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水平線のファンファーレ

滑り台のような何かの中を長い間落ちていた気がする。

目が覚めた僕は水平線にいた。

これは比喩的な表現ではなくて、いわゆる水平線なのである。

水平線なんてものは海と空を隔てる境界線を遠くから眺めたものなんだからその上に立っているということはおかしいじゃないかと思うかもしれない。

私もそう思う。

けれど現にここは水平線の上なのである。

この境界線の先には何もない。

壁があると思って思いっきりノックしようとしてみたら何の感触もなくその反動で体が投げ出されそうになった。

パントマイムのように透明な壁で区切られているわけではないようだ。

気を取り直して恐る恐る覗き込んでみると、

しっかりとその先にはマリアナ海溝よりも、何よりも深い

深淵が大きな口を開けて淡々と広がっていた

「おーーーーーい」ひんやりとした岩肌にしっかりとしがみついて身を乗り出した僕の声が

やまびこのようにその奈落に消えていった。

まるで僕たちが落っこちてくるのを嬉々として待っているようだった。

ん?

この大きながま口の先でキラキラと光る暖かいなにかが見えたような気がする。

そしてなぜか懐かしいような切ないようなそんな感じが僕の肌に触れようとした

けたたましいアラーム音が侵入してきた

だんだん大きくなっていくにつれて帳が瓦解していく

待ってくれ、もうちょっと、その先にあったものは…

ジリリリリリリ

まだ寒い朝を誤魔化すために暖房をつけて

内側がボア仕様のズボンを履いて食卓に向かう。

小学校の頃に書いたオレンジ色の薔薇の絵と

傾いたネームプレートが今日もまだ偉そうに

玄関に佇んでいる

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