教壇に設置してあるマイクを何度かつついた後、みんなに話し出した。
「みんな。隣の人たちをよく確認してほしい。もし、いなかった子やいない子がいた場合。近くの先生に言うように」
急いで羽良野先生が僕の脇へと歩いてきた。
みんなどよめいていたようだけれど、僕は真っ青になった。きっと、悪戯をした子を見つけるために、校長先生が考えた作戦だ。
青い顔で藤堂君と篠原君は話の途中だった。
隣の女子が羽良野先生が近づくと、手を挙げた。
「先生。石井君がいませんでした。途中、どこかに行ったんです」
羽良野先生は一瞬、奇妙な顔をした。
「石井君……? 話をよく聞かせてください」
羽良野先生はそう言うと、僕の腕を掴んで無理矢理立たせて、体育館の奥の方へと引っ張って行った。
体育館のステージの下には、体育館の面積を埋める程の椅子やテーブルが置いてある空間がある。整理整頓された椅子とテーブルは全て折り畳み式だ。隅っこからこっちまで並んでいる。
埃と木の臭いが強くて、薄暗い場所だから男子たちには恰好の遊び場だった。
そこへと僕は羽良野先生に連れられてきた。
「石井君……。どういうことかな? どうして、みんなと一緒に整列していなかったの?」
羽良野先生は僕の目を真正面から見て、この子は一体何をしたのという感じの少し奇妙な顔をしていた。
僕はどういえばいいか考える。
本当は、先生たちの話を盗み聞きしていた。
裏の畑から子供たちの……生きているけれど、バラバラの死体を見たから。
隣の町の子供たちを乗せた帰りのバスから、一クラス全員行方不明になった。
犯人が関係していそうだけれど、さっぱり解らない事件だ。何故って、どうやってと言うと具体的にはさっぱり解らなくなるからだ。
放送室でチャイムが鳴った。先生たちが調べると子供の手の人形らしいものがあった。
犯人は誰だか解らない。
僕は考えたことを整理すると先生に勇気を持って告げた。
「僕じゃないよ先生。チャイムのことは知らない。トイレに行ったんだ」
そう僕は涼しい顔をして言ってのけた。
羽良野先生が混乱した。
「石井君。もう一度聞くわ。しばらくの間。本当にトイレに行ってたの?」
羽良野先生は厳しい顔のまま言った。
「僕じゃない!! トイレに行ったんだ!!」
僕はわざとムキに言った。
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