僕は階段手前に来た。
僕が選んだのは、『銀の小鳥が羽ばたく階段』だ。
銀の階段から行くことを選んだのは、
エース、デュース、ケイト先輩、ジャック、ジェイド先輩、エペル、イデア先輩、マレウス先輩、セベクだ。
それ以外の人たちは『金の蝶が舞う階段』を選んで行ってしまった。
イデア先輩は、「金なんて陽キャの象徴みたいなもん」と言って銀にしたらしいが…
僕は、銀の階段に運命を感じた。
白い鳥は平和を運ぶし…白くないけど、小鳥の方がいいかなぁって。
螺旋階段を昇っていくと、大理石の廊下に出た。
廊下を挟んで、個室が並んでいる。
「ここが『ディスペアーフロア』か…。」
反対側の階段から来たリドル先輩が腕を組んだ。
「ここで部屋に別れて、各自明日への準備を進めておきましょう。明日から、命懸けのデスゲームが始まるのだから…。」
ヴィル先輩が悲しげな表情を浮かべた。
みんな、「明日死ぬかもしれない」という気持ちで溢れて、悲しいのだ。
「じゃあ…」
みんなが廊下から離れていく。
僕は一人でぽつんと突っ立っている。
だって、一人部屋だし…。
「…大丈夫か?」
僕はハッと顔を上げた。
そこには、キョトンと見下ろすトレイ先輩の姿があった。
「僕たちの部屋は監督生さんの部屋と近いから、一緒に行こう♪」
安心した。
やっぱり、一人なんて嫌だ。
「あっ、ありがとうございます!」
トレイ先輩の手を借りて立ち上がった。
「さぁ、行こう」
オルトとトレイ先輩の背中は、大きくて逞しくて、頼り甲斐があった。
だけど、なんだか闇が潜んでいる気がして、ちょっと怖かった…。
『はい、みなさん部屋に着きましたか?』
部屋に入った途端に、偽学園長の声が響き渡る。
はぁ…とため息をつきながら、あたりを見まわした。
生活家具は色々揃っていそうだ。
ベッドの隣にあるミニテーブルの上に、宝箱のようなものがあった。
『部屋のどこかに、二人部屋なら二個、一人部屋なら一個、宝箱が設置されています。その宝箱は、部屋のポストだと思ってください。』
僕は宝箱の近くのトレーに置いてあった鍵を使って、宝箱を開けた。
そこには、赤いシーリングスタンプが押された一通の手紙が入っていた。
『宝箱の中には、人狼ゲームの役職が書かれた手紙が入っています。誰にも見られないように、手紙の内容を確認してください。』
恐る恐る、手紙を開封した。
そこには、こう書かれていた。
〜役職のお知らせ〜
あなたの役職は「市民」です。
自身に嘘をつかず、正直な言葉で人狼を見つけ出してください。
安心して、力が抜けてしまった。
ヘナヘナとその場に座り込むと、その手紙を持つ力を強めた。
『確認できましたか? それでは、自分を追いかけてきている “影” に、さよならをしてくださいねぇ。その切り離された影が消滅すると、その影の所持者も消滅するのでね。』
背後に黒い自分が立っている。
その黒い自分が偽学園長のもとに行ってしまえば、僕は命を握られたことになる。
「ま…待って…」
怖くて声が出ない。
黒い僕が振り返る。
黒い僕は手を振って、扉を貫通して出ていった。
『ご協力ありがとうございます。それでは、明日に備えて寝てくださいね〜。 good night!』
とうとうデスゲームが始まってしまった。
もう、このゲームからは逃げられない。
犠牲も出るし、裏切り者も出てくるだろう。
でも、僕は生き残らなくちゃならない。
まだ、現実世界にも戻れていないし、クラスメイトに別れも告げてない。
僕は_______このゲームに勝利する。
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