テラーノベル
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部屋をもらってから、数日が経った。
「……暇。」
一日三食ちゃんとあるし、寒い思いをせず夜を越せる。今までとは打って変わって贅沢すぎる暮らしに戸惑う。
こんなに何もされないなんて、逆に落ち着かない。
食料用だとしても、その日が来るまで雑用とか暗殺とかでこき使えばいいのに……。
そんなことを考えていたら、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「……いるか。」
仁人が来た。
「何してた?」
「何もしてない。」
沈黙。
お互いを見つめあう時間が流れて、妙に気まずい空気になる。
でも、前よりは嫌じゃない。
「俺にもなんかさせてよ。」
耐えきれずに言うと、仁人は少しだけ眉を寄せたあと、
「……来い。」
とだけ言って踵を返した。
連れて行かれたのは庭だった。
「外出れたんだ。」
「出るなとは言ってない。」
土をいじりながら、淡々と返される。
「逃げないだろ、お前。」
その言葉に、少しだけ言葉が詰まる。
「……どうだろね。」
本当は、逃げ場なんてないだけ。
でも、それだけでもない気がしている自分がいて。
一緒に種を植えることになった。
しゃがみ込むと、自然と距離が近くなる。
仁人の腕がすぐ触れそうな位置にあって、思わず視線がそっちにいく。
白い肌が月明かりに照らされている。
オーロラとか、流れ星とか、見たことはないけど…きっとこんな感じなんだろうと思った。
奇麗すぎて、少しだけ現実味がない。
「……なに見てる。」
「いや、なんか光ってんなって。」
「光ってない。」
軽く否定される。
でも、ほんの少しだけ照れたように視線を逸らした。
「ほら、こうする。」
手元を指差される。
土を掘る指先が、やけに細くて、丁寧で。
「……雑だな。」
「初めてなんだから仕方ないじゃん。」
笑うと、仁人もほんの少しだけ口元を緩めた。
「……なあ。」
手を動かしながら、なんとなく聞く。
「一人でいたの?」
「……ああ。」
短い返事。
「寂しくなかった?」
少しだけ間があく。
「……慣れてる。」
その声は、やっぱり少しだけ小さかった。
「じゃあさ。」
土をならしながら言う。
気づかれないように、さりげなく。
「これからは慣れなくていいじゃん。」
仁人の手が、ぴたりと止まる。
「俺がいるし。」
言ってから、少しだけ心臓が跳ねる。
軽く言ったつもりなのに。
なんでか、変に本気っぽく聞こえた気がして。
でも、言い直す気にはならなかった。
しばらく沈黙が続く。
夜風の音だけが、やけに大きく聞こえる。
「……そうだな。」
ぽつりと落ちた声。
思っていたより、ずっと柔らかい。
そのまま、また土に手を伸ばす。
でも今度は。
さっきより、少しだけ距離が近かった。
「……なにその顔。」
「いや…近いなって思って。」
「……嫌なら離れろ。」
そう言いながら、仁人は動かない。
「別に、嫌じゃないよ。嫌じゃ、ない。」
小さく答える。
本音だった。
この距離感、落ち着く。
理由はよくわからないけど。
「……変なやつ。」
呆れたように言われる。
でも。
その声は、少しだけ優しかった。
「仁人。」
もう一度、名前を呼ぶ。
「ん。」
ちゃんと返事が返ってくる。
それだけで、少し嬉しい。
——ああ。
ここ、意外と悪くないかもしれない。
なんて。
思ってしまった自分に、少しだけ驚いた。
そしてきっと。
仁人も、同じくらい。
この時間を、手放したくなくなっていた。
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一応センシティブにしてるんですけどこの話は🔞要素があまりありません🙇💦
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