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32 - 【第32話】ほかのだれかじゃなくて、俺が

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2023年05月02日

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「ほかのだれかじゃなくて、俺が」

指先で俺の服をつまんだ“ 美穂(みほ)”は、手も肩も震えていた。

そっと背中を撫でると、伝わってくる雰囲気がほんのすこしやわらぐ。

怖がられなかったことにほっとして……すこしでも安心してくれたことが、ただ嬉しかった。

「……どこか座ろうか」

こんな人通りの多いところにいても、落ち着かないだろう。

湖の近くに移り、ベンチに座ると、うつむく美穂の様子をうかがう。

動かないその横顔は、なにかを考えているようにも、なにも考えられないようにも見えた。

「……飲み物でも買ってこようか」

優しく尋ねると、美穂は目を見開いて、ぱっと顔をあげた。

「だ、大丈夫です。一緒に……いてください」

行かないで、といったふうなまなざしに、胸をつかれた。

昔を思い出したのなら、きっと男性が怖いだろうに……。

(俺のことは頼ってくれるんだ……)

わかった、*********************

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