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◻︎雪平さんと礼子のお客様
秘密基地から帰って、早めに晩ご飯の準備をした。
今日は聖は、ご飯はいらないと言ってたし、夫は会社の人と飲んでくるから軽くでいいらしい。
簡単に、豆腐サラダと煮魚くらいにしておくかな?
ぴこん🎶
《美和子さん、もう元気になりましたか?》
届いたのは、雪平さんからのメッセージだった。
結局、事故をしてから一度も連絡をしていなかったし、雪平さんからも来なかったから、このまま終わるのだろうなと考えていたけど。
久しぶりのメッセージに、やっぱりまだドキドキしてうれしくなる私がいた。
〈もう大丈夫です。あの時はすみませんでした。雪平さんにもご迷惑をお掛けしましたよね?なんとなく連絡しづらくて…〉
もう、終わりにすると決めていたのに、この気持ちの昂りには我ながら呆れる。
《元気になったのならよかった。迷惑だなんてとんでもない。もしかしたら、これでおしまいになってしまうんじゃないか?そんな気がして、今日まで連絡できずにいました》
_____同じことを考えていたんだ…
どう返事をしようか、考えていたら続けてメッセージが届いた。
ぴこん🎶
《よければ、電話してもいいですか?》
そのまま、私からかけた。
ワンコールで雪平さんの声がした。
『もしもし、美和子さん?』
「はい。ご心配をおかけしました」
『いえ、付き添って病院に行くことができず、ごめんなさい』
「そんな、それは約束してたことですから」
『でも、いざという時の礼子さんの連絡先を聞いておいてよかった。あ、それで、話があるんですが。今、時間はいいですか?』
「はい、いいですよ」
何の話だろうか、緊張する。
『実は今、その礼子さんが仕事用に借りてる部屋に来ています』
「え?」
_____え?仕事用の礼子の部屋?もしかして、秘密基地?
「はぁ、そうなんですか」
『実はですね…』
なんで雪平さんが秘密基地に?ってか、礼子と?え?なんで?男入れちゃダメでしょ、礼子さん!!
思考回路がぐるぐる回る。
誰かを連れてくると言ってたけど、それって雪平さん?
私を巻き込みたくないからって、帰されたけど??
雪平さんの話を聞いてるつもりが、内容が入ってこない。
「あの、すみません、もう一度お願いします」
『いいですよ。礼子さんが担当しているご家族に、少々問題がありまして。そこの高校生の女の子を、礼子さんが一時預かることになりました。それでこの礼子さんの部屋に連れてきたんですが。勝手に未成年を連れてくると誘拐罪だとかの問題になっても困るということで。礼子さんから私に連絡があって知り合いの生活安全課の課長に連絡を入れて、事情を説明したところです』
「なんだか、大変そうですね」
『えぇ、家族だけで介護をしていると、いろんな問題が起きますね。それで、警察への事情説明が終わった時に、礼子さんから美和子さんに連絡をするように言われたんですよ』
「礼子が?」
『はい、僕から美和子さんに連絡してやってくださいと』
「礼子ってば、もう!でも、一度きちんとお話をしないといけないと思っていたところなんです」
『…それはやはり?』
「えぇ。闇鍋はもう…。また何かしでかして迷惑をかけてもいけないので」
しばらくの間。
『もう一度、仲の良い友達からではどうですか?異性の友達ではダメですか?このまま美和子さんと会えなくなるのは、正直、悲しいですから』
「あ、はい、友達なら。私も雪平さんとはまだまだおしゃべりしたいですし」
もう会いません、そう言うつもりだったのに。
そうしないといけないと決めていたはずなのに。
自分の意志の弱さを思い知った。