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#溺愛
オレンジ
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コメント
9件
ほんと♡♡♡っていいよねぇ… なんだろほんとに儚くて美しい
めちゃ最高!! 女性ならではの太宰さんの儚さが好みすぎる!! 寂しがり屋な性格が尊い
えっ、えっ戸いっすね………太宰さん…… こんな、なんか、すっごいのかけるの凄いっす。(語彙力消失)尊敬‼
冷たい夜風が、薄い硝子窓をがたがたと揺らしている。
夜の帳が完全に下りた部屋のなかに、明かりは灯っていない。ただ、街灯の白い光が隙間から差し込んで、畳の上に細長い帯を作っていた。
焦茶色の、ゆるやかにうねる長い髪が、白い布団の上に乱雑に広がっている。男の衣服をそのまま纏っているかのような、ぶかぶかの寝間着から覗く手首は、驚くほどに細い。指先で少し強く掴めば、それだけで容易く折れてしまいそうなほどに華奢な体躯だった。
普段であれば、この身体は誰かしら、別の男の腕の中に収まっていることが多かった。
夜の街に消えては、行きずりの男の袖を引く。あるいは、馴染みの男の部屋に転がり込んでは、甘い言葉と引き換えにその温もりを貪る。彼女にとって、他人の肌に触れている時間は、己の空虚さを一時的に埋めるための、ごくありふれた日常に過ぎなかった。そこに深い情愛などという大層なものはなく、ただ、互いの肉体を都合よく消費し合うだけの、乾いた関係。
誰もが彼女の、そのあまりにも美しい容姿と、どこか現世から浮き浮きとした儚い佇まいに魅了され、我先にとその白い肌に指を這わせたがった。彼女もまた、それを拒むことなく、微笑みながら受け入れてきた。
だからこそ、こうしてひとりで布団に包まり、夜を迎えるというのは、彼女にとっては少し珍しいことだった。
「……静かだねえ」
ぽつりと言葉を零してみる。
声の調子は、普段と何ら変わりはない。男たちを翻弄するときの、どこか人を食ったような、けれど耳に心地よい響き。しかし、誰も応える者のいない部屋のなかでは、その声も壁に跳ね返って寂しく消えていく。
いつもなら、隣で誰かが煙草を吸っているか、あるいは満足げな寝息を立てているはずの時間だった。男たちの体温や、安物の香水の匂い、情事のあとの気怠い空気に満ちているはずの空間が、今は酷く冷ややかで、清潔すぎる。
その物足りなさが、奇妙な焦燥感となって、彼女の胸の奥をちりちりと突き始めた。
身体の芯が、じわじわと熱を帯びていくのを感じる。他人の手がもたらす熱に慣れきってしまった肉体は、ひとたびその供給が途絶えると、自ら飢えを訴えるように疼き出すのだった。
彼女は寝間着のなかに細い手を差し入れ、自身の滑らかな太腿の内側に触れた。
ひんやりとした指先が、熱を孕んだ肌に触れると、それだけで小さな戦慄きが背筋を駆け上がる。他人に触れられることには慣れていても、己の手で己を慰めるということには、どうにも気恥ずかしさと、それ以上の、妙な生々しさが伴う。
枕元へ手を伸ばし、暗闇のなかで使い慣れた小さな器具を探り当てた。それは、かつてある男から悪戯っぽく贈られたものだったか、あるいは自分で気まぐれに手に入れたものだったか。
小さな硬い機械の塊が、彼女の華奢な手のひらに収まる。
衣服を少しだけ押し上げ、柔らかな秘処へとそれを寄せた。
指先で小さな突起を押し下げると、かすかな、けれど規則正しい、震えが手のひらから伝わってくる。微弱な唸りを上げるそれを、自身の最も敏感な場所へと、恐る恐る押し当てた。
「ひゃ、……あ」
鋭い刺激が直撃した瞬間、思わず声が跳ね上がった。
彼女は、快感に対して酷く脆かった。他人の指先が少し触れるだけでも、大袈裟なほどに身体を強張らせ、翻弄されてしまうのが常だった。ましてや、機械がもたらす執拗で容赦のない震えは、彼女の貧弱な抵抗を容易く打ち砕いていく。
一瞬にして頭の芯が痺れ、目の前が真っ白になるような感覚に襲われる。
太腿が、意志とは無関係にがたがたと震え出した。細い指先が、シーツをきつく引き絞る。普段、男たちの前で見せるような、余裕に満ちた微笑みや、相手を弄ぶような視線は、どこにもなかった。ただただ、押し寄せる熱の波に溺れそうになりながら、小さな息を吐き出すことしかできない。
「だめ、これ、つよい、よ……」
誰に言い訳をするでもなく、かすれた声が漏れる。
刺激を和らげようと、腰を少しだけ浮かせて逃れようとするものの、手のひらは無意識のうちに、その器具をより深く、強く、自身へと押し付けていた。
身体の奥から溢れ出る熱い蜜が、器具の表面を濡らし、いやらしい摩擦の音を立て始める。その音が、静まり返った部屋のなかに妙に大きく響いて、彼女の耳を赤く染めた。
