テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
最近、少しだけ変わったことがある。
「……近い。」
「いいじゃん。」
ソファに座る仁人の隣に、わざと肩が触れるくらいで座る。
最初は露骨に避けられてたのに、今はほんの少し距離を取るだけで済むようになった。
その“少し”が、妙に嬉しい。
「……お前、距離感おかしい。」
ほっぺを膨らませながら不貞腐れる。かわいい。
「そう?」
顔を覗き込む。
「……っ、やめろ。」
視線を逸らされる。耳が真っ赤だ。
でも、もう席は立たない。
それだけで、十分だった。
「仁人ってさ。」
なんとなく、呟く。
「一人の時、何してたの?」
少しだけ間があく。
「……本を読む。」
「ずっと?」
「ああ。」
「飽きないの?」
「……慣れてる。」
またその言葉。
「そっか。」
少しだけ体重を預ける。
びくっと、小さく揺れる。
でも、離れない。
「……重い。」
「ごめん、でもちょっと貸して。」
「……なにをだ。」
「体。」
「言い方が悪い。」
小さく笑う。
そのまま、ほんの少しだけ寄りかかる。
不思議と、落ち着く。
静かな時間。
何も話さなくてもいい感じ。
「……おい。」
「ん?」
「……もう少し、離れろ。」
言葉とは裏腹に、声は弱い。
「嫌だって言ったら?」
少しだけ意地悪く言う。
沈黙。
「……好きにしろ。」
結局、それだ。
その言葉が出るたびに。
少しずつ、踏み込んでいい気がしてしまう。
——良くないのに。
夜。
庭に出る。
少しだけ冷えた空気。
「寒。」
呟くと、隣の仁人がちらっと見る。
「……人間は不便だな。」
「そうだよ。だから優しくして。」
そう言って、自然に仁人の腕を掴む。
びくっと震える。
でも。
やっぱり、振りほどかない。
「……離せ。」
「やーだ。」
少しだけ強く握る。
その瞬間。
ぐっと、腕を引かれた。
背中が壁に当たる。
距離が、一気にゼロになる。
「……調子に乗るな。」
低い声。
その目。
赤い。
「……血の匂いがする。」
心臓が、大きく跳ねる。
思い出す、昼間の小さな傷。
「……大したことないって、」
言い終わる前に、手首を掴まれる。
いたい。
強い力。
逃げられない。
「……だめだ……」
掠れた声。
でも、その手は離れない。
ゆっくり、顔が近づく。
捕食者の目をしている仁人が、目の前にいる。
呼吸が触れる。
「……仁人。」
名前を呼ぶ。
びくっと、止まる。
「……怖い?」
なぜか、そんなことを聞いていた。
「……怖いのは、お前だ。」
その答えに、少しだけ笑う。
「そっか。」
でも。
「……俺は、そんなに嫌じゃない。」
ぽつりと落とす。
自分でも、何を言ってるのかわからない。
でも。
この距離も。
この空気も。
嫌じゃない。
むしろ——
離れたくない。
「……っ、やめろ……」
仁人の声が震える。
でも、離れない。
「……欲しいなら、止めないよ。」
自然に、言葉が出る。
「……っ、なんでそんなこと言う……!」
初めて、少し強い声。
「だって。」
少しだけ、笑う。
「仁人、我慢してるじゃん。」
その瞬間。
完全に、動きが止まった。
図星だったらしい。
「……やめろ……」
今度は、はっきりと。
仁人が、顔を離した。
「……もう、近づくな。」
「……お前が近くにいると、心臓がはち切れそうなんだよ…!」
予想外の理由に驚く。
仁人の一言一言が俺を狂わす。
「……じゃあさ。」
小さく呟く。
「もっと近づいたら、俺の血を飲んだら、どうなんの。」
その問いに。
仁人は答えなかった。
ただ、苦しそうに目を逸らしただけだった。
——ああ。
もう、戻れない。
そう思った。
でも。
それでもいいと、思ってしまった。
Continue
Next→♡100
アイドルパワーめっちゃ良くないですか⁉️🥰
コメント
2件
続きめっちゃ気になる‼️ アイドルパワーめっちゃ良いの分かります🙂↕️