立場
太宰↔中也 敦↔芥川 多分銀も探偵社。
『』過去や回想など 「」話しているとき
()思ってること、読み方、補足など
ほぼ本編をなぞってるだけ
芥川龍之介Side
僕の名は芥川龍之介。貧民街の遊浪児で唯一の肉親である妹と境遇を同じくする七人の仲間と暮らしていたが、マフィアの下部組織構成員にその仲間達を殺害された。単身復讐に向かった先で迷子になり、復讐どころではなくなってしまった。何とか来た道を辿って途中で銀とも合流し着くもマフィアによって制圧されていて近づけすら出来ずに逃走。拾われ孤児院で数年間いたが、狂犬により壊され、孤児院を追い出された。食うものも寝る場所も無く、かといい盗む力も無くこんなとこまで来てしまった。生きたくば盗むしかあらぬ。非弱そうな女でもいればよかったのだが…
『お前など孤児院に要らぬ!!』
『何処ぞで野垂れ死んでしまえ!』
五月蝿い。僕は死なぬ。銀も残したままだ。せめて飢えを凌げそうなものを探そう。
?「ンなとこに人なんぞ珍しいじゃねぇか。しかもボロボロだし…」
「ケホッゴホッ」
?「おお、大丈夫か?」
「肺の病気なだけです。グウゥゥゥ」
?「ふっ腹減ってんのか?」
「ここ数日何も食べてない故…」
?「ふふっいいぜ。なんか奢ってやるよ。」
?「こんなとこに居たのか。何か情報は掴めたか?」
?「いや…でも、もうじき捕まると思うぜ?」
?「何を言ってるんだ?と言うか、そいつはどうしたんだ?」
?「あぁ。そこで死にかけてんの見かけてな。丁度昼時だしなんか奢ってやろうかと。」
?「ああ、そうか。まぁ、計画外だが俺達の昼飯も兼ねてだからな。」
?「そういえば手前、名前は?」
「芥川龍之介ですが…」
?「芥川か、ついて来い。何か食いたいもんあっか?」
「無花果が食べたいです」
?「ふっ餓死寸前の手前が無花果を所望か。ちゃんとした飯があって、無花果もあるとこ知ってっからそこ行くか。」
?「中原、こっちの報告は終わったぞ。」
?「ああ、すまねぇ。ありがとう」
「中原?」
中原「あ?俺の名前だよ。中原中也だ。」
〜食事処〜
「モグモグ」
国木田「中原、もうすぐ仕事に戻るぞ。」
中原「あぁ。相変わらず予定表好きだな。」
国木田「これは予定表ではない!!理想だ!我が人生の道しるべだ!!」
中原「うおっ悪かったって。」
「美味だった。ありがとうございます。助かりました。孤児院を追い出されて横浜に出てきてから食べ物も寝る場所も無く…あわや餓死するかと」
中原「ふぅん…手前、施設の出か」
「追い出されたんです。経営不振だとか企業縮小とか言われ…」
中原「それは薄情な施設もあったもんだな。」
国木田「おい、中原。俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない。仕事に戻るぞ。」
「お二人は何をされてるんですか?」
中原「探偵だよ。」
国木田「探偵と言っても猫探しや不定調査ではない。斬った張ったの荒事が領分だ。異能力集団〝武装探偵社〟を知らんか?」
聞いたことがある。曰く軍警や警察に頼れない危険な依頼を専門にする探偵集団…昼の世界と夜の世界、その間を取り仕切る薄暮の武装集団。なんでも武装探偵社の社員の多くは異能の力をもつ異能者と聞いたことがあるが…
「…それで、本日のお二人のお仕事は?」
国木田「狂犬探しだ。」
中原「近頃、街を荒らしてる『黒の狂犬』だ。倉庫を荒らしたり、畑の作物を食ったり好き放題してやがる。最近はこの近くで目撃されたんだが…」
「ガタッ…僕はこれで失礼する。」
国木田「待て。」
「無理だ!奴、奴に人が敵う訳ない!」
国木田「貴様、黒の狂犬を知ってるのか?」
「彼奴は僕を狙ってる!殺されかけたんだ!この辺に出たなら早く逃げないと…ビタンッ」
国木田「云っただろう。武装探偵社は荒事専門だと。飯代はお前の腕一本か、凡て話すかだな。」
中原「まァ国木田。手前がやると情報収集が尋問になるって社長にいつも云われてんだろ。」
国木田「…ふん」
中原「それで?」
「…僕のいたの孤児院はあの狂犬に壊されたんです。畑は荒らされ、倉は飛ばされて…死人こそは出なかったが貧乏孤児院はそれで立ち行かなくなって、口減らしに追い出されました。」
『お前が…お前の所為だ、穀潰し。』
『何故です、僕は何も…』
『この孤児院に穀潰しは要らぬ。』
『否、天下何処にもお前の居場所などありはせん。ギイィィィ』
『この世の邪魔だ…皆の邪魔ゆえ疾くと消えよ。この世から消え失せるが良い。バタン』
「…」
中原「…そりゃ災難だったな」
国木田「それで小僧。殺されかけたとは?」
「あの狂犬…孤児院の畑の大根でも食ってれば良いものをここまで僕を追いかけてきたんだ」
孤児院を出てから鶴見川付近をふらふらしてたとき…
ヌッ
「彼奴、僕を追って街まで降りてきたんだ!空腹で頭は朦朧としてた故、どうやった逃げたのか…」
中原「それは、いつの話だぁ?」
「院を出たのが2週間前、川で彼奴を見たのが…四日前」
国木田「確かに狂犬の被害は2週間前からこっちに集中してる。それに四日前に鶴見川で狂犬の目撃証言もある。」
中原「…芥川、これから暇か?」
「猛烈に嫌な予感がするのですが…」
中原「手前が狙われてんなら好都合だよな。狂犬探し、手伝ってくんねぇか?」
「嫌です!それってつまり僕に餌になれと云われてるものです。誰がそんな…」
中原「報酬出るけどどうだ?」
「ピクッ」
中原「国木田、社に戻ってこの紙、社長に渡してくれ。」
国木田「おい、二人で捕まえる気か?まずは情報の裏をとって…」
中原「大丈夫だ。」
「ちなみに、報酬はどれほど…?」
「このぐらいだ」
〜倉庫〜
Sideなし
芥川「本当にここに現れるのですか?」
中原「本当だよ。まぁ、心配いらねぇよ。狂犬が現れようが俺の敵じゃねぇ。こう見えたって武装探偵社の一隅だ。」
芥川「…すごいですね、自信のある人は。僕などずっと孤児院で駄目な奴と云われていて…その上、明日の寝床も食い扶持もしれぬ身で…」
『天下、お前の居場所は何処にもありません』
『この世から消え失せるが良い。』
芥川「こんな奴が野垂れ死んだって。いや、いっそ喰われて死んだほうが…」
中原「サッ…さて、そろそろだな。」
ガタンッ
芥川「ビクッ今、そこで物音が…」
中原「そうだな」
芥川「きっと奴ですよ、中原さん!」
中原「きっと風でなんか落ちたんだろ。」
芥川「黒の狂犬だ。僕を喰いに来たんだ」
中原「座れよ、芥川。そんなとこから狂犬は入ってこねぇ。」
芥川「どうして判るのですか!」
中原「そもそも、変なんだよ、芥川。経営が傾いたからと養護施設が児童を追放するか?大昔の農村じゃねぇんだ。いや、そもそも経営が傾いたからと一人二人追放したところでどうにもならねぇ。半分ぐらいに減らして他所の施設に移すのが筋だ。」
芥川「中原さん、何を云って…」
中原「手前が街に来たのが2週間前、狂犬が街に来たのも2週間前。君が鶴見川べりにいたのが四日前、同じ場所で狂犬が目撃されたのも四日前。」