他人の目がないというのに、どうしてこれほどまでに恥ずかしいのだろう。けれど、恥ずかしさが深まれば深まるほど、身体の疼きは激しさを増していく。
目尻から、じわりと涙が溢れ出た。
彼女は本当に、すぐに泣いてしまう性だった。男たちに激しく求められているときも、快さのあまりにいつも視界を濡らし、子供のように泣きじゃくっては、男たちの加虐心を煽ったものだ。
今も、ひとりきりの布団のなかで、大粒の涙が頬を伝い、焦茶色の髪を濡らしていく。
視界が涙で歪み、天井の木目がぼやけて見える。激しい震えに晒され続ける肉体は、すでに限界を迎えつつあった。
快感が、頭のなかを真っ黒に塗り潰していく。物事を論理的に考えるための思考回路が、熱によって少しずつ溶かされていくのが分かった。
「あ、つ、……う、ううん、やだ……」
徐々に、言葉の端々から明瞭さが失われていく。普段の、理路整然とした、あるいはわざとらしく気取った喋り方は、消え失せてしまった。
余裕がなくなると、彼女の言葉は急速に、幼い、ひらがなのような響きへと変わっていく。
いつもの彼女を知る者が聞けば、耳を疑うほどに、頼りなく、脆い声。
「もう、むり、……おかしく、なっちゃう、よお……」
腰が何度も跳ね上がり、背中が弓なりに反る。
華奢な胸が、激しく上下していた。空気を取り込もうと、小さな唇が何度も開閉する。
涙でぐしょぐしょになった顔を枕に押し付け、声を押し殺そうとするが、喉の奥から漏れ出るくぐもった鳴き声は、どうしても止めることができない。
自身を責め立てる震えは、容赦なく彼女を追い詰めていく。頭のなかで、何かがぷつりと切れるような予感があった。それが怖くて、けれど同時に、早くその瞬間に辿り着きたいと、身体が切に願っている。
「いや、いや、……たすけて、だれか、あ、……っ」
引き絞るような悲鳴とともに、最大の波が押し寄せた。
身体中の筋肉が、一瞬にして硬直する。つま先までがピンと伸び、指先がシーツを破らんばかりに爪を立てた。
頭の中が弾けるような、強烈な感覚。視界が真っ白な光で満たされ、呼吸の仕方を忘れてしまうほどの衝撃が、彼女の小さな身体を貫いた。
何度も、何度も、小さく腰が痙攣する。
喉から、言葉にならない、ただの吐息のような声が、漏れ、途切れ、また漏れた。
どれほどの時間が経ったのだろう。
激しい波が去ったあとの部屋には、再び、静寂が戻ってきた。
ただ、彼女の荒い呼吸の音だけが、しばらくの間、規則正しく響いていた。
手から力が抜け、器具が布団の上に転がった。かすかな作動音がまだ続いていたが、彼女にはもう、それを止めるだけの力も残っていなかった。
身体中が、心地よい気怠さに包まれている。
先ほどまでの、狂おしいほどの熱は、今はもう、じんわりとした余熱となって皮膚の表面を漂っているだけだった。
「ん、……ぅ……」
彼女の頭の中は、完全に、ぽやぽやとした霧に包まれていた。
普段であれば、頭の回転が速すぎて、他人の意図や世界の裏側までを見通してしまう彼女だったが、事後のこの時間だけは、すべての難しい思考が停止する。
自分が誰であるかとか、明日何をしなければならないかとか、そういった、煩わしい一切の事柄が、どうでもよくなっていた。
ただただ、眠くて、心地よくて、そして、どうしようもなく、寂しい。
「……さむい、よ」
誰の耳にも届かない、小さな、甘えた声。
いつもなら、この瞬間に手を伸ばせば、誰かの温かい身体があった。その胸に顔を埋め、よしよしと髪を撫でてもらいながら、泥のように眠りにつくのが、彼女のいつもの形だった。
けれど今日は、誰もいない。
彼女は、自身の細い腕で、自分の身体をきゅっと抱きしめた。
他人の体温には遠く及ばないけれど、自分の体温だけでも、少しは救われるような気がした。
布団を頭まで深く被り、丸くなる。焦茶色の長い髪が、顔に絡みつくのも構わず、ただ、小さな巣のなかに隠れるようにして、じっとしていた。
激しく波打っていた鼓動が、時間をかけて、ゆっくりと、本来の速さを取り戻していく。
目尻に残っていた涙が、体温で乾いていく。
頭の中の霧は、そのまま、深い眠りの誘いへと変わっていった。
何も考えなくていい。
誰も騙さなくていい。
ただの、一人の、無力で、華奢な生き物として、ここに存在しているだけでいい。
「……ふわあ」
小さく、本当に小さく、欠伸が零れた。
その音を最後に、彼女の意識は、すうっと、闇の底へと沈んでいく。
冷たい夜風が、再び硝子窓を揺らしたけれど、布団のなかの、小さな温もりに包まれた彼女は、もう、その音に気づくことはなかった。
ただ、安らかな、静かな寝息だけが、暗闇のなかに、優しく溶けていった。
自慰って・・・よくね?(雰囲気をぶち壊して行くタイプ)