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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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大丈夫だってわかっていても、ソワソワしてしまう。

蒼さん、まだ帰って来ないかな。

彼から<先に寝てて良い>と言われても、どうしても顔が見たくて、起きて待っていた。

菫さんの話、どうなったんだろう。


ジッとしていられず、リビングのソファーに立ったり座ったりしていた。

その時――。

<ガチャッ>

玄関のドアが開く音がした。


蒼さんだ!

いつものように、駆け足で玄関へ迎えに行く。


「おかえりなさい!」


靴を脱いでいる蒼さんに声をかけると

「ただいま。帰るの遅くなってごめんね」

一歩、廊下に入ったところでギュッとハグをしてくれた。

嬉しくて私も抱きしめ返す。


「菫のことはもう大丈夫だから。蘭子さんがちゃんと話をしてくれた。だから安心して」


良かった。

いつもの蒼さんだし、きっと二人で上手く話し合いができたんだ。


「はい。良かったです。ケンカとかになって、蒼さんがケガしちゃったらどうしようかと思ったけど……。無事で」


「ケンカにはならないかな。あっちが一方的に怒ったけど、大丈夫だったよ」


よしよしと頭を撫でてくれる。

嬉しいけど、廊下でいつまでもこんなことしてたら迷惑だ。


「蒼さん、お風呂入って来ますか?その間に、夕ご飯準備しておくので」

彼から一旦離れる。


「ありがとう。お風呂行ってくるね。桜は寝てて良いから」


もう一度私の頭をポンポンしてくれた後、彼はバスルームへと向かった。

本当に良かった。何もなくて。

私はスッキリした気持ちで夕ご飯の支度をし、彼がお風呂から上がってきた時に「おやすみなさい」の挨拶をして自分の部屋へ戻った。


私が起きていると、蒼さんが気を遣ってくれるし。

またゆっくり話を聞こう。

蘭子ママさんにもお礼を言わないとな。

遥さんとまた一緒にSTARに行きたいな……。


そんなことを考えながら私は眠りについた。






それから――。

何気ない日常を送っていた。

菫さんがお店を辞めたと聞いた時は、少し複雑な気持ちになったけれど……。


「桜は何も気にしなくて良いから。みんな感謝してるよ。言い辛いことを教えてくれてありがとな」


蒼さんからそう言われて、プラスに考えることにした。

蘭子ママさんからも、また遊びに来てほしいと言われているし。

こんな良い人たちに出逢えて、大好きな彼氏までいて……。

今日、蒼さんが仕事がお休みだから、早く帰ってゆっくりお話したいな……。


経験したことない幸せな日々が続き、何か罰が当たるんじゃないかと思っていた時だった。


私はいつも通り仕事が終わり、最寄り駅まで一人で歩いて帰るところだった。


「桜!」

後ろから名前を呼ばれた。


この声――!

ドクンドクンと心臓が嫌な意味で脈打つ。

振り向きたくない、聞こえないフリをしようか。


逃げる選択をしようとしていた時

「おい。桜!」

もう一度名前を呼ばれた。

私の勤めている会社は知っているし、ここで逃げたらまた来るよね。


話だけなら、聞いても大丈夫だよね……。


振り返り

「優人……」

元彼の名前を呟いた。


彼はニコッと笑い

「久し振り。元気だった?」

そんな優しい言葉をかけてきた。

震える手をギュッと握り締める。


「元気だよ。こんなところでどうしたの?」

単なる偶然であってほしかった。


「桜には、本当に迷惑かけて。悲しませて。困るようなことをして……。謝りたくて。そこのファミレスで良いから、少しだけ話せないか?」


嫌だ。怖い。

優人と二人きりになんてなりたくはない。

謝ってほしくなんかない、もう関わらないでほしい。


「ごめん。今日、用事があって早く帰らなきゃいけないの」

無難な嘘をついた。


彼は一瞬怪訝な表情をしたかと思うと

「そっか。じゃあまた今度、時間を作ってほしい。ちゃんとした話をしたいんだ」


時間を作る?何のために?


「ちゃんとした話ってなに?私たち、もう終わってるんだよ。私はもう話すことなんてないから」


付き合っていた頃には言えなかった、自分なりの反抗。

優人に伝わっただろうか。


「じゃあね」

私はもう一度振り返り、帰ろうとした。


「桜。本当にごめん。よりを戻したいとかじゃない。金を返したいんだ。桜の金、かなり使っちゃったし。それで今も不自由な生活を送っているんじゃないかと思って。誰かから金を借りたりしているんじゃないかって心配で」


お金を返してくれる?

優人が使った私のお金が少しでも返ってくれば、蒼さんや遥さんに家賃とか返すことができる。

食費だって、光熱費だって、お世話になった分、ちょっとは渡せるんじゃ……。


「本当に返してくれるの?」

勇気を出して問いかける。


「ああ。ボーナスが入ったし。ただ大金だから持ち歩くのが嫌なんだ。今度時間を作ってほしい。今みたいな仕事終わりでも良いから。また連絡するよ」


どうしよう。

人がたくさんいるところなら、優人だってさすがに何もできないよね。


「わかった」

私が返事をすると

「また連絡する」

彼は手を振って私とは違う方向に歩いて行った。


複雑な気持ちで帰宅をする。


蒼さんに相談しようか?

でも蒼さんなら「そんなの要らないから。会うな。危ないから」って言いそう。

遥さんも同じこと言いそうだし。

私一人のせいで、食費とか絶対増えているし、光熱費や雑費だって――。

借りていた分まとめて返せるかも――?


「桜、どうした?」

玄関で立ち止まり、靴も脱がないでいた私に蒼さんが声をかけてくれた。


「あっ。蒼さん!ただいまです」


「おかえり。お疲れ様」


靴を脱ぎ、廊下へと進む。

蒼さんはお帰りのハグをしてくれた。


いつもは私がおかえりなさいと迎えている立場だから、この瞬間は新鮮だ。


「で、何かあったの?」

さすがは蒼さん。鋭い。


優人のことはどうするか頭の中でまとまっていない。

どうしよう。

菫さんのこととかもあったし、また心配かけるのもイヤだ。

綺麗なオネエ?さんは好きですか?

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