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第11章 逃げない場所(緑谷いずく視点)
放課後の屋上。
風が強くて、
フェンスが低く音を立てている。
この場所を選んだのは、
逃げ場がないからだ。
「……来てくれるかな」
心臓がうるさい。
最初に来たのは――
「いずく」
轟焦凍。
目が合って、
少しだけ空気が和らぐ。
次に、
「よっ」
上鳴電気が軽く手を挙げた。
でもその目は、真剣だ。
「おっす」
切島鋭児郎。
まっすぐ立って、視線を逸らさない。
最後に――
「……呼び出しておいて遅ぇな」
爆豪勝己。
全員、揃った。
この瞬間、
胸がぎゅっと締めつけられる。
(逃げたい)
でも。
深く、息を吸った。
「……時間、取ってくれてありがとう」
誰も、茶化さない。
それが、
余計に怖かった。
「僕……最近、考えてたんだ」
言葉を選ぶ。
でも、
選びすぎたら嘘になる。
「みんなが、僕のことでぶつかって」
「それで……僕、怖くなって」
一瞬、爆豪の眉が動く。
「でも」
顔を上げる。
「それ以上に」
「ちゃんと向き合わなきゃって思った」
沈黙。
風の音。
「僕は……」
胸に手を当てる。
「4人のことを、考えてた」
一人ずつ、目を見る。
「かっちゃんは、不器用で」
「すごく強くて」
「誰よりも、僕を置いていかない人」
爆豪が、息を詰める。
「焦凍は」
「一番近くて」
「一番、揺れてて」
「それでも、守ろうとしてくれる」
轟の視線が、揺れる。
「上鳴くんは」
「僕の気持ちに、一番早く気づいてくれて」
「笑ってるのに、真剣で」
上鳴が、ゆっくり瞬きをする。
「切島くんは」
「並んで立とうとしてくれて」
「僕を、弱いまま肯定してくれた」
切島が、拳を握った。
「……全部」
声が震える。
「全部、大事で」
「全部、好きなんだ」
屋上が、
完全に静まり返る。
誰も、すぐに動けない。
「だから」
僕は、はっきり言った。
「今、誰か一人を選べない」
爆豪が歯を食いしばる音がした。
上鳴が息を吐き、
切島が目を伏せ、
轟は、何も言わない。
「でも」
続ける。
「誤魔化したくない」
「期待させたまま、逃げたくない」
一歩、前に出る。
「僕は」
「向き合うことを、選びたい」
「……どういう意味だ」
爆豪が、低く聞いた。
「それぞれと」
「ちゃんと話して」
「ちゃんと知って」
「ちゃんと、気持ちを育てたい」
上鳴が苦く笑う。
「……ずるいな」
「うん」
正直に頷く。
「でも」
「一人も、切り捨てたくない」
切島が、静かに言った。
「それで、俺たちは?」
「……待たせる」
はっきり言う。
「その間」
「無理に触らない」
「無理に縛らない」
轟が、ようやく口を開いた。
「……覚悟はあるのか」
「ある」
即答。
「4人全員と向き合う覚悟も」
「嫌われる覚悟も」
沈黙。
そして――
「……チッ」
爆豪が、顔を逸らした。
「簡単じゃねぇぞ」
「うん」
「でも」
一歩、踏み出す。
「逃げねぇなら」
「俺も、逃がさねぇ」
上鳴が小さく笑った。
「……フェアってことで」
切島が、拳を胸に当てる。
「男らしい話だな」
轟は、静かに言った。
「……了解した」
その目は、
もう迷っていなかった。
屋上を出たあと、
僕は一人、残った。
膝が、少し震えている。
でも。
(言えた)
これが、始まりだ。
選ぶための時間じゃない。
想いを本物にする時間だ。