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【夢弓のターン】
料理を作る上で大切なことはなんだろう? そんなの考えるまでもなく味と見た目を大切にするべきだと言えるかなって思います。
愛情や楽しく作るなんて味と関係ない。むしろ好きだからこそおいしく作らなきゃ、まずいと嫌われる……なんて思っていました。
だけど愛情を込める、好きだから美味しい料理になってほしいって気持ちはちゃんと反映されるってことを私は実感しています。
私の料理の輝きが前とは段違いになっていることから、味と見た目が飛躍的に進化したことは証明できるはずです。
ものすごーく、キラキラしてますからね!
私は隣にいるひろくんをチラッと横目で見ています。
私が買ったエプロンをつけ、レシピを見ながらボウルに割った玉子に白だしと水を入れ丁寧に混ぜます。レンジで作る簡単茶碗蒸しに挑戦中で真剣な表情のひろくんです。
慎重に混ぜたものを茶こしでこして器に入れたものをレンジに運んでいます。時間をセットしてスタートボタンを押して中が光り出したのを見て満足そうに腕を組むひろくん。なんだか可愛いです。
ひと段落終えてほっとしたひろくんが私の視線に気がつきます。
「いやぁ茶碗蒸しなんて作ったことないから緊張した」
頭をかきながら笑うひろくんの傍に寄った私はレンジの中を覗きます。そこには光に照らされる器に入った液体が茶碗蒸しに変身するためにプルプルと震えているのが見えます。
「私も茶碗蒸しって専用の道具とかいるかと思ってたし料理のレベルが高くないと絶対に作れないと思ってたもん」
「だよな。茶碗蒸しって聞くと料亭とかに出てきて敷居高いってイメージがあったからこんなに簡単でいいのかな? って疑ったしな。考えた人凄いと思う」
「うん、使う材料も作り方もシンプルにしてくれた人に感謝だね」
「レシピってその時、その場所で考えた人がいてそれが多くの人に広がっていくって考えるとなんかこう……すごいな」
おやおや、なんだか茶碗蒸しの作り方から壮大な話になってきましたよ。
でもその気持ちわかります!
誰かが作ったレシピを覚えて自分のものにする。そしてそれを私が誰かに伝える。自分も広がるレシピの輪の中の一人になれるって考えると実に壮大だって思ってしまうもん。
ん? 誰かに伝える?
私が伝えるって誰にだろ? お姉ちゃんとかお母さんじゃないし職場の人たちでもないし、ひろくんでもない気がする。そもそもメシマズな私から教わりたい人なんているのかな?
いないよね……
私は何気なくひろくんを見ると、目が合ったひろくんが優しく微笑んでくれます。
癒されます。
カッコイイだけじゃなくて優しいひろくんと出会えたことは奇跡です。
私にはこの人しかいません!
だからこそひろくんとの結婚をお母さんに認めてもらうため私は頑張っているのです。
自分のお母さんに認めてもらうために頑張るってちょっと変わっている気もしますが頑張ることに変わりはないのです!
それもこれもひろくんと一緒にいるためなのです。
頑張って認められて私たちは晴れて結婚の道へと進めるのです。
結婚したらどんな家庭にしましょうか。ゆくゆくは子供ができて何人家族がいいのかな?……あっ! そうだ! 子供にレシピを教える。これだ、これ! 私が今覚えているレシピを自分の子供に教える。
これで私もレシピを広げる輪の一人の仲間入りです。その日のためにも今を頑張らないと!
可愛い子供に私の知っていることを教えるという新たな目標を見つけ、テンションの上がった私は台所の調理スペースに立てかけてあるノートを見ます。
跳ねた油や調味料でちょっと汚れてますけど、それすら誇らしく堂々と立てかけられている大切なレシピノート。
レシピノートの中には今日まで必死に覚えてきたレシピたちと、今必死で覚えているレシピたち。中には作ってみたけど手間がかかりすぎたり味が合わなかったりして作らないかもしれないレシピ、単純に失敗したレシピも全部あります。
その全部が私の歴史と言っても過言じゃない! って今私カッコイイこと言った!
「えらくご機嫌だけど何かいいことあった?」
ひろくんが料理の合間に麦茶をコップに注ぎながら尋ねてきます。いる? ってジェスチャーしてくるので頷くと私の分も準備してくれます。差し出されたコップを受け取った私は自分でも分かるくらい満面の笑みでひろくんを見る。
「私頑張ってたくさんの料理を覚えるんだ。それでね、子供に私の覚えたレシピを教えるの」
「ん? 子供?」
「うん、私とひろくんの子供! ちゃんと教えるためにも頑張らなきゃって思ったの!」
「あ、あぁうん。そうだな」
私の将来への目標を聞いたひろくんはそわそわと落ち着かない様子です。なんだか顔が赤いのは気のせいでしょうか。
「だから私ね、料理も子供も頑張るんだ!」
私がグッと握った拳を掲げるとひろくんがむせて咳き込んでしまいます。私の決意の勢いに当てられ麦茶が器官に入ったのかもしれません。振り上げたとき拳が当たりそうになったかも。
ちょっと力を入れ過ぎたことを反省し私はむせて咳きをするひろくんの背中をさすります。
顔を赤くして恥ずかしそうにしながら「大丈夫、ありがとう」って言うひろくん。
なんか可愛いです。
新たな目標を見出した私は前へ前へと進んでいくのです!
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コメント
1件
ひろくんと一緒に茶碗蒸し作るシーン、めっちゃほっこりしたよ〜!🥺💕 ふたりで「レシピってすごいね」って語り合うのも良かったし、何より夢弓ちゃんが「自分のこどもにレシピを教えたい」って新たな目標を見つけたところ、めっちゃエモい…!!😭✨ ひろくんが照れてむせるところも可愛すぎて悶えたよ、キュンが止まらんかった! ふたりの未来を想像しながら頑張る姿が本当に眩しい回でした! 次の話も楽しみにしてますね⋆♡