芥川「ドクンドクンがっ」
中原「国木田が云ってただろ。武装探偵社は異能の力を持つ輩の寄り合いだと巷間には知られてないが、この世には異能の者が少なからずいるんだ。」
芥川「ドクンドクンギギギ」
中原「その力で成功する奴もいりゃあ、力を制御できず身を滅ぼす者もいる。大方施設の人は、狂犬の正体を知っていたが手前には教えなかったんだろ。手前だけが解って無かったんだよ。手前も異能の者だ。現身に取り憑く黒獣を操る異能者…」
黒獣「ギラッがうっバッドオォンガァァァバキッ」
中原「こりゃあすげぇ力だ。人の首ぐらい簡単に斬り落とせる。」
黒獣「ドォォッ」
中原「ザザットンおっと、追い込まれちまったな…」
黒獣「ザッタンッ」
中原「獣に食い殺されるなんざ御免だ。まぁ手前じゃ俺を殺せない。トン」
黒獣「フッゲシッ」
中原「俺の能力は、触れたものの重力と同じビクトルと強さを操ることが出来る。手前なら戻ってこれる。」
黒獣「グゥゥッザザッふらっポスッ」
中原「…よくやったな。ナデナデ」
国木田「おい、中原!」
中原「あぁ、遅かったな。狂犬は捕まえた。」
国木田「タッ!その小僧…じゃあそいつが」
中原「あぁ。狂犬の異能者だ。操ってる時は本人は気を失ってて記憶もない。見たっつーのは断片的な物を見てたんだろ。」
国木田「全く…次から事前に説明しろ。肝が冷えたぞ。ピラッ」
十五番街の西倉庫に狂犬が現れる。逃げないように周囲を固めてくれ。
国木田「お陰で非番だった奴まで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ。スッ」
与謝野「なンだ。怪我人は無しかい?つまんないねェ」
与謝野晶子…能力名『君死給勿』
_______キミシニタモウコトナカレ
江戸川「はっはっは、なかなかやるようになったじゃないか、中原くん。まぁ僕には及ばないけどね!」
江戸川乱歩…能力名『超推理』
___________チョウスイリ
宮沢「でもその人、どうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」
宮沢賢治…能力名『雨ニモマケズ』
____________アメニモマケズ
国木田「一応区の災害指定猛獣だぞ。」
国木田独歩…能力名『独歩吟客』
___________ドッポギンカク
中原「ははっ、もう決まってる。」
中原中也…能力名『汚れちまった悲しみに』
______ヨゴレチマッタカナシミニ
『こんな奴がどこで野垂れ死んだって…いや、いっそ喰われて死んだほうが…』
中原「うちの社員にする。」
「はぁぁぁ?!」
…これが事の始まり。怪奇ひしめくこの街で変人揃いの探偵社でこれより始まる怪奇譚。これが先触れ、前兆し…
芥川龍之介…能力名『羅生門』
___________ラショウモン
〜下宿寮〜
芥川龍之介Side
「ん…ここは、どこだ?」
銀は?孤児院の起床喇叭は?早朝点呼は?
ピピピピピッがばっ
「うわ、鳴ったぞ!」
どの釦 だ!?
「ピッは、はい?」
中原「よう、芥川。新しい下宿寮はどうだ?よく眠れたか?」
そうか…僕は
「お陰様で…こんな大層な寮を紹介していただいて…」
中原「まぁ、取り敢えずこい。」
無自覚のまま黒の狂犬として暴れてたところをこの人…中原さんに助けられた。中原さんはかの有名な武装探偵社の一員らしいが…知らぬ者なき異能力集団…か
「ところで今日は、何処へ?」
中原「あぁ、手前に仕事を斡旋しようと思ってな」
「本当ですか!」
中原「伝手の心当たりがある。先ずは探偵社に行くぞ。」
「はい。」
国木田「あっここに居たのか。非常事態だ!早急に社に戻るぞ!」
中原「非常事態だァ?」
国木田「そうだ、人手がいる。探偵社にこい!」
中原「詳細は?」
国木田「爆弾魔が、人質を連れて探偵社に立て籠もった!」
〜武装探偵社〜
Sideなし
爆弾魔「嫌だァ…もう嫌だ…ガタガタぜんぶお前等の所為だ…ギリッ武装探偵社が悪いンだ!社長は何処だ、早く出せ!爆弾で皆吹っ飛んで死ンじゃうよ!」
中原「おー随分なていたらくだな」
国木田「怨恨だ。犯人は探偵社に恨みがあって社長に会わせないと爆破するぞと」
中原「ウチは色んなとこから恨みを買ってるからな。あれは高性能爆薬だ。この部屋位なら吹き飛ぶな。爆弾になにか被せて爆風を抑えるって手もあるが…この状況じゃなァ。どうする?会わせるか?社長に」
国木田「殺そうとするに決まってるだろ!それに社長は出張だ。」
中原「…となると、人質をどうにかしねぇとな。国木田、ちっと出てみてくれねぇか?安全は保証する。」
国木田「はぁ、仕方ない。おい、落ち着け少年」
爆弾魔「来るなァ!吹き飛ばすよ!ばっ」
国木田「サッ(手を上げる」
爆弾魔「知ってるぞ、アンタは国木田だ!アンタもあの嫌味な能力とやらを使うンだろ?!妙な素振りをしたらみんな道連れだ!」
中原「チッやっぱりか…不味いな。探偵社に思念を持つだけあって、社員の顔と名前を調べてんな。俺が行っても余計警戒されるだけだな…さてどうしたもんか、、あっ」
芥川「ゾワァァ」
中原「社員が行っても犯人を刺激するだけ。となりゃ、無関係で麺の割れてない手前が行くしかない。」
芥川「流石に無理があります!第一どうやって…」
中原「犯人の気をそらしてくれれば十分だ。あとは俺等でやる。なんか適当に演技でもしてりゃぁ気ぃひけんだろ。信用しろ、この程度の揉め事、探偵社にとっちゃ朝飯前だ。」
芥川「辞めろ!親が泣いてるぞ!」
爆弾魔「何だアンタっ」
この調子で気を惹かねば…この程度なら経験したことがある。ただこんな演技はしたことないが…
芥川「僕は騒ぎを駆けつけた一般人だ。生きてれば良いことあるぞ。」
爆弾魔「誰だかなんだか知らないが無責任にいうな!みんな死ねばいンだ!」
芥川「僕など孤児で、妹とほか七人で貧民街で過ごしていて、今じゃもう妹以外死んでしまい、この前孤児院も追い出されて、妹とも離れてしまったんだ。これから行く宛も伝手も何も無い!」
爆弾魔「え…いや、それは」
芥川「害獣を操れるらしいが上手くいかず、軍警にみつかれば縛首だし、取り立てて特技もあらん。誰がどう見たって社会不適合者だが、やけにならずに生きている。だから、ジリッ」
中原(芥川、慣れてっし、駄目人間の演技、うめぇな…)
芥川「だから爆弾捨てて一緒に仕事探せ」
爆弾魔「えっいや、ボクは別にそういうのでは」
中原「国木田、今だ」
国木田「バッ手帳の頁を消費うから、無駄撃ちは嫌なんだがな…!カリカリッ独歩吟客ビリッ」
鉄線銃
国木田「手帳の頁を鉄線銃に変える。チャキッビュンッ」
爆弾魔「パッんなっ…」
中原「確保っ!」
国木田「バッゴッガシャァンシュゥゥ」
中原「一丁上がりだな」
芥川「はぁ、よかった…トンッビタッぶっピッあっ?」
国木田、中原「あっ」
芥川「あああああ!」
「爆弾!爆弾!あと5秒!」
芥川(爆発!部屋が吹っ飛ぶ!?爆風を抑え…なにか爆弾に被さねば!)
