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「……優、おかえり」
ドアを開けた瞬間、蒼真はすでに中で待っていた。
「え……なんで……鍵……?」
「合鍵、持ってたから。前に使ってたやつ、捨ててないんだ。だって、お前の家だもん。俺にとっては」
まるで当たり前のことのように、蒼真は微笑んでいる。穏やかな表情の下で、何かが軋んでいた。
「……また、始まったの?」
優の声は震えていた。
束縛、監視、執着。
すべてから逃げるように別れを告げたはずだったのに、またこの男が目の前にいる。
「“また”じゃない。“ずっと”だよ。俺は、お前を諦めたことなんか一度もない」
「でも、別れたじゃん……! あんたが俺の携帯見たり、友達に嫉妬したり、ちょっと男と話しただけで怒鳴ったり、全部、俺……怖かった!」
怒鳴る優を、蒼真はじっと見つめた。
その瞳の奥にあったのは、後悔ではない。——熱。
「だって、お前に近づく奴、全部消したかったんだ。優の世界から、俺以外の男、全部いらないと思ってた。……今でもそう思ってる」
ゆっくりと近づいてくる蒼真。
優は一歩後ずさるが、壁に背中がぶつかる。
「お前、また“誰か”と付き合おうとしてたよね? でもその“誰か”が俺だって気づかずに、安心して笑ってた。……嬉しかったよ。蓮になって、ようやくお前に触れられた」
「嘘ついてまで近づいてきたんだ……?」
「そうでもしなきゃ、お前は俺を見てくれなかった。俺が変わらなきゃ、お前は離れていったままだった」
優の顎を掴み、強引に顔を上げさせる。
「優、お前には俺しかいない。お前のこと、全部知ってる。好きな食べ物、眠るときのクセ、セックスの時どこが弱いか……ぜんぶ。誰よりも俺が、お前を知ってる」
「……っ、やめ……」
「嫌なら、なんで震えてるの? ……本当は、懐かしいって思ったろ? あの頃の、俺のキス」
そう言って蒼真は、首筋にそっと唇を落とした。
びくん、と優の身体が反応する。
(……いやだ、なのに、身体が……)
「……俺以外の男に触られるな。……俺の目に入るな。……お前の全部、俺だけのものなんだから」
耳元で囁かれる低音は、囁きというより呪いだった。
「蓮としての俺が好きだったなら、演じてやる。優のためなら、どんな男にでもなれる。けど……“優が俺以外に笑いかけるのは絶対に許さない”って本音は、どれだけ名前を変えても、消えない」
優の首に触れた指先が、まるで鎖のように絡みつく。
「……もう逃げられないよ。優。お前は、俺のもんだろ?」
その夜、優は泣いた。
でもそれは、怖さからではなかった。
——ああ、この人は本当に、最初から最後まで、俺しか見てなかったんだ。
その事実に、身体が甘く、熱く疼いてしまった自分を、どこかで知っていたから。
蒼真の指が、シャツのボタンをひとつひとつ外していく。優の肌に触れるたび、その指は名残惜しそうに撫でていた。
「やめろ……っ。感じない……から……」
「ふうん、ほんとに?」
蒼真は口角を上げて笑い、胸元に口づけを落とした。舌先が円を描き、やがて甘噛みに変わる。
「っ……!」
優は思わず肩を震わせたが、すぐに睨みつけた。
「……だから、そういうの、もう……」
「身体はちゃんと覚えてる。優がどこを触られると震えるか、どこを舐めると声が漏れるか……全部、忘れさせてくれなかった」
「ふざけんな、俺は……お前が怖くて別れたんだ……!」
「なのに、こんなに硬くなってる。どっちが嘘なんだろうね?」
そう言いながら、蒼真の手は下へと滑り、優の敏感なところに触れた。
「っ、うそ……っ、まだ……触ってないのに……っ」
「触ってるよ。お前の中に刻んだ愛撫の記憶……ここがこうなるの、俺しか知らない」
くちゅ、といやらしい音が響く。舌が、胸の先端を執拗に嬲りながら、蒼真は片手で下を優しく扱った。
「ふっ……や、やだ……っ! これ、違う……!」
「じゃあ、やめようか?」
手を離されると、ぴく、と寂しそうに跳ねた優のもの。自分でも信じられない反応に、優は目を見開いた。
「……やだって、言ったくせに、止められると寂しそうにしてる。どっちが本音?」
「違う……これは、っ……お前のせいで、身体が勝手に……」
「優の身体は、ちゃんと“俺に飼われてた”こと、思い出してる。俺だけが、優を壊せるし、満たせる」
