも快斗たちみたいに落ち着きがないんだから!」と笑っている。
【放課後:それぞれの連絡、変わらない距離】
放課後、夕日に染まる教室。スマホが震え、翔が画面を見ると、新一と平次からそれぞれメッセージが届いていた。
『蘭の空手の付き合いで遅くなる。函館の件、親父が面白がってたぞ。じゃあな』――新一
『和葉の買い物に付き合わされてクタクタや! 翔、また東京行く時は美味いもん奢れよ!』――平次
それぞれ蘭や和葉に振り回されつつも、文句を言いながら一緒にいるのだろう。翔が苦笑しながらスマホをポケットに仕舞うと、背後から杏奈がカバンで翔の頭をぽんと小突いた。
「何ニヤニヤしてんのよ、気持ち悪い。帰るわよ、翔」
「はいはい。カバンで人を叩くの、いい加減やめろよな」
校門を出て、夕暮れの街を二人で並んで歩く。歩道側を歩く時、翔はさりげなく杏奈を車道側から庇うように位置を変える。普段は小競り合いばかりだが、翔の内面にある強い情と優しさを、杏奈は幼馴染として誰よりも分かっていた。
「……ねえ、翔」
「ん?」
「あんたさ、新一くんの『調べ物』だかなんだか知らないけど、たまにボロボロになって帰ってくるじゃない。……あんまり無茶すんじゃないわよ。あんたに何かあったら、誰が私の荷物持ちすんのよ」
不器用な、杏奈なりの心配の言葉。翔(怪盗CAT)の裏の顔は知らないはずだが、彼女の直感は翔の危うさを察している。翔は一瞬だけ目を見開いたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻り、彼女の頭をくしゃりと撫でた。
「安心しろよ。ゴリラな杏奈の荷物持ちができるのは、世界で俺くらいだからな。どこにも行かないよ」
「……っ、ちょっと、髪型崩れるでしょ!! あとゴリラって言うな!」
真っ赤になってポカポカと翔の腕を叩く杏奈と、
「痛い痛い、マジで力が強いって」
と笑いながら逃げる翔。新一&蘭、平次&和葉、快斗&青子がそうであるように。「好き」なんて言葉はまだ口にしないし、付き合ってもいない。けれど、お互いが隣にいることが当たり前で、誰よりも大切で――そんな、騒がしくも愛おしい二人の日常がそこにあった。
コメント
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みぅ🤍🥀です🌙 第16話、読ませていただきました。 翔と杏奈の関係性、めっちゃいいですね…! 朝から焼きそばパンを投げつけるツンデレっぷりと、それを「飼育員さん」ってニヤニヤしながら返す翔の距離感が、読んでてこっちまでニヤけちゃいました。放課後の帰り道、さりげなく車道側を歩く翔の優しさが、普段の小競り合いからは想像できないギャップでグッときます。「どこにも行かないよ」って…杏奈への不器用な愛情表現、素敵です。 幼馴染の日常って、こんなに尊いんですね。次も楽しみにしてます🥀