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私
には好きな人がいます。
彼の名前は佐波悠斗と言います。
成績優秀で運動も出来て人望もあり、顔立ちも良い上にとても優しい男の子なのですが……困ったことに女の子にもモテてしまいます。
しかも彼の周りには常に多くの女子生徒が集まっており、いつも取り合いになっている始末です。
でも私が好きなのはあくまで彼の優しさであって、別に彼自身が好きとかそういうわけではないんですけどね。
いやまぁ好きになるかもしれない可能性はありますよ? だって彼は私の理想に近い男性ですから。
ちょっと頼りなくてヘタレっぽく見えるところが可愛いんですよねぇ~♪
病名:愛玩動物症候群
「……また何か変なこと考えてたでしょう?」
隣にいる幼馴染の少女――神楽坂優衣がジト目をしながら尋ねてくる。
「え? いや別に何も考えていないよ」
慌てて首を左右に振ったのだが彼女は疑いの目を向けてきたままで、中々信じてくれないようだ。
ここはさっさと話題を変えるべきかもしれないね。
「ところで今日は何を食べに行くつもりなんだい?」
ちなみに今の時刻は午後六時前で学校が終わったばかりの時間帯なのでまだ外には日差しが残っている。
だけど季節は既に夏を迎えており、これからどんどん暑くなっていくのだろうと予感させるものであった。
「うーんとねえ……」
そこでようやく彼女も納得してくれたようで考える素振りを見せてくれる。
それにしても本当に暑いよね。
このままだと汗をかいてしまいそうだし、出来れば早く涼しい場所に行きたい気分だよ。
「よし! じゃあ駅前のファミレスにしましょう!」
「了解した」
目的地が決まったことで僕らは歩き出す。
それから程なくして駅に到着すると改札口の前に見慣れた人物を発見した。
「おはようございます先輩」
彼女は笑顔を浮かべながらこちらに向かって挨拶してくるのだが、僕は少しだけ困った表情を作ってしまう。
なぜならば彼女とは先週別れたはずなのに何故かまた一緒に登校しているからだ。
しかも今回は前回よりも距離が近くなっている気がしてならない。
「……なんでまた一緒の電車に乗っているんだよ?」
「えーっとですね。実はあの後色々と考えたんですけどやっぱりもう一度お付き合いすることにしたんですよね」
「ああそういうことなのか。つまりこれは……」
僕は自分の部屋の中で一人呟いた。
部屋の中に置かれている家具は必要最低限のものしか置かれておらず、どこか殺風景に見えるかもしれない。
しかし僕はこの雰囲気が気に入っているので特に不満はない。
それに今はそれよりも重要なことがあるからだ。
「なるほどね。これがいわゆる夢オチって奴ですか」
夢オチとは読んで字のごとく夢の話であって、物語において主人公が突然意識を失ってしまうことで始まり、そして唐突に終わることである。
普通であればここで目が覚めるはずなのだが――
「んーでもまだ何か引っかかっているんだよなぁ」
確かに僕はさっきまで眠っていたはずだったのだが、まだ完全に目覚めていない感覚がある。
しかもこの手紙にはさらに続きがあった。
『追伸:私のことを好きだと言うのであれば必ず来るように!』……なんでそうなるんだろうか? まるで意味不明だし、そもそも好きなんて一言も言っていないんだけど。
というか告白をする気もない。
そもそもの話、どうして僕みたいな冴えない奴を相手に選んでくれたのかもよく分かっていない。
ただの手紙ならまだしも、わざわざ直接呼び出してくるあたりに相手の熱意を感じるけど。
それとも……
「もう諦めちゃう?」
彼女は微笑みながら首を傾げてみせる。
それはどこか挑発的で、挑戦的な笑みでもあった。
彼女はいつもそうだ。
まるで僕を試しているかのように問いかけてくる。
だけどそれでいてこちらの選択を尊重してくれる優しさがあるのだ。
彼女らしいと言えば彼女らしいのだが、本当に意地悪だと思う。
でもそういうところが好きなんだよなぁ。
「いや、まだだよ」
僕は苦笑いを浮かべつつ彼女の問いに応える。