「やっ‥も‥ゆる‥し‥て‥」
静かな部屋に‥懇願する俺の声だけが響き渡る。
幾度となく迎える絶頂を解き放したくて‥彼に許しを請う。
早くいきたいと‥。
だが‥それは叶わない願いであることも知っている。
「‥まだ‥いかせないから‥」
勝手にいったら許さないよ‥と強く念を押されてしまう‥。
普段は優しい彼の眼光は鋭く、恐怖さえ感じるほどに冷たい空気をまとっていた。
堪らず横に顔を背けるが、すぐに顎を押さえられ強制的に向かせられてしまう。
苦しさに思わず顔が歪む‥
「苦しい?藍?‥そんなにいきたいの?」
そう聞いてくる祐希さんの声は優しかったが‥その瞳は‥何の感情もないのではと思わせるほどの冷酷さを物語っていた‥。
それでも、すがりたい一心で首を縦に振る。
必死で頷く俺を見て、アルカイックな笑みを見せた祐希さんが‥おもむろに唇を塞ぐ。
「んっ、は‥」
相変わらずの深い口づけに頭がボーッとしてしまう。熱い舌が口腔内をまさぐり、角度を変えるたびに唾液が頬を伝い落ち‥息苦しさに耐えかねて逃げようとするが、そのたびに長い指で封じ込まれ逃げることも出来ない。
そうやって口を塞がれている間も‥下への愛撫を巧みに与えられ‥いけないもどかしさに身体が震える。
中心部分は勝手にいかないようにと縛られ、両手も頭上にて拘束されていて‥慰める事も出来ない‥
「や‥さわん‥ない‥で」
震える声を絞り出すが、祐希さんには届かない。
長い指で弄ぶように中心部分に刺激を与えながら、左右に開かされた両足の間に身体を寄せ‥屹立している欲望を入り口に押し当ててくる。
「身体が柔らかいから開くとよく見えるね‥藍も見る?」
「やっ‥いや‥」
「藍は嫌しか言えないみたいだな‥そのくせ‥俺がいない間は他の男と寝てたんだろ?‥俺が気づかないとでも思った?」
「ちがっ‥」
「違わないよ‥本当の事じゃん。何回寝たの?甲斐だろ?」
「‥なっ‥」
「くすっ‥藍って本当に顔に出るよな‥甲斐もだよ‥悪いけど‥」
黙っていられるほど俺は優しくないから‥
そう言うと、勢いよく祐希さんの一部分が俺の内部に挿入される。あまりの激しさに激痛が伴い、身体に力が入ってしまう‥
「い‥痛い‥ゆ‥ゆっく‥りして‥」
あまりの痛みに汗が噴き出す。激痛から逃れようと身体を動かすが‥縛られている事もあり身動きは取れない。
しかし‥そんな俺に構うことなくさらに奥へと突き動かされ悲鳴が漏れ出てしまう。
「そんなに痛い?」
「あたり‥前‥痛い‥に決まっ‥て‥る」
無表情にそう問われ‥涙がボロボロ溢れる中、思わず祐希さんを睨んでしまう。潤滑油の滑りはあったものの‥準備がされていない中での行為は‥痛みを伴うものだった‥。
痛みを紛らわそうと何とか乱れる呼吸を整える。
それなのに‥
「んあっ!?‥やっ」
無慈悲にも祐希さんはさらに腰を強く打ちつける。狂気とも思える動きに思わず目を瞑り‥ひたすら耐えるしかなかった。
祐希さんが許してくれるまではと‥だが、
「藍‥目を開けて‥閉じるなんて許さない、今お前を抱いてるのは誰?
