血なまぐさくて、暗い。自分の手と、それによりしっかりと握られた凶器は、鮮やかな赤で彩られている。この状況が殺人と革命の証だ。
「はは、ざまぁみろ…」
無理矢理絞り出した乾いた笑いは、自己を正当化するにはあまりにも不十分だった。
なにか液体が頬を伝った。あたかも自らの輪郭を曖昧に溶かしていくかのように。
汗なのか涙なのか、はたまた血か。
それを証明したのは右目の痛みだった。右目に空いた穴は、こいつの歪んだ空っぽな愛情の行き着いた先だ。いや、こいつに愛情なんてなかった。愛していたと、そう認めさせるためだけのものだろう。
そんなことを考えても、唯一真実を知りえる奴は自分が殺したのだから答えは分からない。
もう動かない体に手を伸ばして、奴の眼帯に手をかける。しゅるり、と布の擦れる音を聞きながら眼帯を取った。
「お前は、俺を気にとめたことがあったか?」
痛む右目に眼帯の布を当てると、じわりと血が滲んで広がるのが分かった。手を頭の後ろへ回し、紐を結んだ。
何も感じなかった。
『形見』と呼ばれるものだというのに、身につけようが何も感じなかった。
やっぱり親としての愛情なんてなかったんだな。
と、実感した。悲しくもならなかった。雪が静かに降り続けるように、淡々としていた。
「愛しているよ。多分。」
「貴様などに私は殺せない」
「お前は悪だから、これでよかったんだ。寂しくなるなぁ」
頭の中に声がなだれ込んだ。
その声の1つはこいつだ。
「俺は愛してねえよ。多分。」
「それが全てか?」
「ああ、深く聞かないでくれよ。デレカシーの無いレイシスト野郎だな。」
ソ連は奴――ロシア帝国を殺した事は確かだと、ナチスに言った。
ナチスは少し考えた後、顔を上げた。
「…こんなことが有り得るのか?」
「どうしたんだよ、」
「いや、憶測なんだが、少しいいか?」
ナチスはそう言って、
ナイフを持って振りかぶった。
、、、次の瞬間、ナチスの腕は氷の膜に包まれていた。
「予想通りだ。」
「何が予想通りだ!殺そうとしてただろ!」
「それよりコレ、解いてくれ」
ソ連は怪しみつつも能力を解除した。氷が割れた音がした。なのに残骸など無く、そのまま消滅するのだから不思議なものだ。
「今、どのように能力を使った?」
「どのようにって?そんなこと言われても普通に」
「お前だけおかしいのだ。」
「は?」
「能力名を宣言せずに能力を発動できるのはお前だけだ。」
そう、能力は言葉をトリガーに発動する。
イギリスのような能力の場合は、扱いが難しそうに感じるが、精神に干渉しているために不都合は無い。
だが、ソ連は能力名の宣言なしに能力を発動させてみせた。しかもコイツの能力はたまに制御がきかなくなる。
「その能力はお前のものじゃない」
「な、何を言ってるんだ?ふざけてるのか?」
「ずっと違和感はあった。
眼帯を外してみろ」
ソ連は動揺しながらも、眼帯を外した。
「まさか…!」
ソ連は何かに気がついたように手を振りかざした。その後手を下ろし、ナチスを見た。
「能力が使えない。お前の思った通りみたいだな」
「コレを通じてロシア帝国からお前に能力が渡ったのだろう。」
「……」
ソ連は分かった瞬間にはかなりの動揺を見せたが、すぐに冷静さを取り戻して、ナチスから眼帯を奪うように取った。
「なんだ、思ったよりも冷静だな?」
「今は悩んでる場合じゃないだろ。『1つ目の記憶』を持ってる俺らはどうすればいいんだ?殺しに来いと言われても、第一、何処に」
「あの山で良いだろう。そして、アイツらは私達が望めば何処にでも現れるさ。」
「はあ?どういうことだ?」
望めば何処にでも現れる。
それはまるで心を読まれているようじゃないか。しかもこちらの都合のいいように動くだなんて。
「ずっと思っていたんだ。黒幕は誰だろうと。よく考えれば簡単な話だった。」
「黒幕?」
「アメリカと日帝を山に誘導したのは誰だった?犯人を殺すのを止めたのは誰だった?犯人を見張っていたのは誰だった?そもそも、失踪事件なんかで全員を集めたのは誰だった?」
「黒幕はあの2人だって言いたいのか?」
「本気で殺してください私のことを!」
アメリカと離された。
イギリスは目の前の青年を見据えて、どこか恨めしそうに口を開いた。
「大英帝国…」
コメント
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なんか多少書き方変わってるけど気にしないでください
やばい今回も最高すぎる...✨️ 次回楽しみすぎッッ