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「なん…何を…。」
ガラスでも、隔てたみたいに。
もときの声も、わかいの声も聞こえない。
二人が叫んでいるのは、見えるのに。
僕を探しているのは、見えるのに。
「もときっ…!」
僕、ここにいるよ。
「わかい…!」
ねぇ、こっちを、見て。
伸ばした手が、二人に触れることはなかった。
空気でも掴むみたいに、二人をすり抜ける。
『二人からは見えていない。お前、腰に痣がないか?』
「ある…けど、それが何か?」
帰してよ。
僕を二人のところへ、帰して。
『よくここまで成長したものだ。てっきりあっちのヤツに連れ去れると思ってたんだがな。』
泣いてる場合じゃない。
涙を堪えて、目の前の存在をきゅっと睨む。
「帰せよ、僕を。」
『帰さない。話があると言っただろう?』
「その話って、なに。」
大した用事じゃなかったら、怒っちゃうんだから。
『去りし日の契約により、お前を連れて行く。』
何処へ、と聞く間もなく、
世界は白銀の光に満ちた。