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(……約束の時間どおり、っと)
スマホで時刻を確認してから、瑞基は玄関のチャイムを押す。
「何の用だ小僧」
由良より数段低い声が応答してきた。
想定内のことだ。休日だし。
モニターに見える様に、近所の和菓子屋の袋を掲げる。
「一緒に食べようと思って。水まんじゅうです」
「雪江の好物か。いいだろう、入れ」
ドアが開いて、瑞基と同じくらいに背が高い男が顔を覗かせる。由良の父、暁斗だ。
リネンシャツにデニムのラフな服装で腕組みをするその姿は、まだ30代でも通用するほど若々しい。とても高2の息子がいるようには見えない。
(うちの親父は、夜寝た時のまんまのTシャツに短パンでゴロゴロしてたけどなー)
「お邪魔します」
「明日から期末テストだろう、食べたらさっさと帰って勉強しろ」
「やだな、勉強しに来たんですってばー。暁斗さん」
瑞基がへらへらと言い返すと、暁斗は更に険しい表情になった。
「由良の勉強の邪魔になるような事はするなよ。時々様子を見に行くからな」
まるで、いわゆる「悪い虫」扱いである。
母親似の美人な息子を持つと、いつまでも過保護なものなのだろうか。
「いつまで玄関で立ち話してるの。早く上がってもらって」
なかなか不毛なやり取りを続けていると、由良の母、雪江が助け舟を出しに来てくれた。こちらも、涼しげなリネンのワンピース。
(……絵に描いたような美男美女 )
「あ、これ。よかったら食べて下さい」
雪江の好物を差し出す。
「ありがとう。今、冷たいお茶を淹れるわね。座ってて」
促されてソファーに座ると、隣の一人掛けのソファーに、どかっと暁斗が座った。
「由良を旅行に誘ったそうだな。俺は断固反対だ」
眼光が鋭すぎる。目からビームでも出て焼き切られそうだ。
「あー……やっぱり、長時間の電車とか、疲れて体調悪くなりそうですかね」
わざと、若干的外れな返答をしてみる。
「確かにそれも心配だが――海は色んな事が起こる」
いつもの過保護が発動しているのかと思ったが、少し様子が違う。茶化して答えてはいけない雰囲気だ。
「いざとなったら、身を挺して由良を守る覚悟はあるのか」
「覚悟…って」
言葉に詰まる。
あるに決まっている。でも、本人へよりも先に、父親に言いたくない気もする。
「約束の時間になっても現れないと思って来てみれば…何盛り上がってんだ」
ふいに、呆れた様な声が飛んで来た。振り返れば、リビングの入り口から由良が覗き込んでいる。
「あ、由良。今、水まんじゅうをいただいたから、みんなのぶんのお茶淹れたんだけど、こっちで食べてく?」
見るからにキンキンに冷えた緑茶――この家で出される冷たい飲み物は、いつもキンキンだ――と、風流な皿に移し替えられた水まんじゅうを盆に載せて、雪江も戻って来た。
「部屋で食べる。こっちにいると、父さんの話が長くなりそうだから」
由良が一瞥すると、ばつが悪そうに暁斗が目を反らした。
「父さんは……父さんは由良が心配なんだよ」
「「過保護」」
由良と雪江が、そっくりな冷たい表情で同時に言う。
雪江と暁斗二人分をローテーブルに置いて、盆を由良が受け取る。
「重くない?俺が持つよ」
「大丈夫だよ。…どんだけ非力だと思ってんだ。瑞基も過保護」
唇を尖らせ、由良が上目遣いで睨んでくる。
両手が塞がっている由良の代わりに部屋のドアを開けてやりながら、瑞基はついにやけてしまった。
コメント
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第5話読了!由良パパの過保護っぷりがすごすぎて笑ったww「水まんじゅう」で釣ってる瑞基くんもお見事だけど、由良ママが冷静に「過保護」ってバッサリ言い放ったの最高だった😂✨ てか由良の「瑞基も過保護」上目遣いに完全にやられた…このCP尊すぎかよ!!次も絶対読みます📖💕