テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ロシアの指が、我の手から静かに離れたとき、
「終わりだ」とは言われていないのに、そう感じた。
「中国、……帰れ」
無理に低くした声は、我を傷つけないようにしているのだとわかる。
優しさで殴られているようだった。
「……帰るけど」
我は静かに、吐き出すように言った。
「一人じゃない」
ロシアの瞳が微かに揺れる
でも、その震えはほんの一瞬で、すぐに硬くなった。
「お前……まさか……………」
「……妊娠、してるのか?」
「うん。……たぶん、もう三ヶ月になる」
ロシアは黙った。
壁の時計の音だけカチコチと二人の間の静寂を裂くように聞こえる。
秒針が、我の心臓を代わりに打つみたいに、やけに大きく。
「お前のじゃないかもしれない」
そう言ったあと、口の中が苦くなった。
誰よりも、我がそれを信じていないのに。
ロシアを傷つけたいわけじゃないのに。
もう、この人にしか言えなかったのに。
ロシアの目が見開かれる。
「……今、なんて言った?」
我はもう、何も言えなかった。
喉の奥で、言葉が泡になって潰れていった。
「俺のじゃないって……それ、お前……本気で言ってるのか?」
「……じゃないと……言ってくれたか?」
我は、ひとりで帰る道を選んだ。
コンビニの灯りがやけに明るい。
誰も我を見ていないのに、誰かに責められている気がする。
スマホの通知が震える。
🇺🇸アメリカ
「なあ、中国。お前また何かあっただろ」
指が勝手に動いた。
電話をかけると、アメリカがすぐに通話に出てくれた。
「……China。今どこ。俺、日本と一緒だ。お前…ロシアは、どうだった?」
『中国さん……』
「……我、もう無理かもしれない……」
声を殺して泣いたのは、、、電話越し泣いたのは、アメリカと日本の前では初めてだった。
でも二人は、黙ってそのまま電話越しで手を繋ぐように、我の声を聞いてくれた。
ロシアからのメッセージは来ない。
1日経っても、2日経っても。
我が送った
「寒い」
というたった一言にも、既読がつかなかった。
まるで、何かを壊したのは自分じゃないふりをしているようだった。
でも──ほんとは、壊したのは、きっと我だった。
ずっと、怖くて。
ずっと、愛されたかった。
でも、愛され方を知らなかった。
コメント
2件
神作品ありがとうございます!😭 続きが気になりすぎるッッッッッッ!