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正式な理由は、
「混乱を招くため」。
判断基準が曖昧。
回答の扱いが難しい。
業務効率に影響が出る。
もっともらしい言葉が、
会議資料に並んだ。
誰も、
「思い出してしまう人がいるから」
とは言わなかった。
掲示板から、
用紙から、
ポスターから、
問いが消える。
剥がした跡だけが、
うっすら残る。
窓口の女性は、
いつものようにスタンプを押しながら、
一枚の空白を見た。
もう、立ち止まる人はいない。
流れは、滑らかだ。
それでいいのだ、と
誰かが言った。
けれど彼女は知っている。
問いが消えても、
答えは消えない。
それは、
家の玄関に残った長靴だったり、
早すぎる「分かったよ」だったり、
あえて「はい」と丸をつけた
小さな静けさだったりする。
問いは廃止された。
でも、
思い出してしまった人たちは、
もう、戻らない。