中原「なっ莫迦野郎!」
芥川(あれ、僕なにを…?)
ピッピッ
芥川「…..?」
国木田「やれやれ…莫迦とは思ってたがこれほどとは…」
中原「マジもんだったらどうすんだよ!」
芥川「は?…..え?」
ナオミ「ああーん、兄様ぁ!大丈夫でしたかぁあ!」
谷崎「痛だっ!いい痛いよナオミ。折れる、折れるっていうか折れたァ!ギャー」
芥川「….は?」
国木田「小僧。恨むなら中原を恨め。若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた自分を恨め。」
中原「そういうことだよ、芥川。つまりこれは一種の入社試験だ。」
芥川「入社…試験?」
福沢「そのとおりだ。」
武装探偵社
___社長_福沢諭吉…能力名『人上人不造』
______ヒトノウエニヒトヲツクラズ
国木田「社長」
芥川「しゃ、社長!?」
福沢「そこの中也めが有能な若者がいると云うゆえ、その魂の真贋、試させてもらった。」
中原「手前を社員に推薦したんだが如何せん手前は区の災害指定猛獣だ。保護すべきか社で揉めたんだよ。で、社長の一声でこうなったんだ。」
国木田「で、社長…結果は?」
福沢「中原に一任する。」
芥川「….」
中原「合格だとよ。」
芥川「つまり…?僕に斡旋する仕事って云うのは、此処の…?」
中原「武装探偵社にようこそ」
ナオミ「うふ、よろしくお願いしますわ。」
谷崎「痛い!そこ痛いってば、ナオミごめんごめんって!」
谷崎潤一郎…能力名『細雪』
___________ササメユキ
その妹…ナオミ
芥川「や、僕を試すためだけに…こんな大掛かりな仕掛けを?」
中原「この位で驚いちゃ身が持たねぇよ?」
芥川「有り難い話ですが、僕は妹を探さねばならぬ故…」
中原「あ?妹ってこれで合ってるか?ピラッ」
芥川「あ、あってますが…」
中原「昨日、拾ったぜ?手前を探して降りてきたんだって云ってたから、唯一の親族何だろ。さっき俺が事情話して、一緒に入社出来るようにしてもらった。寮はおんなじ部屋で良いか?」
芥川「はい…銀は、何処に居ますか?出来れば顔合わせたいんですが…」
中原「あぁ医務室だ。付いてこい。」
〜医務室〜
中原「与謝野さん、邪魔すんぜ〜」
与謝野「なンだい?怪我したンなら治療してやるよ。」
中原「ははっちげぇよ。拾った奴、やっぱり芥川の妹見てぇだ。」
与謝野「おや、それは良かったね。奥に居るから顔出してきな」
中原「ありがとうな。よし、芥川行くぞ。」
芥川「はい…!」
中原「お前の兄ちゃん連れてきたぞ。」
銀「本当ですか!?良かった…」
芥川「銀!無事で何よりだ。」
銀「兄さんも無事で良かった。」
芥川「処でどうやってここまで来たんだ?」
銀「兄さんが追い出されてから、私一人で孤児院を出たんです。それで、黒の狂犬の噂を聞きつけてここまで来たんですが見つからず、途方に暮れてたところを中原さんに拾ってもらったんです。」
芥川「中原さん、ありがとうございます。」
中原「いや、礼には及ばねぇよ。ただの俺の気まぐれだ。」
与謝野「おや、気まぐれだったのかい?妾はてっきり最初からこのつもりだと思ってたのかと。だって」
中原「だー与謝野さん!柄でもねぇんだから辞めてください。」
与謝野「相変わらずの世話焼きなもんだねェ。」
中原「いいか、手前らは何も見てねぇし、聞いてねぇ!今の話は忘れろ。俺は仕事に戻る。」
与謝野「中原も素直じゃ無いねェ…」
芥川「あの、どういう…?」
与謝野「あぁ、中原は手元の情報からお前の周りに関する事を調べ上げてたのさ。そこから、銀を割り出して、探しにまわってたんだよ。仕事の合間や聞き込みのついでとかにね。」
芥川「中原さん…そこまでしてくれてたんですね…感謝してもし切れぬな」
与謝野「彼奴は随分な世話焼きでねェ。中原の後輩はみんな慕ってるよ。」
銀「凄いですね…」
与謝野「あぁ、そういえば中原が受け持った事件で解決しなかったものは無いよ。乱歩さんもだけどね。あの二人は社の要さ。」
〜うずまき〜
谷崎「す、すんませんでした!」
芥川「は?」
テーブルを囲む芥川、谷崎、中原、国木田、銀、ナオミ。
給仕の女性が茶を持ってくる。中原は軽く会釈をした。
谷崎「試験の為とは云え随分と失礼なことを…ボクの名前は谷崎潤一郎。探偵社で助手のような仕事をやってます。」
芥川「いえ、お気になさらず…」
芥川(意外と良い奴だ、此奴…)
谷崎が傍らのナオミを指さす。
谷崎「そンでこっちが…」
ナオミ「妹のナオミですわ!」
と谷崎に抱きつく。そのあまりに婀娜っぽい様に戸惑う芥川。
芥川「兄妹なのですか?…その割にはあまり髪や顔が似てないですね」
ナオミ「あら、お疑い?」
ナオミは谷崎のシャツの中に手を入れ、直に肌を愛おしそうに撫でる。
ナオミ「もちろん血の繋がった実の兄妹ですわ。と・く・に・♡この辺なんて本当そっくり♡」
谷崎「…」
芥川「厭、しかし…」
国木田「こいつらに関しては深く追求するな」
芥川「あっはい…」
国木田「ともかくだ、小僧。貴様も今日から武装探偵社が一隅。ゆえに周りに迷惑を振り撒き社の看板を汚す真似はするな。」
芥川「…」
国木田「そのことだけは俺も皆も徹底している。なぁ、中原」
中原「あ、あぁ…?多分、そうだな…」
国木田「歯切れが悪いな。何だ、気にした事なかったのか?」
中原「厭、なんでもねぇよ…うん。芥川、頑張れよ!」
芥川「は、はい…そういえば、お二人は探偵社に入る前何をなさってたんですか?特に意味は無いのですが…」
中原「当ててみろよ。」
芥川「?」
中原「何、定番の遊戯なんだよ。新入りは先輩の前の職を当てるんだ。まァ、探偵修行の一環でもあるンだよ。銀もせっかくだし、参加してみろ。」
銀「はい。」
芥川「…ナオミさんと谷崎さんは、学生でしょうか?」
谷崎「お、あたった。凄い」
ナオミ「どうしておわかりに?」
銀「ナオミさんはバイトって言ってましたよね。制服姿ですし現役の学生さんでしょう。」
芥川「あぁ、谷崎さんは年が近そうと思ったが故、ただの勘ですが…」
中原「ははっ正直だな。じゃあ次は国木田。」
突然話を振られて国木田は珈琲を吹き出す
国木田「俺の前職など、どうでもいい!」
銀「うーん…公務員でしょうか?」
芥川「お役所勤めでは?」
中原「惜しいな。此奴は元数学の教師だ。」
