アレシオのグランドピアノの隣にある、アップライト・ピアノの蓋を開けた。中から高さが一定でない鍵盤が現れた。俺に気付いた彼は、鍵盤から手を離さないままダークブラウンの髪を揺らした。
アレシオの左手で奏でるベースラインは四拍子ながら、スタッカートが入って三拍子風の波を打っている。俺は左手のリズムを彼に合わせて、右手は異なったブギを刻んだ。ソロは交互に取った。
ブギウギ・ブルースの連弾が終わると、ジゼル達の叩く手が遠くから聴こえた。
「今日はどうしたんだ」とアレシオは言った「マザー・ファッキンな」
「いや、いつもと同じだよ」
もう、どうでもよかった。かっこよくスマートに弾く気など起きなかったから、勢いだけのプレイだったことは認める。
アレシオは「バスの来る時間だ、チャオ」と言ってカフェテリアを後にした。
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