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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第66話 担任視点〚二人の理解が噛み合っていないと確信する回〛
夕方。
ホテルのロビーは、
修学旅行二日目の疲れと、
少しの高揚が混ざった
独特の空気だった。
私は、
名簿を確認しながら
一班の様子を
遠くから見ていた。
——違和感は、
ずっと前からあった。
でも、
今日で確信に変わった。
海翔は、
澪の少し前に立っている。
不自然じゃない。
むしろ、
自然すぎる。
澪が人に囲まれそうになると、
無意識に
“間”を作る。
言葉は少ない。
行動も大きくない。
——けれど、
確実に“守っている”。
一方で。
真壁恒一は、
少し離れた場所から
澪を見ていた。
視線が、
まっすぐすぎる。
迷子になった後も、
謝った後も。
「澪だけ」を
見ている。
(……同じ“近づき方”じゃない)
私は、
心の中でそう呟いた。
海翔は、
澪を“中心にしない”。
澪が、
目立たないように。
選ばれないように。
責任を負わないように。
それに対して。
真壁は、
澪を“中心に置く”。
特別。
一番。
唯一。
——この二人は、
真逆だ。
本人たちは、
どちらも
「澪のため」だと思っている。
でも。
守るために
距離を調整する人と。
好意のままに
距離を縮める人。
その理解は、
噛み合わない。
そして、
噛み合わないまま進めば——
必ず、
誰かが傷つく。
私は、
澪の表情を見る。
静か。
でも、
少し硬い。
(……もう、気づいてる)
澪は、
空気の変化に
敏感だ。
自分が原因で、
班の雰囲気が
歪んでいることにも。
それを、
口に出さないところが、
この子の危うさだ。
(止めなきゃいけない)
(でも、
“誰を”
どう止めるか)
叱ればいい問題じゃない。
真壁は、
悪意がない。
海翔は、
やりすぎている。
澪は、
どちらも拒めない。
——一番難しい形だ。
私は、
深く息を吸った。
(この修学旅行は、
楽しい思い出で
終わらせる)
(そのために、
大人が
一歩前に出るべきだ)
名簿を閉じて、
視線を上げる。
廊下の先で、
海翔が
こちらを見た。
一瞬だけ。
その目に、
覚悟があるのが
分かってしまった。
(……この子も、
分かってる)
だからこそ、
任せきりにはできない。
二人の理解は、
もう噛み合っていない。
——なら、
壊れる前に、
私が間に入る。
そう、
静かに決めた。