芥川・銀「へぇ….」
『ここはΧの累乗を使うに決まってるだろう!』
銀「何故か物凄く納得出来ますね…」
芥川「あぁ」
国木田「昔の話だ。思い出したくもない」
中原「じゃあ、俺は?」
芥川「中原さん?」
中原「そう、俺だ。」
銀「…想像つきませんね。」
芥川「軍警…?」
中原「ははっそりゃあ嬉しいな。だが、外れだ。」
国木田「無駄だ、小僧。武装探偵社の七不思議の一つなんだ、此奴の前職は。」
谷崎「確か、最初に当てた人に賞金が有るんですよね。」
中原「あぁ。誰も当てらんなくて今も賞金が膨れ上がってんだ。」
芥川「賞金?このようなことにそんなものが…」
銀「因みに、どれ程までに膨れ上がってるんですか?」
中原「あぁ、確か総額70万ぐらいだったか。」
銀「ただの遊戯にそれほど…」
芥川「まぁ、挑戦だけしてみよう。」
銀「そうですね。」
芥川「相場師」
中原「ちげぇ」
銀「画家?」
中原「はずれだ」
芥川「一般事務職」
中原「違うなァ」
銀「研究職」
中原「ちげぇ」
芥川「弁護士」
中原「違う。」
銀「新聞記者?」
中原「ちげぇ」
芥川「大工…?」
中原「違うな」
銀「保育士や先生とか…」
中原「悪かねぇがちがうな」
芥川「服屋などの店員?」
中原「おっ見る目あんな。けど違う。」
国木田「まさか何もせずふらふらしてたわけでもあるまいな」
中原「違う。この件じゃぁ俺は嘘つかねぇって決めてんだ。」
芥川「?」
中原「もう降参か?芥川」
芥川「悔しいですが…」
中原「ははっ潔いな」
携帯の着信音が鳴る。谷崎の携帯だ。
谷崎「はい、谷崎です。…はい…..はい、わかりました」
国木田「依頼か?」
谷崎「はい、依頼人の方は既に事務所の方に…」
中原「さぁ、仕事の時間だ。俺の過去の職業当て遊戯はまたの機会だ。」
〜事務所〜
ソファーに腰掛けたスーツ姿の若い女性、樋口。マニッシュな美人である。
向かいの席には谷崎が座り、書類バインダーを手に対応している。
谷崎「えっと、調査のご依頼だと伺っておりますが?一体どのようなご要件でしょうか…」
中原「すみません、髪にゴミがついてる様なのでお取りしても宜しいですか?」
樋口「あっ本当ですか?お願いします。」
中原「…はい、取れました。話を割ってしまってすみません。それでは。」
そう云い中原は隣室に消えていった。
谷崎「それで、依頼のお話なんですが…」
樋口「はい。実は我が社のビルヂングの裏手に、最近善からぬ輩が屯してる様なのです。」
谷崎「善からぬ輩とは?」
樋口「襤褸を纏った連中のようです。中には聞き慣れない、異国の言葉を話す者も居るとか…」
国木田「そいつは密輸業者の類だろう。軍警がいくら取り締まってもフナムシのように湧いて出る。港湾都市の宿業だな。」
樋口「えぇ、無法の輩という証拠さえあれば、軍警に掛け合えます。ですから…」
国木田「現場を張って証拠を掴め、か…小僧、お前が行け」
芥川「承知した。銀は待っててくれ。」
銀「はい。」
国木田「ただ見張るだけの仕事だ。。それに密輸業者は大抵、逃げ足だけが取り柄の無害な連中だ。初仕事には丁度いい。谷崎、一緒に行ってやれ。」
ナオミ「兄様が行くなら、ナオミも着いていきますわー♡」
一人で調査に使うカメラなどを準備していた芥川。
国木田「おい、小僧。不運かつ不幸なお前の人生にいささかの同情が無いわけでもない。故に、この街で生きるコツを一つだけ教えてやろう。」
と、手帳に挟んであった写真を芥川に見せる。
国木田「こいつには遭うな。遭ったら逃げろ。」
芥川「この人は?」
中原「マフィアだよ。もっとも他に呼びようがないからそう呼んでるだけだがな。」
国木田「港を縄張りにする凶悪な犯罪組織…奴らはポートマフィアと呼ばれてる。この街の黒の社会で最も危険な連中だ。中でもその写真の男は…この探偵社のメンバーでも手に負えない危険な奴だ。」
芥川「何故、危険なんですか?」
国木田「そいつが異能力者だからだ。しかも殺戮に特化した、すこぶる残忍な異能力で、軍警にも手が負えん。…俺でも奴と戦うのは御免だ。」
芥川「…其奴の名は?」
国木田「…中島、だ」
〜屯所〜
黒い上衣を着た男が歩いてくる。俯いていて顔は、見えない。手には鞄を持っていて、軍警の屯所に入っていく。二人の警察官が詰めている。コツンッという足音で警官たちは訪問者に気づく。
?「道に鞄が落ちていました。損失物かと…」
軍警「あぁ、落とし物ですね。じゃあこの書類に詳細を…あれ、あんたどっかで…」
?「さすが、もう看破されちゃったかぁ…」
狼狽する警官たち
軍警「まさか、こいつ指名手配書の…」
警官たちは拳銃を取り、男に向け構える。
軍警「動くな!」
?「やっぱりこの街の軍警はすこぶる優秀だね。」
女性が屯所を訪れる。中から出てきた黒い上衣の男とすれ違う。
女「あの〜、道をお尋ねした…ひい!」
その場に座り込む女性。屯所内には…惨殺された二人の警官の遺体があった。恐怖で動けない女性。あの男が持ってきた鞄が所内の一角に置かれてる。
ピーピーと電子音が鳴る。そして…ドコォン
その爆発をもはや意を介さずに、振り向くことも無く歩き続ける黒い上衣の男こそ中島であった。中島は携帯をだし、電話をかける。
中島「終わったよ…次は?」
〜事務所〜
中原は耳にイヤホンを付けていて仕事をしながら音楽を聴いてるようだった。
中原「〜〜〜♪」
国木田「ん?音楽でも聞いてるのか?珍しいな。」
中原「あぁ、まぁな。」
〜町中〜
谷崎「アハハ…それは脅かされましたねえ」
樋口に連れられ現場に向かう三人。歩きながらもナオミは谷崎の片腕に抱きついている。
芥川「笑い事じゃ非ぬ…我が敵とも言える存在がいる街など…やはり、とんでもない様な所に入ってしまった」
谷崎「まァまァ、僕でも続けられるくらいだから大丈夫ですって。」
芥川「でも、谷崎さんも異能力者何でしょう。僕の役に立たぬ異能力とは違う。」
谷崎「ああ、あんま期待しないでくださいよ。戦闘向きじゃ無いですから。」
ナオミ「兄様の能力、素敵ですよ。ナオミあれだいすきー」
と、耳に息を吹きかけるナオミ
谷崎「やめなよ、ナオミ。こんな処で…」
ナオミ「あら、口答え?」
谷崎「え…」
ナオミ「生意気な口はど・の・く・ち、かしらー?うふふっ♡」
その時….
