テラーノベル
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第76話
「ロルフっ! 倒れたって聞いて……」
そう言って朝方に宿屋にニコラさんが入ってきた。
「大丈夫です。別に体がどうのこうのって話じゃないですし」
「そうなの? ロルフの言う事って信じられないけど……」
そう言って僕の事を信用の無い目で見つめた。
いや、そこまで?
まぁ、前科があるからなんとも言えないけど……それでも酷くない?
「きっと、体は大丈夫だと思いますよ」
アニカがそう言うと「体は?」と悪い笑みを浮かべた。
わぁ、これはもう逃げられない……
それから、半分くらい聞き取られた。
……王国を解散するって事は言って無いけど。
「……って事か。無理はしないで」
「はい。無茶させてしまいました……」
いやいや、そんな事無いから。
「そんな事あるからね」
心読まれた……うん。もう無理だ。
それからアニカとニコラさんは仲良く喋ってセルフを出たのが昼過ぎになってしまった。
結局着いたのはその日の夕方頃。
……予定より、丸一日と数刻遅れた。
あれから、魔物は出なかったし、族も居なかった。
居たのは、妖精。
……妖精って沢山いて、二歩、歩けば一人いる。
何なら量で言ったらあいつらが怖い。というか、街中で話しかけれる事が稀にあるから、そっちの方がもっと怖い。
僕たちはあれから、何事も無く、平和に王城へ戻った。
数日後。
僕はいつものように薪を割って、家の掃除を済ましていると手紙が届いた。
明日、聖騎士の服を着て公務に参加しろとの事。しかも、男の字だ。
誰? アニカの名前使われてるけど……アニカはもう少し違うからな……別に知らん事だし、あの事だろうし……
ってか、行動早っ! あれから数日しか経ってないよ?
僕は、明日の分まで済ましたら、戸棚の奥底から聖騎士の服を出した。
着ないと思ってしまってたけど、少し、足首が見えるよつにまでなっていた。
……二十年近く子供が着れたなら凄いよね。一応、肉体年齢は、十五って言われたけど……本当かな?
これじゃあ、みっともないから、少し伸ばすか。
僕は、ソフィーの机を借りて針と糸で何とか裾と袖と丈を伸ばした。
……こんな事ある?
別に、歪んでる訳じゃないけど、とても上手とは言い難いよね……
やっぱり、他の人にやってもらえば良かったかな……? でも、このくらいやっておかないと、ダメ人間になりそう……
いや、アニカの中ではきっと、そんな認識なんだろうけど、流石にそのくらいは出来ておきたい。
僕は縫い目がぎこちない聖騎士の服を見てため息をついた。
次の日。
結局そのまま来た。サイズは大丈夫だけど、縫い目がな……まぁ、別に支障が出る訳じゃ無いし。大丈夫だと思いたい。
「ロルフ。急にゴメンね……あ、前に話した事なんだよね」
「うん。分かってる」
それなら、アニカは自由だけど、本当に自由になりたかったのなら、僕が奪って……いや、本当にやるべき事が沢山ある。
「じゃあ、よろしくね」
僕は無言で頷いた。
特に、喋る所も無く立ってれば時間は勝手に過ぎ去ってくれる。
アニカともっと一緒が良いけど……別れが一番怖い。生気も無い姿なんて、全く想像もしたくない。
でも、アニカには何度も救われた。
命も勿論だけど、心も。アニカは居なかったら僕は何も口を開かない、朴念仁になって避けられている奴になっていただろう。
……僕だって全力でアニカを守った。本当に守れたかはさておき、この人に命をかけた。これは、自分の意思。
だから、一生を一緒にするのもいいのかなって……自惚れかな?
あれから、二人でサンコウの木に来た。
「今日はありがとう」
「こちらこそ。アニカは、これからどうするの?」
「のどかな村で、普通に暮らしたい」
そう言って青く澄み渡る空を見上げた。
「そっか。今日で公務も終わりだね」
「うん。ロルフも自由気儘にこれからを過ごしてよ。私に、縛られてほしくない」
その言葉を聞いた時、ギュッと心が握り潰されたような、そんな感覚になった。
「……そうなんだ。僕もアニカには自由になってほしい」
ふと、シルビオさんが『そのまま、何も伝えずになってほしくないだろっ……』と呟く声が聞こえた気がした。
「ロルフ?」
「あ、ごめん。空耳だったみたい」
何も伝えずになってほしくないのは分かるよ。分かってるよ。
……でも、僕たちが結ばれるとなるとさ、傷つけ合って、今より窮屈で……駄目なんだよ。
「……もう剣を持たなくていいよ。私のためにもう傷つけないで。もう他の人と幸せになってよ」
アニカが俯きながら冷たい声で呟いた。
#カントリーヒューマンズ
上野文
8,814
#死ネタ、流血表現、暴力表現
コメント
1件
ああ〜第77話読んだよ😭💔 サンコウの木のシーン、切なすぎる…!お互いに「自由になってほしい」って言いながら、本当は一緒にいたいのがにじみ出てて胸がギュッてなった…。アニカの冷たい「他の人と幸せになって」が刺さるよ…!ロルフの心の声が痛いほど伝わってくる展開だった…次が気になりすぎるよ!!🌸