テラーノベル
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雨はもう上がっていた
けれど、空はまだ曇っていた
灰色の雲が空を覆い隠して、なんだか気分までが重くなるようだった
放課後
校門を出た赫は、まっすぐ家へとは向かわなかった
向かいたくなかった
帰れば何か待っているかわかっているから
今日の父の機嫌が悪くありませんように
そんなことを考えるのは疲れてしまう
だから、自然と足はゆっくり動く
「暇乃くん!」
後ろから声がした
振り向かなくてもわかる
雨乃 瑞だった
鮫のぬいぐるみを抱えて走ってきた
「今日も一緒に帰ろ!」
「お前が勝手についてきてるだけだろ?」
「そうともいう!」
瑞はニコニコしていた
赫は少しだけ呆れる
でも、追い払いたくはなかった
最近気づいたことがあった
瑞といると、静かにならなかった
それが、少しだけ嬉しかった
しばらく歩いたところで……
「……帰りたくないな」
ぽつりと瑞が言った
赫は足を止めた
珍しかった
普段の瑞はそんなこと言わないから
「なんで」
そう聞く
瑞は少し困ったように笑った
「今日ね、お母さんの機嫌が悪そうだから……」
ぎゅっと鮫のぬいぐるみを抱く
「朝から、怒ってたし……」
赫は黙る
気持ちがわかった
嫌になる程
「暇乃くんは?」
「……別に」
「帰りたい? 」
赫は少し考えた
そして
「帰りたくない」
初めて、そう口にした
瑞は何も言わない
ただ隣を歩いていた
それが、少しだけありがたかった
「公園行こうよ」
そう瑞が言った
「なんで」
「時間潰せるし……」
赫は断ろうとした
でも、家に帰りたくないことは変わらない
結局、2人は一緒に公園へ向かった
夕方の公園。
遊具では小さい子たちが遊んでいる
犬の散歩をしている人もいる
赫と瑞はベンチに座る
少しだけ静かな時間
その時
ダンッ。
ボールの音がした
ダンッ。
ダンッ。
規則正しく響く音
2人は同時に顔を上げた
公園の奥
バスケットボールがある広場
1人の男の子がボールをついていた
汗だくになりながら
何度も何度も
シュッ。
ボールが放物線を描く
リングに当たる
カラン。
外れた
「惜しい……」
瑞が呟く
男の子は悔しそうに顔を顰めた
でもすぐボールを拾う
またドリブル
またシュート
外れる。
また拾う。
その繰り返し
「すごいね」
瑞が言う
赫もそう思った
何十回も失敗してるのに諦めない
自分なら途中でやめているかもしれない
その時
シュッ。
ボールが飛ぶ
今度は、
スパッ。
綺麗にネットを通った
「入った!」
瑞が立ち上がる
思わず拍手した
男の子がこちらを見る
そして少し照れたように笑った
「てんきゅ!」
元気な声だった
男の子はボールを抱えてこちらへやってくる
「見てた?」
「うん!」
瑞は頷いた
「すごかった!」
男の子は嬉しそうに笑う
「だろ!」
そして赫にも視線を向けた
「お前も見 てた?」
「まぁ……」
「どうだった?」
赫は少し困った
こう言う時なんて言えばいいのかわからない
でも。
「……すごかった」
正直に言った
男の子の顔がぱっと明るくなる
「よしっ!」
瑞が笑う
赫も少しだけ口元が緩む
男の子がボールを抱えたまま言った
「俺、柴野 茈!」
「四年二組!」
赫と瑞は目を丸くした
同じクラスだった
「えっ?!」
「同じクラスじゃん!」
瑞が驚く
茈は笑った
「気づかんかったん?」
「自己紹介の時寝てた!」
「まじかよ!」
3人で笑う
赫は少しだけ不思議な気持ちになった
同じクラスなのに
こんな風に話したのは初めてだった
その時。
茈が言った
「2人とも暇?」
「え?」
「ちょっと付き合ってよ!」
茈はボールを見せる
「シュート練習!」
「人いた方が楽しいし!」
瑞が笑顔になる
「やる!」
「暇乃くんも!」
赫は断ろうとした
でも、家には帰りたくない
ここにいる方がずっといい
それに、
茈の笑顔はなんだか眩しかった
「……少しだけ」
そう答えると、
茈は満面の笑みを 浮かべた
「よっしゃ!」
夕暮れの公園に、ボールの音が響く
ダンッ。
ダンッ。
ダンッ。
その日
赫は知らなかった
このバスケットボールを追いかける少年もまた
誰にも言えない苦しみを抱えていることを
そして。
3人の帰りたくない放課後が。
少しずつ居場所になっていくことを
コメント
7件
茈くぅぅん !!!! 待ってたわよ 😘😘 楽しそうに 笑ってても 悩みは あるものだよね …… 茈くんについて 詳しく 書かれる のが 楽しみです 😗🎶💗 家に 帰りたくない 3人の 放課後 良きすぎるね 🫵🏻🫵🏻 感想書くの 下手 すぎて やばいよ 😭😭 ごめ ~ ん 🥲
やばい‐‐‐!!! 神作すぎる💖♪ 紫くん出てくるの激アツ! 続きが楽しみです(*˘︶˘*).。.:*♡
**はる。だわ。** 第4話、めっちゃ良かった。赫と瑞がそれぞれ「帰りたくない」って思う気持ち、すごく伝わってきた。同じクラスなのに初めて話す茈の天真爛漫さが眩しくて、3人の空気が少しずつ温かくなっていく感じがたまらなかった。夕暮れの公園で響くボールの音、静かに彼らの居場所ができていく予感がして、めちゃくちゃ続きが気になる…!
#御本人様とは一切関係ありません
_ ℒ .
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#茈赫