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この事務所にアルテミスというヒーローがいる。個性は月を利用した何か。夜にしか活動しないので、日中はずっと空席である。
「(いつになったらこいつと仕事できんだ??)」
誰に聞いても“そのうち分かるよ”とあしらわれる。そんな中、初めて夜勤を任されることに。
「お疲れ様です 。」
遅番終わりで帰る先輩に挨拶をして、アルテミスが来るまでデスクワーク。
「おはようございます。」
黒づくめで、キャップを目深にかぶった女性が入ってきた。そしてあの空席の席につく。
「君が噂のダイナマイトね。私アルテミスこと月野小夜です。」
「…ども。爆豪勝己です。」
キャップとパーカーを脱いだ肌は陶器のように白く、瞳は琥珀色。爆豪は見とれてしまった自分に戸惑う。
「行こうか。」
「は??コスチューム着ねえの??どうみたって普段着だろ!!」
「一応コスチュームなんだけどな。そんなに普段着に見える??」
「防具がねぇのにどうやって闘うんだ。」
「私の個性は戦闘には使わないの。行くよ??」
いつも以上にイライラしながらついていくと。
「私はこのタワーのてっぺんで仕事。あなたは周辺パトロール。」
「観光気分で毎日仕事してんのかよ??」
「個性を強めるためだよ。口の悪さは折り紙つきだね??」
「んだと??」
「はい、仕事にかかれー。」
小夜はタワーに消えていった。しばらくすると。
うさぎうさぎ
何みて跳ねる
「!?」
頭の中で小夜の声が響く。
「ダイナマイト、聴こえてるなら返事して。」
「聴こえとるわ!!…気色悪い個性だな。」
周囲の人には聴こえてないらしく、怒鳴った爆豪に視線が集まったので慌てトーンを落とす。
「仕事終わったら詳しく話す。まずはあなたと繋がった。」
十五夜お月さま
見て跳ねる
「これで今日の夜勤ヒーローと繋がる。」
次々に他事務所のヒーローの声が流れる。その中に。
「デク!!」
「ひぃぃ!!君も初夜勤なんだね!?」
「雑談はおしまい。」
うさぎうさぎ
何みて跳ねる
十五夜お月さま
見て跳ねる
その瞬間から助けを求める声が頭に響く。
「どこだ…!!」
「路地裏よ、近いわ!!」
頭の中で大きくなる声を頼りに探し、女性を救助した。
「だれか◯◯公園の近くにいる??」
「近くにいたら、援護してくれ!!」
「アルテミス、もう少し情報くれないか??」
頭の中を、いろんな人の声が巡る。
「凄いなアルテミス。こっちの処理能力が追いつかないよ。」
「泣き言言ってねーで声の出どころさがせ!!」
犯罪を臭わせる声がした場所を探していると緑谷と一緒になる。
「待って二人とも。」
「はい!!」
「んだよ。」
「警察も掴んでない違法カジノ店ね。今日は押さえない。ダイナマイト、警察に報告お願い。」
「…了解。」
そして。
里わの灯影も森の色も
田中の小道を辿る人も
小夜の歌が流れ始めると、ヒーロー達が次々にお疲れさまでしたと抜けていく。
「アルテミス、ダイナマイトお疲れさまでした。」
緑谷の声も聞こえなくなった。
蛙の鳴く音も鐘の音も
さながら霞める朧月夜
終ると持っていた事務所のスマホが鳴る。
「私の個性、分かったでしょ??」
「脳内再生が月と何の関係が??」
「月の引力と満ち欠け。昔から月は人を惑わすって言うでしょ??皆と無線みたいにやりとりできるし尋問もできる。」
「月の引力…。」
「私はこのまま家に帰ります。日の出までに帰らないと個性使えなくなるから。」
「は??」
「大丈夫、退勤時間まで家で仕事してるから。わからないことがあったら連絡して。」
「わーったよ!!」
雑に電話を切って事務所に戻る。
「(なんつー個性!!制御も完璧…!!)」
緊張か武者震いか、珍しく震える手。それを抑えるように黙々と報告書をまとめる。
いつの間にか夜が明けはじめていた。