あれから二年の歳月が過ぎた。
20歳。
お酒も飲める。煙草も吸える。
大人になった私たち。
今、私は大学生として頑張っている。
学びたいことも無い私はなんのために勉強しているのか不思議で仕方がない。
傍から見れば列記とした大人。
それなのに、私の心はまだ子供のまま。
今でも青色を求めてしまう。
今日はそんな大人になったみんなに会える同窓会だ。
「瑠那!」
「凛華、久しぶり」
半年ぶりに会った瑠那は少しだけ大人になっていた。
大学に入ってからは会うのは半年に一回。
きっとこれからどんどん頻度が減るのだろう。
それも、大人になることなのだろうか。
「瑠那は今も律、?」
「うん、まだまだ仲良いよ!今年で3年目かな?」
「すごいね」
大人になっても変わらないものはある。
大人になっても心の奥底は同じ。
まだ、心の片隅に瑞稀がいる。
「凛華は?今って彼氏とか」
「いるよ、2ヶ月前くらいに付き合い始めた」
「そうなの!どんな人?」
「優しくて私を第一に考えてくれる、いい人」
「わぁ、素敵」
それでもあの頃と変わってしまった。
こんな上辺だけの会話ばかりだっただろうか。
中身のない話ばかりだっただろうか。
いや、そうかもしれない。
元から私達はこんな感じだったのかもしれない。
見えなかったものが見え始める。
大人になるというのはそういうことだろう。
「瑞稀、律、こっちこっち!」
瑠那は入口の方へ手を振った。
久々に聞くその名前が少しだけ、心の片隅にある気持ちを引っ張り出す。
「久しぶりだな、凛華、瑠那」
「うん、久しぶり。律も瑞稀も」
「凛華、子供っぽさが無くなったよな。大人しいよな」
律は笑いながら私のことを見ている。
律だけは何も変わっていない。
いつも通りの律だ。
「こら、律ダメでしょ!ごめんね。まだまだ子供なの」
瑠那も律といるとあの頃のままだ。
私たちは今、高校二年生の頃に戻ったと錯覚するほど当たり前の光景だったのだ。これが。
そんな中、彼とだけは目が合わせられない。
見れなかった。
「凛華、大学どうなの」
「楽しいよ?」
瑞稀はすごく大人になった。
あの頃のように輝いているのではなく何処か引き込まれてしまうような、そんな人になってしまった。
瑞稀はそんなのじゃない。
もっと明るくて存在感があるような人だった。
歳をとるというのは人を変えてしまう。
もう、瑞稀を忘れなくてはいけない。
「これ終わったら四人でカラオケ行こ」
「あー、うん」
大人になった瑞稀に魅力を感じない。
「瑞稀、なんだか変わったね」
「そう?」
「うん。大人っぽくなった」
高校時代の方が輝いていただなんて言えるわけない。
もう何も残っていない。
あの頃の瑞稀の欠片もない。
なんだか虚しかった。
「凛華お酒飲める?」
「飲めるよ」
「じゃあ生ビール四つで」
カラオケに来た私たちは同窓会で沢山の人と話少し気が抜けていた。
あの頃とは少し違うけれどこれはこれでいいのかもしれないと思うようにもなる。
「俺、最初歌いまーす」
律はそう言うとマイクを持ち歌い始めた。
何処か懐かしい。
高校生の頃の律がフラッシュバックする。
青春だったのだろうか。
気付かないうちにしているものだった。
あの日、好きを伝えられてよかった。
好きと言えて良かった。
後悔したまま今、大学時代を過して今日出会った時私はきっと後悔する。
「凛華!もう帰ろうよ」
「うん、、」
「俺らもう帰るからな!瑞稀に送って貰えよ」
目が覚めると目の前にいたのは瑞稀だけだった。
「ふたりは?」
「帰ったよ」
「ふーん。瑞稀ってなんかやっぱ変だよ」
「私の好きな瑞稀はもういないよ」
涙が大量に溢れてくる。
今日の今までずっと瑞稀に憧れていた。
好きだった。諦めきれなかった。
それなのに会った瑞稀はもう私の憧れている人じゃない。
「凛華も変わったよ。あんなに元気だったのに落ち着きすぎ」
「あの頃の凛華が好きだった。俺ら、子供のままでいた方が、あの頃の方が余程良かっただろうな」
好きだった。だなんて言わないで欲しい。
その好きは私と違う好きなのに。
「振ったくせに」
「俺も振るべきじゃ無かったと思ってる」
「俺ら付き合えないの?」
「私、彼氏いるもん」
「そっか」
上がった気分がどんどん落ち着いてくる。
憧れの人が好きだった人が目の前にいる。
それでも私は何も言えなかった。
「今夜だけはさ、あの日と同じ夏のせいに出来ないの 」
「最近、暑すぎるよ」
「火照ってるよ、赤くなりすぎ」
私の唇には愛のないキスが何度も何度も覆い被さる。
「ちょっと待って、カラオケ出よ」
「分かった」
夜の街に出ると車のライトが白く、赤く光っている。
夜に青い光などひとつもない。
子供の頃は夜が嫌いだった。
それでも大人になった今は夜で生きていかないといけない。
いつからだろう。
何も考えずに寝れるようになったのは。
好きな人を想って寝れない夜が減った。
あれは、青春を生きた私たちの特権だったのだろう。
赤い光を追って愛のない寂しさを埋めるために夜の街へと進んで行った。
大人にならなければ良かった。
青すぎたあの頃を思い出して街を探してもひとつも青なんてなくて、ただ火照った身体だけが私を包み込む。
青すぎたあの頃が恋しいの。
あの純粋な青い記憶に戻りたい。
夢に見るほど青すぎる。
「まだ青すぎる僕たちは」終わり
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