テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
物置事件から二日が経った。
あの時、彼女の頬を叩いた女子たちも謝罪に来てくれ、なんとか事態は解決に向かっていた。
クラスも徐々にいつもの日常を取り戻し、みんなも元の生活に戻ろうとしていた。
そんな中、ケイ、カンジ、ヒカル、レキ、リツ、そしてココロと私の七人で夏の旅行に行くことが決まった。
ココロは意外なことに、私とカンジだけに海が怖いことを打ち明けたので、行き先は海ではなくプールになった。
「ヒカルー!浮き輪どこ入れたー!?」
レキの叫び声が、廊下に響く。
階段の上から、ヒカルが顔をのぞかせる。
「さっき玄関のとこ置いといたよー!てか、朝からうるさーい!」
「だってカンジが圧縮袋にタオル入れてくれなくてさ〜!荷物が爆発してんの!」
「状況が混乱するんで嘘つかないでください。爆発してませんよ。物理的におかしいです。」
カンジは小声でつっこみながら、黙々と自分のリュックにバスタオルを押し込んでいる。
その横で、ケイがアイスコーヒーを飲みながら冷静にまとめていた。
「……水着、着替え、タオル、日焼け止め……リツ、確認した?」
「おう!。あとクーラーボックスにはスポドリ3本入れてる。保冷剤は冷凍庫から直で入れるから出発直前に持ってくぜ!」
「やるねー。流石、家庭内マネジメント担当!」
とレキが茶化して言うと…
《言い方が重い》
とみんなに言われた。
***
2階、女子の部屋。
「……うーん、パーカー、これかこれ……」
円は2枚の薄手のパーカーを手に悩んでいた。
水色と白、どっちがココロちゃんに似合うって思われるだろう――
いや、違う違う、私が着るやつだし!
そんな自問自答の最中、ココロがそっとドアを開けて入ってきた。
「……準備、できてますか?」
「うん、だいたいね……あ、ココロちゃんも、荷物まとめた?」
「はい。浮き輪は……リツさんが貸してくれるって言ってました」
「そっか、よかった!」
と円が笑う。
「……でも、やっぱり少し緊張します」
「緊張?」
「……みんなと、こうして“遊び”に行くのは……初めてだから」
円は一瞬、目を見開き――
そのあと、ふわっと笑ってココロの手を取った。
「じゃあ、今日が“初めて”の日だね。大丈夫。ココロちゃんと一緒なら、絶対たのしいよ!」
ココロは、少しだけ戸惑いながらも――
「……はい」
小さくうなずいた。
***
玄関では、男子組が順番に荷物をチェックしていた。
「ヒカル、タオル忘れてんぞ。さっき乾燥機の上に置きっぱだった」
「ホントに!?ありがとーケイ!」
「レッキーは水着持った?」
「……いや、それはヒカルが持ってるんじゃ?」
「僕!?知らないよ!」
カンジが呆れ顔でふたりを横目にリュックを背負う。
「……しょーがないですね。今から全員で荷物最終チェックです!」
「はーい!」
ドタバタとした足音が響くリビング。
そしてその奥から、制服ではなく、私服姿のココロと円が静かに降りてきた。
「……おまたせしました」
振り向いた円の目に映ったのは――
いつもとはどこか違う、静かな光をまとったココロの姿だった。
濃い青緑色のロングキュロットが、足元まで流れるように揺れ、落ち着いた色味の中に凛とした気品を宿していた。
胸元には真っ白なシャツ。その清らかな白は、彼女の肌をいっそう明るく映し出している。
肩に軽く羽織った水色のカーディガンは、淡く透ける生地が光を優しく通し、まるで朝の水面のように繊細で柔らかい印象を添えていた。
そして、何より目を引いたのは――
いつもの高めのキャンディヘアではなく、落ち着いたハーフアップに結われた髪型。
その結び目には、純白のカチューシャが添えられており、まるで一輪の白い花がそっと咲いているかのようだった。
「ココロちゃん……かわいい」
「えっ……?」
「いや、なんでもないっ!」
ココロは少しだけ首をかしげ、でもそれ以上は何も聞かず、みんなの輪に加わっていった。
そして、玄関のドアが開く。
夏の光が差し込むその先へ――
7人は、旅に!
つづく