⬛︎第3章 暴かれる過去、深まる絆
佐伯の出現は、2人の関係に大きな波紋を投げかけた。佐伯は千秋に積極的アプローチをかけ、翠架は千秋を独占したいという千秋の衝動が加速するのを感じていた。
◇
千秋は、佐伯が千秋に近づくたびに、俺を一層束縛するようになった。登下校の際は必ず手を繋ぎ、学校でも隙あらば俺のそばにいる。
他の人が俺に話しかけようとしたら千秋は不機嫌な顔で引き寄せる。それが千秋の愛情の深さの現れだと感じた俺は、満たされた気分に浸っていた。
しかし、佐伯は諦めなかった。
ある日、佐伯が俺の目の前に現れ、千秋との過去を語り始めた。それは、千秋が抱えていた、過去の傷に関わるものだった。
「伊藤は、本当は誰よりも臆病で、人を信じるのが怖い。だからお前に終着してるのは、夏海が伊藤から離れていかないと信じたいからなんだ」
千秋が、俺に対してあんなにも独占欲を露わにするのは、過去の傷によるものだったのかと。
そして俺は、千秋を理解し、受け入れたいという気持ちが強くなった。