目が合った。貴方の瞳は戸惑いで揺れていた。
気づいた?気づいてない?
ごまかせる?ごまかせない?
言葉を探した。
でもそれより先に貴方が言葉を紡いだ。
答え合わせの時間だ。
誰かがそう僕の耳元で囁いた。
目にいっぱいに涙をためる元貴を見て、もう後には引けないと悟った。どうしようもなく臆病者の僕だけれど、一生分の勇気を使い果たしてでも、今伝えてしまおうと思った。
「もう気付いているかもしれないけれど、僕にとって元貴は「特別」なんだ。もちろん若井や、ミセスそのものも僕にとってはかけがえのない存在ではあるけれど、それだけじゃ言い表せない……ねぇ、あの鍵括弧は僕の「特別」と同じだと思ってもいいのかな」
何か言おうとして息を吸って、でも言葉がうまく紡げないのか何も言えないままに息を吐いて。それを何度か繰り返してから、一度大きく息を吐いてこちらをまっすぐに見返す。僕は彼のそんな一つ一つの動作から目を離すことができずにいる。
「いつ気づいたの」
「昨日……なんだか眠れなくて、あの歌詞を見返してたんだ」
「遅いよばか」
こらえきれないとばかりに激しく嗚咽し涙をぼろぼろとこぼす元貴に、思わずそばに寄りしっかりと抱きしめる。
「涼ちゃんだから甘えられるの」
嗚咽交じりにか細い声で、でもはっきりと僕に語り掛ける。
「うん」
「鋭い言葉を使っちゃって後悔するときもあるけど」
「うん」
「抱きしめるのも、抱きしめられるのも、涼ちゃんじゃなきゃダメなんだよ」
「……うん」
鼻の奥がツンとして、じわじわと瞼が熱を持ちはじめる。
「ありがとう」
何とか口にした言葉はカッコ悪く震えてしまう。頬を生温いものが次々と伝っていく。
「大好きだよ、元貴。貴方のそばで貴方をいちばんに癒す役目は僕にくれないかな」
あぁ、ようやく言えた。元貴は涙でぐちゃぐちゃになった顔で笑ってみせた。綺麗だ、と思った。
「他の人に譲ったりなんかしたら許さないから」
だいすきだよ。ずっと喉から手が出るほど欲しかった言葉は、甘く甘く心にしみわたっていく。
僕らはずいぶんと遠回りをしてしまった。それでも、と僕はふと思いをはせる。遠回りをした分、僕らはきっとこの先も簡単にはこの手を放したりしないだろう。
※※※
本編はこのエピソードをもって完結です!
ここまで読んでくださった皆様ありがとうございました!
番外編として
元貴視点
若井視点
の2話を今後更新予定です
付き合った2人のその後のエピソードも気まぐれに更新するかもしれません〜
コメント
9件
初めてまして。作者様のお話素敵でした。他の作品も言葉選びが逸品でした♥ ハッピーエンドで良かったです フォローさせて下さい。
作品の更新お疲れ様でした✨日々更新されるのを待ちわびていました☺️番外編...!楽しみです🤭これからも小説の書き方をお勉強するという建前の中で楽しみに作品待っております!
無事に終わって良かったです😭💕 ほんとに他の作品も応援しますほんとに!! 他の話も他の投稿も楽しみにしています!