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私は目を瞑り、心の奥底でこれは夢だと何度も繰り返し、意識を浮上させていく。
すると、心の奥底から声のような叫びのような何かが聞こえてきた。そして、恐ろしさが薄くなりだした。
私はゆっくり目を開けると武器を捨てた。片手を上げて数人の子供たちを追っている黒い霧に向ける。
そうすると、数体の黒い霧が血の入ったでかい風船のように破裂し霧散した。
「きゃー! 赤羽さーん!」
呉林の悲鳴だ。
そっちへと顔を向けると、奥の森のところで、松明で応戦していたディオと呉林姉妹に数十体の黒い霧が鉈を振りまわしていた。
「呉林!」
私はハイスピードで、広い集落を走って数十体の黒い霧に向かった。両手を突き出す。あっという間に、数十体の黒い霧が血飛沫を上げて消える。
死人がでてきたこの暗闇の村に、黒い霧は何百体もいたが、私の参戦で片が付きそうだった。怪我を負う蒼穹の戦士たちの血を吐く怒号にも余裕が出てきたようだ。
突然、後ろの村の入口から、ゾクリとする視線を感じた。
振り向いてみると、それは話に聞いたカルダのようだ。
冷たい両の目で私を見つめていた。
高齢を思える皺の顔、姿形はこじんまりとしているが、しかし、その目は何千人も殺した殺人者の目というより、数多の骸の上に君臨する女王の目だった。
背筋の凍りそうなその目で見られると、私は何故か過去に幾度も二人に出会った感じがした。そう悪夢の世界で……。
カルダの隣に青年がいる。その青年も古代文明の王といった風格をしていた。
二人の服装もこの村の長老と比べると豪勢に見える。毛皮はやはり猛獣のそれと解るが、ぶ厚く豊富に着こなして、所々に原始的な金や銀でできた輪をはめていた。
カルダが手を上げると、黒い霧が一斉に霧散した。辺りはチリチリと松明や炎で燃えている天幕以外、シンと静まり返った。
カルダが私のところへと歩きだした。青年も後を追う。
目の前まで二人が来ると、私は二人の持つ不気味な雰囲気を感じ取った。
「死ぬための訓練はしてきたか?……こ……この男、起きている!」
青年が私に向かってかなり驚いていた。その声は今まで聞いた時が無い。氷よりも冷たい声だった。