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数年前のとあるのどかな日、になる予定だった筈の日。私は休暇を取っていた。
なのに、どこぞの自殺趣味が、姐さんが用事だってー、なんて言ってくるものだから何かあったのかと思って至急着替えて来たのが十分前。じゃあ行こうか、何て連れ出されたのがおよそ五分前。その時に見えた笑みがどこか楽しそうだったのを気にもとめていなかったことを今物凄く後悔している。何が、何か嬉しいことでもあったのかな、良かったな、だ、能天気め。自分だけど。
部屋に着き、さあさあと促されるまま入った姐さんの部屋はもう、凄い上品で、家具も高級なのを使っているのをひしひしと感じる。流石高給取りのポートマフィアである。自分はそういうのに興味はないが、銀のために何か買ってあげたい。いつか。
「さあ、龍之介や。此れを着てみて呉れんかの」
「此れを……?」
姐さんが手に持っているのはいわゆるゴスロリ。何故そんなものがここにあるのだろうか。小一時間程問い詰めたいが、如何せんポートマフィアは縦社会。そんなことが出来る力量も権力もこっちは何も持っていないのである。
しょうがないのでもう着るしかない。ここまで来たのなら腹を括ろうと思ったが、待て。先程から部屋を一向に去る気配のない上司に視線を向ける。あなたは姐さんに私を受け渡しに来ただけではないのか。
「此処で何れだけ君が変装できるか見ていくことにするよ」
それって、ただあなたが興味あるだけですよね?だって顔に面白そうって書いてありますもの。
神は私には微笑まなかった。
「ねえ出来たー?」
上司の言葉に返事を返す余裕もなく、私はただただ鏡の中の自分と睨み合っている。…おかしい、おかしいぞ、何だこの状況は。何故私はゴスロリを着なければならないのか。それも女装って。女装は、まあ、特に気にしないが、ゴスロリ……。
しばらく考え込んでいると痺れを切らしたらしい太宰さんがシャッ、と衣装部屋のカーテンを開け、感心したように溜め息をついた。
「いやあ、君女装任務も行けそうだねえ、似合ってるよ」
それはそれで嬉しくないのだが、一応はお礼を言っておく。一応上司だし。仮に、部下の着替え途中にカーテンを開けて中を覗いてきたとしても、まあ上司なので。やはり縦社会では上司に物申すことも出来ない。
姐さんはもはや言うまでもない。ぎゅうぎゅうに抱き締めたと思ったら写真を連写してくる。さすがに写真はやめて欲しいかな、と思っていると、太宰さんまで加勢し始めてしまった。ここの人達は案外疲れているのかもしれない。今度、首領に休暇を進言してみようか。