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がやがやとうるさい神社の中、僕と美幸さんは夏祭りにきていた。
「あ!りんご飴あるよ氷室くん、それとも射撃?あ、せっかくならお面買う?私久々にわたあめ食べたいなー」
次々に屋台の名前を出しながら少し浮足立っているのか足軽に進む美幸さんを見ると、なんだか少し子供っぽい感じがして、新たな一面を見れた気がした。
「良いですね…じゃなくて、良いね、どうせなら近いお面から買いに行こう」
そう提案して二人でお面がズラリと並んだ屋台に行くと、美幸さんは大はしゃぎで色んなお面を眺め、時々つけてはどう?と聞いてきた。良いね、似合う、可愛い。そう言っていると一つのお面に目がいった。
「お、あんちゃん、デート中か?」
そう店の人に声をかけられて、はい、と一言言うのがもどかしく、黙って頷くと、店のおじさんは歯を見せて笑った。
「ハハハッ、そうかそうか、いや〜若いね。なら、これとかどうだ?」
そういって店のおじさんが見せてきたのは、少し黒に近い紫の色が目や鼻についた、狐のお面だった。それを手にとって眺めると、ますますそのお面が彼女のように見えて、お面の目を通して彼女を見た。すると、目が合った。
「どうしたの?狐のお面持ってこっち見てさ」
「い、いや……これが似合いそうだなーって思って………」
「ほんと?なら、それ買おうかな!」
「いいよ、僕が払うから。おじさん、これください」
「へへっ、はいよ!彼女さんとのデート楽しめよ〜?」
思わず顔が真っ赤になると、店のおじさんと美幸さんに笑われて、羞恥心で穴があったら入りたくなった。
店から離れて次はどこに行こうか、と美幸さんの方を見ると、視界が暗くなったので、何事かと驚いて離れると、すぐに笑顔の彼女の顔と目があった。
「ごめんごめん、驚かれるとは思ってなくて……はい、これ、氷室くんのお面!私も選んでみたの!二人でつけよ!」
言うだけ言って自分より先に行く彼女をよそに、柄にもなくこのいかにも恋人っぽいことに対して、どうしようもなくドキドキして、舞い上がってしまいそうになったのだった。