テラーノベル
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来る度に思う。由良の部屋は、海の中のようだ。
カーテンやラグ、寝具など青系が多くて、余計な色がなくて落ち着く感じがする。
本人も今日は透け感のある濃い青のシャツを着ている。 由良には青が似合うと、瑞基はいつも思っていた。白い肌にとても映える。
何故か真剣な様子で、水まんじゅうがフルフル揺れるのを観察している由良。
「水まんじゅうって、クラゲっぽいよな」
青い硝子の皿の上の和菓子を、フォークでつつきながら由良が言う。瑞基が見つめていても気付いていない。
濡れたような黒目がちの大きな瞳を覗き込む。それは記憶の中の、藍色の海に似ている気がした。
「食べ物だよ。それは食い物なんだよ、ゆらちゃん。いつまで遊んでんの」
瑞基の方は、もう2口ほどで食べ終わってしまっていた。冷たい緑茶がよく合う。
「あ、ばあちゃん家から、バスでちょっと行ったとこに、クラゲがいっぱいいる水族館もあるよ」
「……どうしても、旅行の方に話を持っていくんだな」
呆れ顔の由良に、握り拳を作って力説する。
「来年は受験生だよ?もう夏休みを満喫できるのは、今年が最後なんだから」
「最後って…その次の年は一緒にいない予定なのかよ」
由良の声が少し淋しそうに聞こえたから、自分の頭を彼の頭にコツン、と当ててみた。
「由良が、どうしても一緒にいてほしいって言ってくれたら一緒にいるけどー?」
「え……」
いきなりドアノブが回る音がした。
「はーい、お茶のおかわりだよー」
ピッチャーにいれた緑茶を持って、暁斗が現れた。
「どうだ、勉強捗ってるか」
瑞基と由良の間に割って入るように座る。
お茶だけ置いて出て行く気は無さそうだ。
「部屋に来てから、まだ10分くらいしか経ってないけど」
「いや、俺も今日は時間があるから、何なら勉強を見てやろうかと……うぉ」
唐突に、暁斗が立ち上がった――いや、立ち上がらせられた。背後を見ると、雪江が襟首を掴んで持ち上げていた。美しい笑顔だが、目が全く笑っていない。
「はーい、お邪魔しましたー」
「まて雪江。話がまだ終わってない」
外見からは想像もつかないような力強さで、長身の男を引き摺っていく。
「暁斗、そんなんだからご近所さんから『残念なイケメン』なんて言われてんのよ」
ドアが閉まる寸前、氷点下に達しそうなほど冷たい雪江の声が聞こえた。
一瞬で嵐と吹雪が過ぎ去って行ったかのようだった。
「…瑞基、解らなかったとこは纏めてきたんだよな?ノート見せてみろ」
「あ、あぁ。ここの解き方なんだけど」
やるべき事を思い出した二人は、その後は黙々と明日に向けてのテスト勉強をした。
昨日の決意が有耶無耶になってしまったことに、由良が気づいたのは、瑞基が帰ってからだった。
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コメント
1件
読み終えました。青い部屋の表現がとても綺麗で、水まんじゅうをクラゲみたいだと言う由良さんの子どもっぽい感性にほっこりしました。暁斗さんと雪江さんの凸凹コンビに笑いつつ、最後の「決意が有耶無耶になった」一文で、由良さんの内面にそっと触れた感じがして切なくなりました。瑞基くんの何気ない一言が由良さんの心にどう響くのか、続きが気になります🌊