樋口「着きました。」
芥川「気味が悪いところだな…」
谷崎「んー…おかしいな。本当にここなんですか?ええっと…」
樋口「樋口です。」
谷崎「樋口さん。密輸業者と云うのは臆病な連中です。だから必ず逃げ道を用意します。ここ、袋小路ですよね。捕り方がそっちから来れば逃げ道が無い。」
樋口「その通りです。失礼とは存じますが嵌めさせていただきました。」
樋口の態度が急に変わる。そして、その冷たい目にガンゴーグルをかける。
樋口「私の目的は貴方がたです。」
3人「…!」
樋口は携帯で連絡する。
樋口「中島先輩…」
谷崎・芥川「中島!?」
樋口「予定通り捕らえました。」
中島「重量…5分で向かうよ。」
芥川「此奴…」
谷崎「ポートマフィア!」
樋口は隠し持っていたサブマシンガンを両手に構え、谷崎たちを狙う。銃口が火を噴く。
ポートマフィア構成員… 樋口一葉
〜事務所〜
中原「…!チッすまねぇがちょっと出かけてくる。」
国木田「何か、必要なものでもできたのか?」
中原「んまぁそんな所だ。」
〜路地裏〜
谷崎「!」
なんと、ナオミが谷崎の前に立ちはだかり、両手を広げて盾になる。ナオミの体は銃弾を受け、そのセーラー服は血まみれになる。
ナオミ「兄…様…大…丈…夫…?」
倒れるナオミを抱きとめる谷崎。
谷崎「ナオミ!ナオミ!」
ナオミは既に意識もなく地面に崩れ落ちる。谷崎は激しく動揺する。
谷崎「ど、どうしよう…そうだ!止血帯!芥川くん、止血帯持ってない?いや、まずは傷口を洗って…あぁ、違う!与謝野先生に診せなきゃ」
その隙に慣れた手つきで弾倉を交換する樋口
谷崎「医務室に運ばないと!芥川くん足持って!」
いつの間にか谷崎の背後にいる樋口が谷崎の後頭部に拳銃を突きつけている。
樋口「あなたが戦闘要員ではないことは調査済みです。健気な姫君の後を追ってもらいましょうか?」
ゆっくりと振り向き、樋口を睨む谷崎。その目のこれまでにない気迫に、樋口は一瞬竦む
谷崎「ああ、?チンピラごときが…」
谷崎はナオミの体を抱え上げる。
谷崎「良くもナオミを傷つけたね!異能力『細雪』!」
その瞬間雪が舞い始める。
樋口「この季節に、雪?」
谷崎「芥川くん、奥に下がってるんだ。」
芥川「は….?」
谷崎「こいつは僕が…殺す!」
樋口「くっ」
樋口は再び、谷崎に向けて機関銃を撃つ。だがその銃弾は谷崎の体を通過し、谷崎の体は薄く透明化し、遂には消えてしまう。
樋口「何!?」
谷崎「僕の細雪は、雪の降る空間全てをスクリーンに変える。」
樋口「何だと?」
と、谷崎の姿を求めて、銃口を振り回す。
谷崎「ボクの姿の上に背後の風景を上書きした…もうお前にボクの姿はみえない!」
樋口「見えずとも玉は当たる!」
樋口はとにかく玉を撃ちまくる。
谷崎「大外れ」
いつの間にか背後に立っていた谷崎が樋口の首を絞める
樋口「…!」
谷崎「死んでしまえ!」
両手に渾身の力を込める谷崎。
樋口「くっああ…」
その時、コツンと足音が聞こえる。急に…樋口の首を絞めてた谷崎が倒れた。谷崎の背後には中島が立っていた。中島の姿に呆然とする芥川。
中島「死を恐れろ…殺しを恐れろ…死を望む人、等しく死に、皆同じように死に望まるから…」
倒れた谷崎を裂いた虎の腕が戻っていく。
芥川「….」
『こいつには遭うな。遭ったら逃げろ。』
中島「お初にお目にかかります。僕は中島敦。樋口さんと同じポートマフィアの狗です。」
ポートマフィア…遊撃隊
中島敦…能力名『月下獣』
___________ゲッカジュウ
樋口「先輩、ここは私一人でも…」
中島「狂犬は生け捕りの命のはずでしょ?片端から撃ち殺しちゃ駄目だ。下がってて。」
樋口「…済みません」
芥川「狂犬は生け捕り?お前達は一体…」
中島「もとより僕の目的はあんた一人だ。そこにいるお仲間は言わば君の巻き添えだよ。」
血を流して倒れてる谷崎とナオミ。
芥川「!…僕のせいで、皆が?」
中島「そうだよ。それが君の業さ。君は生きてるだけで周囲の人間を損なう。」
芥川「…!」
『出ていけ穀潰し!』
『いや、天下何処にもお前の居場所などありはせん!』
『何処ぞで野垂れ死んだほうが世間のためよ!』
芥川「…僕の、業」
中島「…異能力『月下獣』!」
中島の腕が変化する。谷崎を裂いた時とは違い、体の大半が虎に変化して行っている。先程より爪は鋭く、牙も生えている。それが芥川を襲う。かろうじて避ける芥川。中島が通ったであろう場所はアスファルトがまるで大きな彫刻刀で削り取ったように抉れている。
芥川「!…」
中島「もちろん今のは態と外したよ。でもこの虎はなんでも壊しちゃう。生け捕りが目的だけど、抵抗するなら次は君の腹を抉るよ。」
どうすれば良いか分からなく、そこに固まってしまう芥川。
芥川「何故、僕が…それも僕のせいなのか…僕が生きてるが故、皆を不幸にするのか?」
谷崎「あ、芥川くん…」
芥川「!」
谷崎「逃げろ…芥川くん」
瀕死の谷崎が芥川を見ている。見れば、傍らにはナオミも血まみれだが微かながら身動きはしてる。
芥川(御二方とも、まだ息がある…)
『貴様も今日から武装探偵社が一隅…社の看板を汚すような真似はするな…』
芥川「くっ…ゴホッ」
国木田の言葉が蘇り、芥川にある決心を思いおこさせる。芥川は立ち上がる。芥川は中島に突進していく。
中島「玉砕か、つまらない…」
中島は大きく振りかぶった。しかし芥川は予想外に素早い動きで背を低くし脇下に滑り込み、すれ違って見せた。しかもその勢いのまま、手にした銃を撃つ。中島を狙って弾が切れるまで打ち続ける芥川。弾丸は確かに中島に命中したように見えた…が中島は平然とした様子でふりむく。命中したように思われた弾は切り刻まれ地面に落ちる。
中島「云ったでしょ?僕の虎は全てを壊す。しかも超再生で当たったとて直ぐに再生するんだ。槍が降ろうと、炎に巻かれようと、異能のお陰でほぼ無傷で生きられる。」
芥川「そんなの、攻撃しようが無いだろう…コホッ」
中島「そして、僕は約束は守る。」
中島がなんとか視認できそうな速さで襲いかかる。…その一瞬で芥川の右脇腹が抉り取られた。
芥川「!ぅ゙ぐっ…ゴホッゴホッ」
脇腹を抉られその場に倒れ込む芥川。
幼い芥川が泣いている。その、幼い芥川を力任せに殴る男。
『泣くのを辞めろ、ガキめ。詮無く泣くのを許されるのは、負うてくれる親がいる小児のみ!』
