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「奇行種なんだ……」
「うん……」
たぶん「奇行種」というワードを使いたいだけなんだろうなと、幾ヶ瀬の苦笑。
「有夏の実家、知ってんだろ。狭い団地なんだよ。4畳半の部屋3つと小っさい台所しかなくて。そこに姉ちゃんら6に……匹と有夏、あとお父とお母の9匹……人で住んでて……」
「うんうん。もう『人』で統一しなよ」
背を撫でながら聞いてやる。
あまり裕福ではない胡桃沢家だったが、両親の仲の良さと、子らの美貌は近隣でも評判だった。
だが、容姿は美しくても内面は色々あるようで。
「姉ちゃんら家ん中、全裸でノッシノッシ歩いて、いきなり取っ組み合いのケンカ始めるんだ。こう……いきなりグワッとつかみかかる感じで。予測不能な動きで、毎日どこかが揉めてて。有夏はとにかく怖くて……」
「う、うん……」
高校卒業までいた自宅の辛い日々を思いだしたか、有夏の表情が沈む。
ミバの良い末弟は、パワフルな彼女たちにとって格好のオモチャだったらしく、ベロンベロン舌を入れてキスをされたり、弟の性器をわしづかんでそのサイズを馬鹿にしたりという──そのあたりはさすがの有夏も言いにくそうにしていたが。
「ベロンベロン……」
幾ヶ瀬が目を見開く。
減るもんじゃねぇだろ。やわらけー、弟のクチビルぅとか言って次々襲われる少年有夏を想像したに違いない。
「そんなんなのに、外に出たら上品ぶりやがって。女って本当に怖いんだ」
どうやら有夏のコミュ障の原因はそのあたりにあるようだ。
ついでに彼女じゃなくて彼氏がいるのも、恐ろしい姉たちの存在が大きく理由を占めているように思われる。
「……だから、幾ヶ瀬に初めてチューされた時、やさしくて死ぬと思った」
「有夏……」
どちらともなく指を絡めて互いの唇をついばむ。
「いく、せぇ……」
「ん……駄目だよ、有夏」
「いくせ、舌いれて」
鼻が触れ合うくらいの間近に有夏の弛緩しきった顔を見て、幾ヶ瀬は狼狽えたように視線を逸らせた。
「だ、駄目だよ、有夏。掃除しなきゃだろ? あれほどのゴミ屋敷、けっこう時間かかるよ? それに明日、俺早番だし……あひゃ」
有夏が幾ヶ瀬の唇を舐める。
「だ、駄目だって。俺、風呂入ってない……じゃなくて! 遅番の次の日が早番ってどんなシフトだよ……じゃなくて……有夏ぁ」
幾ヶ瀬の制止を完全に無視して、頬に舌を這わせ耳たぶを噛む。
尻の下で幾ヶ瀬のモノが固くなる感触に、有夏は笑みをこぼした。
「幾ヶ瀬、しよ」
「有夏……俺、明日は早番だから! ディナーの仕込み終わったら帰れるから。それから一緒に大掃除しよ? ね? だから今日は……はぁんっ!」
布越しにモノを押さえられ、幾ヶ瀬はたまらず悲鳴をあげる。
「幾ヶ瀬の仕込みはもうできてる」
「そ、そういうこと言うんだ、有夏!?」
まさかの下ネタに、観念した様子。
しょせんは無駄な葛藤から解放された幾ヶ瀬は、両手で有夏の背を支えると、そのままベッドに押し倒した。
してやったりという表情で、有夏も彼の腰に腕を回す。
「きもちい。幾ヶ瀬に乗っかられるの。重くて、動けなくて……」
「有夏ってさ……」
「んぁ?」
「前から思ってたけど、ベッドじゃ甘えただよね?」
「なにがぁ?」
「気付いてないならいいけど」
すでにトロンと目を潤ませている有夏に、余計なことは言うまい。
幾ヶ瀬は有夏の短パンを下ろすと、大きくなったそれを握る。
有夏が切なげに呻いた。
「有夏……今日はこうしよ」
もう片方の手で、幾ヶ瀬が自身のモノを持つ。
「幾ヶ瀬? ヤだっ、挿れてっ……んっ!」
肉棒同士を擦り合わせる。
「そこじゃ、なくて……うしろっ、挿れ……あぁっ」
容赦ないスピードに有夏もビクリと身体をのけぞらせる。
「あり、かっ……明日に体力、残しておかなきゃ、ね」
互いの汁が幾ヶ瀬の手の中でベトベトと絡み合う。
滑りが良くなるにつれ、2人は押し黙った。
漏れるのは激しい呼吸と、濡れた肉が擦れあう音だけ。
「ありかっ、きもちい……俺、もうっ……」
「ふぁっ……やあっ! いくせっ、イキたくないっ」
圧し掛かる男の首筋に両腕を回して有夏が首を振る。
「挿れてって言ってる、のにっ! いくせっ、ん、んっ……んんっ」
反射的な動きで幾ヶ瀬がティッシュを当てがい、双方の精液を受け止める。
ブルッと全身を震わせて、有夏の全身から力が抜けた。
「有夏、明日掃除終わったら……いや、多分無理か。日曜の夜にちゃんとしよ。ね?」
身を起こそうとした幾ヶ瀬の腕を、有夏がしっかりつかむ。
「だぁめ。挿れろって言ったのに。罰としてずっと有夏の上に乗ってろ」
ぐいと引っ張られ、幾ヶ瀬の身体が有夏の上に倒れ込む。
「で、でも重くない?」
「重いけど、いい。あと、ギュッてしろ」
「有夏ぁ?」
「早く!」
まるで脅されたように怖々と有夏の身体に腕を回すと、花がほころぶように有夏が微笑した。
「幾ヶ瀬、なんか言うことない?」
「好きだよ、有夏」
「ん。よし。」
抱き合ったまま2人は顔を見合わせ、笑みを交わした。
「そうだったのか、胡桃沢家」完
※次回は「記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派」というお話です※
【予告】「記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派」
「有夏ぁ、今日は何の日?」
ありえない時間に起こされて、そう問われた有夏。
ドラクエの発売日は覚えていても、2人の記念日やら諸々の日付は何ひとつ覚えちゃいない様子に、幾ヶ瀬はクドクドと詰りだす。
どうやら今日という日にむけて、幾ヶ瀬は色々と計画を立てていたようで…。
さて、今日は何の記念日なのでしょうか(←突然のクイズかよ!?)
今回のお話を書くにあたって「たまにはエロ無しの(できれば)ちょっと良いかんじのお話を書きてぇな」と思いました。
でも、書いているうちに「やっぱりエロくなくちゃいけねぇや」と思い直したのです。
エロ有か、エロ無か…悩むところです。
そのとき、私の理性が「エロ有だぜ。エロくなきゃ始まんねぇぜ」と囁いたのです。
どうかしてるぜ、私の理性。
なので、ほんのちょっとエロいお話です。
明日から少しずつ更新していきます。
読んでくださったら嬉しいことこの上なしでございます。
みなさま、楽しいクリスマスをおすごしくださいね。