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夜が嫌い。

苦しくて苦しくて仕方がない。

何を考えても明日は必ず来るのに。

眠れない夜に貴方を考えて泣いてしまう。

そんな日一生来なければいいのに。

貴方を思って聴く曲も、貴方と私の妄想も全て起こるわけがないのに。

胸が痛い。

彼が夜に思う相手は私じゃない。

私じゃなくて、あの人だから。

きっとまだ、忘れていないでしょ。


佐藤先輩と色々あってから数ヶ月が過ぎた。

体育祭も終わり秋が近付いてきた。

まだまだ青くて若々しかった葉がだんだん枯れたり赤く色付き始めたりしている。

紅葉の季節。

もう何ヶ月も彼への好きという気持ちを抑えている。

言えないというより言ってはだめな気がしてならない。

言えば終わり。

好きという感情を夏のせいにして言い訳もできない。

私を見てくれるわけが無いのに、見て欲しくて仕方がない。

11月、少しずつだけど紅葉の時期になってきた。

あと少しで一年が終わる。

彼を好きになってもうそれほど経ったのかと驚きと焦りが増している。

振り向いてもらうにはどうすればいいのだろう。

そもそも来年になってからというのは瑞稀に対しての逃げなのではないか。

ずっと、考える。

私は先輩にはなれないし、彼の気持ちを知ることもできない。

会いたいとしか言えない。

会ってどうするのかは分からないけれど。

「凛華、おはよ」

「おはよう瑠那」

彼女たちが付き合って2ヶ月が経とうとしている。

ふたりは周りの目を気にして学校ではあまり話さない。

けれど瑠那の話を聞くと順調に進んでいるそうだ。

「瑠那ってさ、どうやって素直になれた?」

「どうしたの急に!瑞稀のこと?」

「まぁ、ね。もう友達としてどうにかしようとして2ヶ月経ったよ」

「私、何も進展してない」

「別に焦る必要ないでしょ。凛華は凛華の言いたい時に好きって言えばいいよ」

「言えると思う?」

「頑張れば」

最近は前のように戻った感じがする。

あの頃みたいに友達という関係が強い。

男女という雰囲気は夏まで、できていたけれど佐藤先輩のことがあってからは瑞稀を慰めるのに必死になっていた。

瑞稀が元気ならばそれでいいと思っていたから。


そうやって瑞稀にどう思いを伝えようか迷っていると気がつけば冬休みになっていた。

年越し寸前という時にさえも瑞稀は今どこで何をしているのか考える。

会いたい。会って話したい。

そんなことを考えていると電話がかかってきた。

スマートフォンの画面を見ると出てきたのは「平川 瑞稀」の文字だった。

「はい!もしもし」

「あ、もしもし凛華?今から神社に初詣に律と行こうとしたら律は瑠那と行くらしくて」

「今暇してるなら一緒に行かね?」

「もちろん!少し準備するから待ってて」

「了解!30分後くらいに家の前行くわ」

「分かった、じゃあまた」

わくわくとドキドキが一気に押し寄せる。

好きな人から誘って貰えたのは嬉しい。

けれど、どういう格好をしていくかすごく迷う。

自分の可愛いを最大限に見て欲しい。

あわよくば瑞稀に私のことを知って欲しい。

ただそれだけだった。

着いたよという連絡を受けベランダから下を除くと彼がいた。

少し見ないうちに変わった気がする。

階段を駆け下り、玄関を飛び出した。

「あけましておめでとう!」

「おめでとう、今年もよろしく」

彼はそう言うと私の手にカイロを乗せた。

「え?いいの」

「寒いから、風邪ひかないように」

今まででいちばん温かいカイロだと思った。

私を知ってくれる人がいる。

私を見てくれる人がいる。

なぜ私はそんなにも気持ちを伝えるのが怖かったのだろう。

振られると怯えていても仕方がない。

彼の目に私は写っていないのだから。

「人多いね」

「まぁ初詣だし」

お賽銭をし、おみくじを引いた。

「何だった?」

「末吉、、」

「俺小吉」

「ふたりして微妙」

そんな意味の無い会話が好き。

楽しくて仕方がない。

「とりあえず、今学期も頑張ろうな」

彼の笑顔が眩しくて私では到底無理だと認識してしまった。


雪が降り始めるほどに寒くなっていた。

三学期も始まりなんだか落ち着きが無くなってきた。

クラスでは思い出作りが増え始め、冬だからかカップルも一段と増えた。

そして、私は彼と大きな進展があった。

「ごめん、お待たせ」

「いいえ〜」

ふたりで帰るようになった。

お互い毎日一緒にいた相手がいなくなり、ひとりということで成り行きでそうなってしまった。

辺り一面、白くなっている。

私が歩くと足跡がついている。

その日、雪にテンションが上がってしまったのだろうか。

頬も鼻も耳も赤くして私は勢いで彼に言った。

「瑞稀、好き」

振り向いた彼の顔は寒さのせいなのか知らないけれど耳を赤くてして驚いた顔をしていた。

「ずっと前から、好きなの」

私を見る目がいつも通りに戻っていく。

なんと返されても泣かないつもりでいた。

「ごめん。やっぱりまだ恋愛する気にはなれない。それに凛華は友達だと思ってたから」

分かっていたけど、目頭が熱くなる。

分かっていたのに何故こんなにも胸が痛いのだろう。

「だよね、ごめん」

帰り道でもないのに私は反対方向に向き歩き始めてしまった。

冬の寒さには場違いなほど私の瞳から溢れる涙は温かくて、嫌気がさす。

これからどこへ行こう。

いっその事なら誰からも見つからない場所がいい。

もう、元の関係には戻れなくなってしまった。


あれから一年。

二月は暦で言えば春だけど暖かくは無い。

無事進学する大学も決まりあとは卒業するだけというところまで来ている。

律と瑠那はまだ付き合っていて今でも仲はいい。

けれど彼とはあの日以来話せなくなってしまった。

三年ではクラスも別れ律も瑠那も何となく察したらしい。

私はもう完全に彼と話すことは無くなってしまった。

「凛華、高校卒業しても会ってよ?」

「当たり前でしょ」

それなのに、まだ私は瑞稀を諦められない。

人生で初めて本気で好きになった人。

彼は三年になってふたりの女の子と付き合ったらしい。

どちらも数ヶ月で別れてしまった。

けれど、私はその子達にも負けた。

まだ諦めきれないのに話すことができない。

これは好きだからこそ話せないのだろう。

恋は雪のように溶けやすく春のように暖かいものだから。

恋することを隠すべきでは無いと思う。

いつかまた、彼に会いたい。

その時は彼に上手く好きを伝えよう。

まだ青すぎる僕たちは

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