その言葉のあと、蒼真は優の足を広げ、丁寧にキスを落とした。
舌が敏感な場所をなぞり、吸い上げられると、優はもう声を我慢できなかった。
「あっ、やっ……そ、こ……っ!」
「ねぇ、優。聞かせて。俺のキス、まだ好き?」
「っ……し、らない……っ。好きだったのに、お前が俺のこと……怖がらせたから……」
「じゃあ、好き“だった”って過去形じゃなくて、今も好きに変えてあげるよ」
くちゅっ、と舌先が奥を探る。
快感の波が何度も押し寄せ、優の声がだんだん甘く、掠れていく。
「んっ……っ、も……ダメ……これ以上、されたら……!」
「じゃあ、最後までしてやるよ。俺のモノだって、思い出させてやる」
息がかかる距離で囁かれ、優はついに、力なく目を閉じた。
——逃げていた愛。
——怖くて振りほどいたはずの温もり。
でも、身体が覚えている。
この人の触れ方、熱さ、舌の動き、入ってくる角度まで。
(……ああ、また……堕ちてく……)
甘くて、狂気を孕んだ執着の愛に、優のすべてが、また染められていく——。
「……イきたいの?」
蒼真の指が、優の後ろをぐちゅぐちゅと掻き回しながら問いかける。
その声は冷静すぎて、余計にいやらしかった。
「い、イかせてよ……っ、も、無理……っ♡」
ベッドの上で、優は膝を折って前のめりになりながら喘いでいた。
挿れられた指だけで、何度もイきそうになるたび止められ、
足も腰もガクガクに震えて、今にも壊れてしまいそうだ。
でも──蒼真は許してくれない。
「俺のこと、怖いって言って逃げたくせに……自分から『イかせてください』も言えないの?」
「っ……ちが、う……こ、これは……」
「じゃあ言って。ちゃんと、おねだりして。『蒼真にイかせてください』って、泣きながら懇願してみて?」
意地と羞恥心で、喉が詰まる。
けど、快楽はもう限界だった。
奥を擦られるたび、脳が焼けるみたいに痺れて、身体が欲しくてたまらない。
「……っ、く……お願い……蒼真……っ」
「うん?」
「イ、イかせて……ください……っ、もうやだ……苦しいの……♡」
「……それだけじゃ足りない。もっとちゃんと“俺のモノ”らしく言って」
「俺の、全部……蒼真のモノだから……♡ だから、お願い……イかせて……っ♡」
その言葉を聞いた瞬間、蒼真は優の中に自分を沈め、容赦なく突き上げた。
「んああっ♡ や、ばっ……あっ、イくっ、イっちゃうぅ……♡♡♡」
何度も突かれ、奥を擦られ、優は情けないほど甘い声で絶頂に導かれる。
全身が震えて、息もできなくなるほどの快感に包まれながら──
優は、またこの男の腕の中に戻ってしまったことを思い知った。
***
行為のあと、シャワーも浴びずに抱きしめられたまま、蒼真が囁く。
「……ねえ、また付き合おうよ。前みたいに、じゃなくて、もっとちゃんと」
「っ……ちゃんと?」
「うん。“俺が、お前の全部を管理する”っていう意味で。スマホも予定も、♡する日も、友達の連絡先も──全部、俺の確認が必要」
「……は?」
「だって、今日みたいに感じちゃうんだろ? だったら、もう俺の管理下で生きて。そうすれば、またいっぱい気持ちよくしてあげられる」
蒼真はスマホを取り上げ、カレンダーアプリを開く。
「……よし、“男の子の日”は毎週火曜と金曜。他にも、俺が優にさわりたい日は“優の発情日”として登録する」
「やっ、待て……っ、勝手に……!」
「勝手じゃないよ。“俺のモノ”のスケジュールを管理するのは、当然でしょ?」
優の指を握り、ロックを解除させ、蒼真はスケジュールとメッセージアプリを全開にする。
「これからは俺以外の人と連絡したら、全部チェックする。GPSもオン。どこにいても俺が迎えに行けるようにね」
「……っ、ほんとに、頭おかしい……!」
「いいよ。おかしくても、優だけにおかしいって思われるなら」
顔をくしゃっと笑わせながら、蒼真はキスを落とす。
「ねえ、優。次の“男の子の日”、楽しみにしてて。次は、口でもお願いしてね。
“蒼真のが欲しいです”って、自分でちゃんと言わなきゃ、触れてあげないから」
「……っ、うるさい……」
頬を真っ赤にしながら背中を向けた優の身体に、
再び熱が重なる気配がした──
──束縛と快楽の支配下で、
優の“男の子としての一番敏感な部分”は、
これからも、蒼真だけに支配されていく。
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