『親にも捨てられたような者に泣く資格などない!』
そうだ、僕は見捨てられながら生きてきた。誰からも認めてもらえず、奪われ、人間としての居場所もなく…
芥川「それでも僕は!」
樋口「?」
樋口と芥川、ふと気配を察知し、振り向く。
中島「なんだと?」
見れば、服を黒獣に変化させつつある芥川がいた。いつの間にか傷口は止血されてる。
そして、黒獣は完全に姿をなした。
中島「そうこなくっちゃ!」
咆哮一声、黒獣は中島に襲いかかる。
近くにいる樋口の前に出てそれを躱す。
樋口「中島先輩!」
樋口が駆け寄ろうとするが…
中島「下がってて!」
虎で突っ込むも、黒獣で簡単に行く手を阻まれその黒獣が襲いかかる。
中島「なにっ!」
虎の防御力で傷は出来なかったものも、吹き飛ばされる。
樋口「先輩!おのれェェェ…!」
樋口は左手のサブマシンガンを黒獣に向かい連射。だが…銃弾は全て弾かれる。
樋口「銃弾が通らない…」
黒獣は中島から樋口へと振り向き、飛びかかる。
樋口「ひっ…!」
しかし、黒獣が触れる寸前で…
中島「月下獣…半人半虎。」
羅生門を爪で裂いた。芥川に意識はない。身ががら空きになってしまっていた。
中島「今だ!」
しかし、近づいて触れた瞬間…いたはずの芥川が次第に透明になっていき、消えてしまう。しかも周囲には雪が舞っている。
中島「これは…?」
見れば谷崎が瀕死ながらも不敵な目で中島を毅然と見てる。
中島「いま裂いたのは虚像か!なら…!」
芥川の背後に、実体の羅生門があらわれる。
中島「知ってるかい?虎の爪には異能をも切り裂く力があると!」
大きな虎が黒獣に襲いかかる。しかし、黒獣はもろともせず真正面から向かっていく。凄まじい異能力同士が激突しようとした瞬間…!
中原「手前ら、其処までだ。」
何処からか現れた中原がいきなり両者の中央に立ちはだかる。中原は両手を水平にあげ、両者の突進を遮ろうとする。実際、中原の指に触れた瞬間…実際黒獣も虎も勢いが殺され地に這いつくばるような体勢になった。そのうち黒獣は消え、芥川はそのまま倒れる。中島も虎化を解くと解放された。
中島「はっ…」
樋口「貴方は探偵社の…なぜここに?」
中原「お前、マフィアで教えられなかったのか?人に容易く触らせちゃならねぇって。」
樋口「んなっ…まさか!」
樋口が慌てて後ろの襟を探ると、そこには小型の盗聴器があった。
樋口「…あの時に。では最初から私の計画を見抜いて…」
中原「さぁてと、仕事は終わりだ。帰った、帰った!」
樋口「生きて返すと思ってるのか!」
中島「あはははは…やめな樋口さん。貴方じゃ勝てない。」
中島「中原さん、今回は引きましょう…しかし、狂犬の身柄は、必ず僕らポートマフィアが頂きます。」
中原「ンでだ?」
中島「簡単な事、その狂犬には闇市で懸賞金が掛かってるからですよ。その額およそ七十億…」
中原「そりゃぁ随分と景気の良い話だなァ」
中島「探偵社にはいずれまた伺います。ポートマフィアは、必ずその七十億を奪います。」
中原「では、武装探偵社と戦争か?やってみろよ…やれるもんならな。」
中原はこれまでになく不敵な笑みで、目をどす黒く染め、中島を見据える。
中島「….」
樋口「零細企業如きが…我々はこの街の暗部そのもの!この街の政治、経済にことごとくに根を張る!たかが十数人の探偵社ごとき、3日待たずに事務所ごと灰と消える!我々に逆らって、生き残ったものなど居ないのだぞ!」
中原「知ってんぜ、ンのくらい…」
中島「そうですね。他の誰よりも、貴方はそれを承知しているでしょう。」
中島「元、ポートマフィアの中原さん…」
『もとより、僕の目的はあんた一人だ。そこにいるお仲間は言わば君の巻き添えだよ。』
『!…僕のせいで、皆が?』
『そうだよ。それが君の業さ。君は生きてるだけで周囲の人間を損なう。』
『…僕の、業』
『…異能力、月下獣!』
中島の腕が変化する。谷崎を裂いた時とは違い、体の大半が虎に変化して行ってる。先程より爪は鋭く、牙も生えている。
〜事務所〜
芥川「!ここ…は…」
探偵社の寝台で寝ていた芥川が目を覚ます。傍らの椅子に国木田が腰掛けている。眼鏡を頭に跳ね上げ、裸眼で手帳を見てる。
国木田「気がついたか、小僧。」
芥川「国木田…さん?」
国木田「全く、この忙しい時に…貴様という奴は」
芥川は上半身を起こす。少しの痛みが走る。
芥川「僕は…」
虎化した中島に右脇腹を抉られたのを思い出す。
芥川「僕は…マフィアに襲われて…」
少しずつ記憶を思い出していく芥川。樋口に撃たれ、血だらけになって倒れるナオミ。激昂し、異能力『細雪』で樋口を倒しかけるも、芥川の一撃に倒れる谷崎。
芥川「…国木田さん、谷崎さんとナオミさんは、、」
国木田「安心しろ、二人は無事だ。」
芥川「本当…ですか」
与謝野「ああ。谷崎は今隣で与謝野さんが治療してる。」
〜隣〜
与謝野「まったく、いい感じに大怪我してくれたモンだねぇ、ええ?谷崎。そんなに妾の治療が好きかい?」
谷崎「あ…ああ…」
谷崎は、逃げようとするも手足が拘束されて動けない。
与謝野「じゃあ今回は特別コースで行こう。」
谷崎に近づき、何故か自分のシャツを脱ぐ。
谷崎「あ…ああ…あ」
与謝野「うっふっふっふっふ」
谷崎「ギャァァァァ」
〜一方その頃〜
谷崎『ギャァァァァァァ…あっ♡』
芥川「…治療…か?これ…」
国木田「聞いたぞ、小僧。」
芥川「はい?」
国木田「お前は裏社会の闇市で、七十億の懸賞首になってるらしい。」
芥川「はっ?」
国木田「七十億か…出世したな。ポートマフィアが血眼になるわけだ。」
芥川「七十億?」
『もとより僕の目的はあんた一人だよ。』
芥川「そういう事だったのか…」
芥川「ど、どうすれば…マフィアがこの探偵社に押し寄せて来るかも知れぬ故…でも、なぜ僕が…」
国木田はクールに手帳を読みつつ、
国木田「狼狽えるな。」
芥川「え?」
国木田「確かにポートマフィアの暴力は苛烈を極める…だが、動揺はするな。動揺は人をも殺す…師匠の教えだ。」
芥川「手帳が逆さまだが…」
手帳を正しく持ち直し、ゆっくり立ち上がると、芥川に向かってさけんだ。
国木田「俺は動揺などしていない!」
芥川「…!」
国木田「マフィア如きで取り乱すか!例え今この瞬間に襲撃されようと、俺が倒してやる!」
