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「――っていう事があったの」
晩ご飯の置かれた、テーブルの向こうへ揚々と語る。今日のアルバイト、主に冬馬君の事だ。大学時代にも彼の事を幾度か話したが、晃一は彼を初めて知るような様子だった。まあ、その一年後には私たちの結婚だ。覚えていなくても仕方がない。
「素敵な話だな。俺も何だか……泣いてしまいそうだよ」
「またまたー。思ってもいない事は、あまり言わない方が良いよ」
「ふっ、何でも見通しか」
「まあ、あなたはあまり人に共感とかしないタイプだし。それに、私の勘ぐりの良さは知っているでしょう?」
晃一は「まあな」とおそらく言った。私は思わず吹き出してしまう。断言できなかったのは、彼が口元を隠して、大量の白米を含んだ状態であったからだ。ただ、聞こえてきた母音と、微かな振動は確かにそれであった。
「飲み込んでからで良いのに」
「いや……、お前のご飯が美味いから」
私はまたしても、吹き出してしまう。
「今日は一体どういう風の吹き回し? 明日は雪でも降るの」
「やっぱりか。こういうところでは、お前の勘ぐりの良さ。ってやつは、働いてくれないんだな」
からかう様に言った。食を平らげながらの、その笑みには、若干の本性が覗き見ている気がした。それが何かはわからないが、普段の生活では明かしてくれない。仮面の向こう側の彼がいる気がしたのだ。
「ねえ、何か隠している事は無い?」
私が問うと、晃一は頬に閉まったものを一度飲み込み。それから、上唇をぐるりと舐めた。美蘭を見つめ、誠実すぎる笑顔を見せる。
「何も無いよ」
「……そう」
湯気の向こう。私の内なる白虎は、それとは違う何かを嗅ぎ取っていた。