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るる太📱⚡🐼
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ハラハラと桜が舞っていたあの春から、数ヶ月。季節は巡り、今はすっかり秋。それも、どこか肌寒さを感じる「秋風の頃」だ。
あの時と同じ、おしゃれなカフェのテラス席。
だけど今の俺は、かっちりしたスーツの上から薄手のコートを羽織っている。吹き抜ける風が暖かいようで少し肌寒い。
「どうしたん?もとちゃんから、パニーニ食べたいやなんて珍しいやん」
目の前では、相変わらず仕立てのいいジャケットをスマートに着こなした秀太が、澄んだ秋空を見上げながら、温かいカプチーノのカップを両手で包み込んでいる。
そしてその横にはレアキャラの元同僚、現社長補佐の優人が久々の再会ににこにこと機嫌よくしている。
「……今気づいたんやけど、もしかして営業にスムーズに行けたのって優人のおかげ?」
「……今頃気づいたん?俺が社長の後ろで糸引っ張ってるからな?」
優人がまるで悪い魔導士のように、操り人形を操っているかのような動きをしながら笑っている。なにそれ、なんか漫画で見た事あるわ。
「いや、ほんま。社長の息子やと知らんで仲良くしといて良かった」
「言わんほうが人を選別できるからな?誰が上に立つべき人間か手に取るようにわかる。……もとちゃんも次期やで?」
「……俺は当分今のままでええよ」
笑う優人に俺は遠慮して手を振る。だが、ここからが本題や。俺は少し声を落とした。
「それより、聞いてほしい事がある。……大事件が起こった」
「なに?ストーカー事件の進展?」
「いや、それは俺の中では解決してんねん。もう後ろ、つけられてないしな?」
そう、もうこの事は俺の中で犯人の目星はついてる。もう愛おしいとすら思えるくらいに。
「……実は、奥さんが動き出した。多分やけど洸だけ引き取るつもりでおる」
「え?でも奥さん療養中やろ?そんな精神不安定な状況じゃ無理やろ?」
秀太が心配そうに眉をひそめる。俺は頭を掻きながら白状した。
「……ごめん、俺嘘ついてた。ほんまは奥さんめっちゃめちゃ元気。今頃大都会で高いヒールとピッチピチのミニスカート履いてキャリアウーマンしてるわ」
「……やろな?あのモデルみたいな美人の奥さんが地味な服着て療養やなんて、信じられへんかったもん」
何度かうちの奥さんと会った事のある優人が、大口を開けて笑っている。
すぐに会いたいと願った空や新よりも前に秀太たちに話したかったのは、感情的になるより、客観的に見て欲しかったからや。
今日は運良く優人が来てくれて、笑い飛ばしてくれて、ちょっと気が楽になった自分がおる。
「奥さん、ただの気まぐれやと思うよ。ふとした瞬間に、自分が手放した『母親』っていう立ち位置が恋しくなっただけ。もとちゃんが堂々としてたらええ話よ」
優人の切れる男としての言葉と、秀太の「もとちゃんにはもう、一人で抱え込まんでもいい家族がおるやん」という優しい言葉に、頭がすっと冷えていく。
俺には、もう、大切にしたい新しい家族がいる。
「よし、決めた。俺、ちゃんと奥さんに連絡するわ」
俺はスマホを取り出し、彼女へ「子供たちに会わせる」とだけ、冷静に短い返信を打った。
カフェで二人と別れた後、会社に戻った。
昼休みの終わりに、廊下で偶然会った空に声をかける。
「蜷川、今日、うちでご飯食べられる?」
「もちろん!新も呼びますか?」
そんな嬉しそうに笑って。前まではお互いライバル視してたのに、今ではすっかり家族やな。
「うん、一緒にお迎えいこか?」
「やった!午後からの仕事頑張れます!じゃあいってきます!」
相変わらずの爽やかな嵐のように走って行く。新調した薄手のコートもよく似合ってて、目の保養になる。あとで、写真撮らせてもらお。って、いや、ちゃうわ、こんなとこでニタニタしてる場合じゃない。
――そして、退勤時。
「元宮さーん、一緒にかえろっ!」
「空、どんどん小学生化していってんな?」
「だって、俺は元宮さんの大切な息子でしょ?」
「……ふふっそうやな」
会社の玄関で待っていると、空に軽く手を繋がれ、ぶんぶんと振り回される。こんな日常も、最初は冗談だとわかっていても緊張してたな。今はもう、この温もりが当たり前の安心感に変わっていった。好きの気持ちを、家族としての好きの気持ちに切り替えてから、大分気持ちが楽になった。
「あ……伝説の剣、昨日見つけたで?」
「……伝説の勇者になるまで結構時間かかりましたね?」
ふふっとイタズラに笑う空に、あの持ち手に書かれた呪文を思い出し、胸の奥が熱くなる。
「……なるべくしてなったって感じやな。俺からしたら最高のタイミングやった」
「ん?」
不思議そうな空に向き合って、俺は真剣に伝えた。
「……奥さんから連絡があった。実は奥さん、療養じゃなくて、独り身になって元気に働いてるねん。多分、寂しくなって『洸に会いたい』って。奥さんは、自分に似てる洸だけ引き取りたいんやと思う。……今は近くにいなくても、それまで弦と洸を大切に育ててくれてたんは確かや。やから、きちんと話し合いに行こうと思う」
空はゆっくり、その言葉の意味を噛み締めた後、優しく笑って「はい」とだけ答えた。
「新にも2人が寝てから、ゆっくり話したいと思う。リビングで家族会議や」
「……いよいよラスボスの登場ですね?」
「そやな。……勇者1人じゃお姫様を守りきれへんからな?」
「大丈夫です。とびきりやんちゃな王子様も、お料理大好きなエルフも、ただ茶化してるだけの吟遊詩人も、勇者様の後ろにピッタリ張り付いてますから」
あまりにも的確な役職に大笑いする。これでいい。この気持ちのまま、奥さんに会って話せばきっとわかってくれるはずや。