芥川(国木田さん…相当焦っておられるな…)
芥川は思い詰めた表情で俯く。
芥川(それだけ探偵社の危機と云うことか…僕のせいで、、銀も…きっと)
国木田「奴はきっと来るぞ。」
芥川「!!」
国木田「お前が招き入れた事態だ。最悪の状況になるかもしれん。自分に出来ることを考えておけ。」
芥川「今の僕にできる事か…」
国木田は医務室から出ていきつつ、
国木田「さっきから探しているんだが…俺の眼鏡を知らんか?」
〜路地裏〜
薄暗い通路の一角に片眼鏡をした中年の男、広津が、一人壁を背にして立っている。やがて一本煙草を咥えると、自然な動きでライターを取り出し火を点けかけるが…通路に響き渡る足音を耳にすると広津は、煙草には火を点けず、ライターと咥えていた煙草を仕舞う。吸わないことに決めた丁度その時、黒服の男が傍らに現れる。
黒服「時間です。」
倉庫に向かう広津の周囲には、十人ほどの黒服の男たちがいる。皆、広津に従っているようだ。やがて倉庫の鉄扉に着くと、広津が一言命じる。
広津「退いてろ。」
黒服の男たちは云われた通り下がる。広津は鉄扉の前に立つと、静かに目を閉じる。そして右手でそっと鉄扉にふれる。その瞬間、弾かれたように、重い鉄扉は枠から外れて、倉庫内部へと吹き飛んだ。倉庫の中には20名ほどの、作業服姿の男たちがいた。倉庫内には多数の木箱が積まれている。どうやら作業員たちは、その荷を積み替え、整理してたようだ。扉の外れた出入り口から無遠慮に入ってくる黒服の男達を見て、一様に警戒してるようだった。
広津「諸君、仕事中に失礼。」
作業員「な、なんだ、あんたら?」
広津「我々も仕事だ。なに、すぐに済む。実は最近、我々ポートマフィアの荷を横流しにする不埒な連中がいて、ここがその拠点だという噂を聞いてね。取り敢えず証拠を探してる。荷物の中を検め(あらため)させて貰っても、よろしいかな?」
と云ってる間に、一人の作業員が鉄パイプでいきなり広津の後頭部に殴りかかる。だが…渾身の力を込めたであろうその不意打ちの鉄パイプを、広津は、軽くあげた指先で受け止めてる。
作業員「?!」
広津「…証拠が見つかったな」
次の瞬間、作業員が手にした鉄パイプと共に、後方に弾き飛ばされる。弾き飛ばされて床に座り込んだ作業員は、手にした鉄パイプを見て驚愕してる。それは激しく湾曲していた。
作業員「馬鹿な…鋼鉄の鉄パイプが…」
広津「異能力を見るのは、初めてかね?」
広津が軽く作業員の肩に手を置いた瞬間、作業員の体は鉄パイプのように激しく湾曲する。
作業員「ぎゃぁぁぁぁ…」
その惨殺を呆然と見つめる作業員。作業員の遺体が、床に崩れる。広津は煙草を咥え、今度こそライターで火を点け、静かに吸って、煙を吐く。
広津「全員…殺せ…」
と広津が云い終えるのと同時に、十人ほどの黒服たちは、全員が機関銃を構え、発泡する。悲鳴と銃声が響き渡る中、広津は一人、倉庫の出入り口で煙草を吸う。
広津「矢張り仕事終わりの一服は格別だな…」
武闘組織『黒蜥蜴』百人町
__広津柳浪…能力名『落椿』
___________オチツバキ
〜武装探偵社〜
すでに寝台から出て、復帰していた芥川。おりしもその時、爆音が聞こえた。思わず窓から外を見ると、港の方で爆炎が上がってるのが見える。
芥川「爆発か…何だ?」
先ほど広津達が襲った倉庫が爆発したらしく、焼け跡になっていた。未だに煙が燻っていて、軍警察の警官たちが調査してる。近くの市民たちが遠巻きにその様子を見ている。そこに芥川も姿を現す。
芥川「…」
市民「皆殺しだってよ。」
市民「ひどいな…」
市民「軍警察が云うには、ポートマフィアの武闘派、その中でも特に凶暴な実動部隊〝黒蜥蜴〟って奴らの仕業だって。」
市民「黒蜥蜴?」
市民「特殊部隊なみの戦闘能力を持っていて、しかも恐ろしく残酷な連中だとか。」
芥川「ポートマフィアの黒蜥蜴…もしそんな奴らが探偵事務所を襲ってくれば…最悪な状況か…」
佇む芥川。目の前には電話部屋があり、扉の硝子に意を決した芥川の表情が映る。
芥川(銀や探偵社の皆の為だ…皆を僕のことにこれ以上、巻き込む訳にはいかぬ。)
〜執務室〜
薄暗い執務室に、椅子に腰掛けた女性が一人。電話の呼び出し音が鳴り、それを受ける。
樋口「はい、どなたですか?」
芥川『…僕だ。』
樋口「狂犬!そうか…探偵社で渡した名刺を見て…先日はお仲間に助けられましたが、次はそうは行きませんよ…それでご用件は?」
芥川『僕は探偵社を辞める…そして一人で逃げる。捕まえてみろ。』
樋口「…成る程。だから探偵社に手を出すなと?」
芥川『そうだ。お前らの目的は僕であって探偵社では無いだろう。それでは失礼する。』
芥川はそういう残し電話を切った。通話の切れた受話器を手に、無表情になにか考えた樋口は、やおら立ちあがり外に待機する黒服に命令する。
樋口「黒蜥蜴を呼べ!」
〜探偵社〜
肩掛け鞄をもった芥川が、深刻な顔で階段を降りてくる。エレベーターから両手に多くの書類ファイルを抱え出てきた国木田独歩と会う。
芥川「…」
国木田「最悪の状況になる可能性が高い。こいつを運ぶのを手伝って…」
しかし、芥川はさっさとこの場を立ち去ろうとする。
国木田「おい!」
その声にピクリと肩が跳ねるも、そのまま無視して立ち去った。
国木田「…おいこら!手伝え小僧!…こんな時に何処に行く!」
『出て行け穀潰し!お前などどこの孤児院も要らぬ!』
『どこぞで野垂れ死にでもした方が、世間様の為よ!』
芥川「…」
〜事務所〜
国木田は書類を運び終え、ソファーに座っていた。そこに、中原が合流する。
国木田「たく、あの小僧は…くどくど」
中原「まァ落ち着けや。何があったんだよ。」
さっきまでの事を話してると他の社員も集まって来た。
中原「そりゃあ、国木田の云い方が悪かったな。」
国木田「何、他に云い方があるか。」
与謝野「あァ、そういうことかい。」
江戸川「まぁ、マフィアは彼奴が居ようが居まいがもうじきここを攻めてくるよ。」
中原「一時の気の迷いだ。マフィアが攻めてきたって騒ぎを聞きつけて戻って来る。そん時に云ってやりゃいいだろ。探偵社はこんなことじゃ負けねぇってな。」
国木田「一時の気の迷いだと?」
中原「ん?嗚呼。彼奴は自分が持ってきた厄災だと責任を感じて、これ以上巻き込めないと距離を置くつもりなんだろ。こっちに攻め込まれたら負けるとでも考えてんだよ。単身で逃げるつもりだろうな。」