しっかり見ろよ‥
誰がお前を愛しているのかを‥」
顎を掴まれ、静かながらも怒りを含んだ低い声に‥恐る恐る目を開ける。
優しかった祐希さんが‥
冷たい目で俺を見つめている。
「ご‥
ごめんなさい‥
祐希さん‥」
もう何度哀願しただろうか‥
許して欲しいと‥。
弱い自分を今になって責めたとしても‥
手遅れだというのに‥‥‥。
時間は遡って‥数時間前‥
2日前‥帰国した祐希さんから2人で会いたいとの連絡が‥
もちろん即返事をし、その日の用事を済ませ足早に自宅へと急ぐ。2人で会うのは決まって俺の部屋だったから。
祐希さんが来る前に‥慌てて部屋を整理する。普段も散らかしている訳では無いが、念の為‥。
大丈夫かな‥そう思いぐるりと見渡すと ローションを出したままにしていることに気付き慌てて片付ける‥
使用したのは‥2週間前。
甲斐が泊まりに来た時だった。
甲斐‥。
寂しさからとは言え‥優しい甲斐の気持ちにつけ込み幾度となく夜を共にした‥。
「寂しい時は僕に頼ってください」
その言葉に甘えていたこと‥。
正直、身体を重ねている時は寂しさから解放され、ただひたすら快楽を求めるだけの愚かな自分になれる気がした。
日々の重圧からも解き放たれ‥
でも
後悔がないわけではなかった。
朝になると‥途端に自責の念が生まれる。
それの繰り返し‥。
いつか‥祐希さんに打ち明けなければいけないだろう‥。
でも‥
祐希さんは許してくれるだろうか。
嫌われる‥いや、愛想を尽かされるかもしれない‥
そう思うと怖くて打ち明けることが出来なかった。
あんなに会いたかった祐希さんに‥
今になって怖いと思ってしまう‥
「ごめん、少し遅くなった」
予定より10分遅れで祐希さんが到着した。相変わらずの律儀さに笑顔で応え、部屋へと案内する。
リビングに入るなりぐるりと見渡し‥まぁまぁかなと笑い呟くその姿は‥イタリアに行く前と何一つ変わっていない。
‥挨拶もなしにイタリアに出発した日‥。
あの日は寂しくて‥ずっと泣き続けたこと。
その事をふと思い出す。
「藍?どうした?」
リビングに腰掛けしばらくは近況の話をしていたのに‥急に黙ってしまった俺に祐希さんが話しかける。
「祐希さんが‥イタリアに出発した日の事思い出してた‥
一言もなく行ってしまったやろ?
何でなん?
朝起きたらおらんから‥
寂しかった‥。
もう2度と会えなくなるんかなって‥めっちゃ辛くなって‥」
素直な言葉を口にする。
イタリアに行ってしまった祐希さんには迷惑をかけまいと伝えていなかったから‥
「ごめん‥出発する時に言えなかったのは藍の顔を見たら辛くなると思ったから‥
さよならは言いたくなかった。
また会えると信じてたからね‥
そんなに辛かったんだね‥
‥‥‥一人じゃいられないほどに‥」
含みをもたせた言い方に思わず息を呑む‥。
俺を見る目は何もかも見透かしているような‥
「祐希‥さ‥ん‥俺‥」
「ああ‥言わなくていいよ‥
わかってるから‥
寂しかったんだろ?大丈夫‥藍はね‥
身体のほうが正直だから‥そっちに聞くことにするよ‥」
そう言って俺を押し倒した祐希さんの顔は‥
これまで見たこともない表情だった‥。
コメント
7件
怒らせちゃいましたね😅でも、祐希さんも寂しかったはずやのに浮気した藍くんが悪いですから祐希さん激おこぷんぷん丸になっても仕方ないですね😅頑張って祐希さんの愛を受け取ってね!次回も楽しみにしてます😊
コメント失礼します☺️ 今回のお話も最高でした♪藍くん大丈夫なのかなと思い、祐希さんも優しめにしてあげてほしいなと思いました♪ 藍くんなんとか頑張って欲しいですね☺️これからもお話を作るのに大変だと思いますけど頑張ってくださいね♪ ゆうらんさんずっと応援してます📣