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お姉さんが自分のお父さんの元へ話し合いに行く前、私はお姉さんよりも一時間程度早めに家を出て、待ち合わせ場所に行った。待ち合わせた今日のパパ活相手は、さとうわかな、という三十六歳の男だった。佐藤羽奏と漢字では書くそうだ。
その人は事前に予定を立てた時から、体の関係を求めてきた。会って早々も初っ端から、幼い女である私と身体の関係を持ちたいと話した。しかも、周りの人にバレないようにだろうか。小声で話してきたのだ。いい加減して欲しい。
私は早く家で殺したかったため、お姉さんの部屋で殺そうと、私の家に来てもらうことにした。
だが羽奏は、自分の家がいいと言い張った。何故かと理由を聞いたところ、小さな女の子の家に急に行くのはハードルが高い、ホテルに小さな女の子と一緒に行ったら通報される、とのこと。急に身体の関係せがむ奴がほざくなとは思ったが、これも金のためだ。私は我慢してそいつの家に行くことにした。
羽奏の家はマンションの三階だった。三階へ階段へ行くと、前で案内していた羽奏が左へ曲がり、一番奥の部屋へと入った。
羽奏は着いて早々、自身の部屋に行き服を脱ぐことを指示した。だから私は、羽奏が案内した部屋へと入り、そこで下着姿になり、お姉さんが買ってくれたセーラー襟の青い服を綺麗に畳んでバッグに綺麗に入れた。バッグの中には私がお姉さんに買ってもらう前の服が入っており、その服に着替えた。その服と一緒に、包丁を取り出した。
セーラー襟の青い服は長めに畳み、バッグの中へ無理矢理にでも入れた。
すると、丁度いいところに羽奏が来た。
「ごめんね〜奇縁ちゃん。今来た、よ………、っぇ?」
私は右手に包丁を持っているため、その包丁を見て羽奏は驚きで固まっている。私は走って羽奏の元まで行き、その勢いで腹に包丁を思いっきり刺した。羽奏は痛そうに汚い声をあげ、しりもちをついた。
そして私はいつもと違い、口を塞がずに首元を包丁で刺した。何度も何度も。
腹はまだ原型を留めているが、首は血や皮膚などでぐちゃぐちゃになっており、原型が分からない。もう頭と体が分かれそうだ。中途半端は嫌だったから、私は死んだ羽奏の頭を持ち、そのまま上へ引っ張った。ぐちゃぐちゃな首は簡単に体から引き裂けた。バラバラにするのなら、簡単で楽な方がいいだろう。
私は羽奏を包丁でバラバラにして、そのバラバラになった肉塊を風呂場まで持っていき、栓がしてある浴槽に入れた。そのついでに、下着を脱ぎ、血まみれになった肌だけをシャワーで洗い流した。
シャワーで血を洗い流して、お姉さんが買ってくれたセーラー襟の青い服を着た。そして、部屋のどこかにあるであろう羽奏の金を探した。銀行に預けている分があるとしても、あるだけの現金を全て貰うことはできるだろう。
羽奏の家のリビングへ行くと、棚のようなものが置いてあった。そんなわかりやすい所にあるとは思わないが、念の為引き出しを開けた。すると、札が何枚か入っていた。
手に取ってみると、1万円札が十六枚、千円札が八枚程度あった。
まさか本当に入っているとは思わず、目を丸くした。泥棒にでも入られたら危ないだろう。まあ、もう死んだから別にいいのだけれど。
私は棚に入っていた札全てと、羽奏が私に渡す予定だったであろう三万円を自分のバッグに入れた。
羽奏を殺すときに私が着た、元々持っているボロボロな服は、羽奏のキッチンにあった小さめのビニール袋の中に入れ、そして自分のバッグに入れた。
いつもより少し重めなバッグを持って玄関まで行き、フラットシューズを履いて羽奏の家を後にした。
「ただいま!美輝ちゃんっ!」
とりあえずお姉さんの悩みが消えた今、忙しいことがあまりなくなると思った私は、帰ってきて美輝ちゃんと一緒にいられると、明るい声で家へ入った。
だが、美輝ちゃんの声が聞こえない。
私は不思議に思いつつ、靴を脱いで私と美輝ちゃんの部屋へと行った。すると、ベッドの上で女の子座りをして壁の方を向いていた。足の方は毛布で隠されている。
「美輝ちゃん?どうし……」
私が美輝ちゃんに話しかけようとすると、美輝ちゃんの啜り泣く声が聞こえてきた。
「美輝ちゃん!?どうしたの!?」
私が焦り、驚いて大きな声を出すと、美輝ちゃんが拗ねたような、不安そうな泣き顔でこちらを向いた。
「…っきふちちゃんっ…、わたしのことぉっ、ほんとに、すき、なのっ……?」
美輝ちゃんは体勢を整えて、こちらに向けて女の子座りをしてそう言った。
「…ぇ?何、言って……」
「…ぐすっ。………きふちちゃんっ、さいきんずっとしゃべってくれないしっ、ぜんぜんわたしのことがすきだって、わかんなくなってきたっ、からっ…………」
美輝ちゃんはぐすぐすと泣いて拗ねながら、日々積もりに積もっていた不安を私に話してくれた。
私はその言葉を聞いて、頭が真っ白になった。心臓に弓矢でも刺されたようだった。
私は改めて気がついたのだ。
私は全然美輝ちゃんの気持ちを考えられていなかった。美輝ちゃんのためだと言って、美輝ちゃんがどう思っているかなどは、何も頭になかった。
私は罪悪感に打ちのめされ、自然と美輝ちゃんを抱きしめていた。
「きふちっ、ちゃん……?」
急に抱きつかれ、戸惑っている美輝ちゃんに、私は言った。
「っごめんね…美輝ちゃん……。私、全然美輝ちゃんの気持ち考えられてなかった…。本当にごめんねっ……」
言っていて、自然と涙があふれてくる。そんな私を見て、美輝ちゃんはわたわたしている様子だ。
私は美輝ちゃんと見つめ合って、しっかりと目を見て話した。
「でも、大丈夫だよっ!もう忙しく無くなったから……美輝ちゃんと、沢山一緒にいられるよっ!」
私は笑顔でそう言って、また美輝ちゃんを抱きしめた。
今度は、もう間違えない。
美輝ちゃんの気持ちをちゃんと考えて、今度こそ、私と美輝ちゃんが幸せになるようにしなければ。
そのためだった。邪魔者を殺したのは。
でも、やっぱり邪魔者はいる。
警察もそうだけれど、お姉さんは邪魔だ。
今までこうやって過ごせていたのもお姉さんのお陰だが、私と美輝ちゃんの幸せに、お姉さんは邪魔だ。いらないんだ。
だったら、次はお姉さんの番だろう。
死ぬべきは、きっと。