国木田「そんな、甘く見られては困るな。しかし、あの小僧、莫迦なことを…」
中原「いやいや彼奴、入社試験で残り数秒で爆発する爆弾に覆いかぶさった様な奴だぞ。やっぱ、変わりモンが多いよな〜」
江戸川「みんな君にだけは云われたくないと思うよ。」
与謝野「まァねぇ…」
国木田「前職も休日も何なら何考えてるのかですら分からない様な奴だぞ。お前、仕事以外に何してるんだ?」
与謝野「そう云われると仕事してるとこしか見たことないねぇ…」
中原「そーか?まァ、酔ってたら口が滑っちまうかもなァ」
与謝野「おっ、酒の勝負かい?」
国木田「辞めとけ、中原。お前酒癖が悪いだろ。」
中原「ちぇっ。そぉいや、何で俺はここまで来たんだっけか…あぁ、電話部屋にいた芥川をみたからか。」
与謝野「そうだったのかい?確かに今日、アンタは非番だったねぇ。」
中原「俺の助けはいらなさそうか?」
江戸川「あぁ、問題無いね。」
中原「そうか、じゃあ俺は帰るぜ。じゃあな」
〜路地裏〜
真昼だが、そこは高層ビルに挟まれた薄暗い路地。そこに、あの片眼鏡の男、広津がビルのコンクリート壁を背にして立っている。傍らには数人の黒服の男たちがいる。広津は煙草を一本手にし、ライターに近づけるが、吸うのを辞めてしまう。そこに、数人の黒服を従えて、若い男、立原がやって来る。
広津「遅い…2分、遅刻だ。」
立原「ジイサンは神経が細かくっていかんね。なんか陰気臭い場所だな…」
武闘組織『黒蜥蜴』十人町
__________立原道造
その時、呼び出し音が鳴る。広津の携帯である。
広津「集合した。」
樋口『ご苦労さまです。』
広津「それで?我ら三人がかりで潰す目標とは?」
樋口『目標は…武装探偵社の事務所』
広津「探偵社?狂犬ではなく…か?」
樋口『前回の失敗は、探偵社の容喙が原因…。同じ轍は踏みません。まずは護衛たる、探偵社を殲滅します。』
広津「皆殺しで、いいのか?」
樋口『構いません』
広津「了解した。」
〜執務室〜
切れた電話を手に、樋口の表情が険しくなる。
樋口「中島先輩が探偵社如きに退くなど…あってはならない!」
〜???〜
格子の中に、一人の少女が座っている。
中島「死を恐れろ…殺しを恐れろ…死を望む人、等しく死に、皆同じように死に望まるから…人は、誰かに生きてて良いって言われなくちゃ行けないんだ。」
格子を簡単に壊し、少女の喉元へ虎の腕が襲いかかる。しかしその寸前で動きが止まる。少女は何も反応しない。静かに壁を見てる。
中島「その覚悟…いい心がけだね。君に生きてて良いと僕が云ってあげよう。君に生きる理由を贈物しよう。」
〜探偵社〜
広津、立原の二人が、オフィス入口前に歩いてくる。すでに黒服の男たちも、周囲に展開してる。
立原「見張りも居ねぇのか…ぬるい奴らだ。」
広津「…」
指を鳴らし、広津が合図すると黒服の男達は銃を構えて突入の瞬間を待つ。広津は右手をかざし、オフィス入口の扉に指先を当てる。その瞬間、広津は自身の異能で探偵社の扉を吹き飛ばした。十数名の機関銃を持った黒服達が訓練された動きでオフィスに突入する。
国木田「!」
与謝野「!」
宮沢「うわぁ!」
江戸川「…」
国木田「貴様たちは…」
広津「失礼…探偵社なのにアポイントメントを忘れていたな。それから、ノックも…」
国木田「ポートマフィアの黒蜥蜴…」
立原「ま、大目に見てくれ。用事はすぐに済む。」
立原、広津、そして黒服達が凄まじい殺気で、武器を手にする。
『出ていけ穀潰し!お前など何処の孤児院にも要らぬ』
『どこぞで野垂れ死にでもしたほうが世間様の為よ!』
芥川「あの人たちの云うとおりだ…僕の行くところなぞありはせん。」
その時、激しい銃声が聞こえた。
芥川「銃声?しかもこの方向は…」
周囲の通行人も銃声の方を見る。そこには、武装探偵社事務所ビルが。銃声と共に、そのオフィスの窓が砕け散る。
芥川「何故、探偵社が!」
懸命に、探偵社へ向う芥川。
芥川「なに故この様なことに…また僕のせいで皆が!」
芥川は探偵社に飛び込んだ。芥川が見たオフィス内では…
国木田が広津を、投げ飛ばしてる所だった。
広津「なに…」
床に叩きつけられた広津は、国木田の圧倒的な戦力に呆然としてる。
芥川「は…?」
宮沢「よっと!」
賢治が黒服の一人を叩きのめしてる。見れば立原もすでに白目をむいて意識を失い、情けない姿で床に転がってる。
与謝野「ハッ!」
最後の黒服を与謝野が蹴り飛ばす。乱歩は何事もなかったように悠々と黒服たちが倒れてるディスクに腰掛け、ラムネを飲んでいる。
国木田「ん、やっと帰ったか小僧。」
国木田の足元には、腕を極められた広津が痛みにもがいていた。
芥川「ええ…」
国木田「フーこれだから嫌なのだ。業務予定がまた大きく狂ってしまう。オフィスのリフォームと壊れた備品の購入に、一体いくら掛かると思ってる!」
与謝野「機関銃とは派手な襲撃だったわね。今回、ご近所から来るクレームに、お詫びの品を用意して挨拶に行くのは、国木田の番だからね。」
国木田「ああ…、結局最悪な状況になってしまった!」
芥川「は?最悪な状況とはこれか?特殊部隊並みの戦闘力を持つ、ポートマフィアの武闘派とは?」
宮沢「国木田さーん、こいつらどうします?」
国木田「窓から捨てとけ。」
宮沢「了解ーィ♡」
床に転がった黒服たちを、片端から、容赦なく投げ捨てていく賢治。
芥川「いつもの事ながら襲撃はもうホント勘弁してもらいたいな。」
芥川(いつものことなのか?!ポートマフィアよりも武装探偵社の方がかなり物騒では…?)
国木田「さっさと片付けを手伝え小僧!」
芥川「…」
国木田「全くこの忙しいのにふらふらと出ていきおって。貴様も探偵社の一隅…まぁお前が出来るのは片付けの手伝いぐらいだろう?」
芥川「…」
『自分にできることを考えておけ』
与謝野「まァ今回は、国木田の言い方が悪かったねェ。武装探偵社じゃこの程度、朝飯前だよ。」
国木田「入社試験のときに中原が言ってただろう。この程度で驚いててはならないと…」
芥川「ほっ…」
国木田「落ち着いたならいいが、さっさと手伝え!やることなんぞ山程あるんだ。」
芥川「承知した。」
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