テラーノベル
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宇髄邸での生活にも少しずつ慣れてきた。 私は相変わらず「隠」出身らしく裏方気質のまま、隊士としての基礎稽古を積んでいた。
——とはいえ。
「おい、地味子。お前のその動き、もっと派手に決めろ!」
「派手にって……実戦に必要ないでしょ」
「派手さは心意気だ。お前が鬼に一撃くれてやるとき、『うわっ、なんかすごい!』って思わせてなんぼだろうが!」
朝から宇髄さんの指導はとにかく“派手”の一言。
いや、技の内容自体は真っ当なんだけど……要所要所で余計な要素を付け足してくるのが問題だ。
「それにしても○○ちゃん、足運びは本当に綺麗よね」
見学していた雛鶴さんが微笑む。
「そうそう!音もなくスッと動くところが、なんか忍っぽいし憧れる〜!」と須磨さんが手を叩く。
「……でもまだ力が足りない。宇髄様の求める派手さを出すには筋力がいるな」まきをさんが腕を組んで真顔で言った。
うん、嫁さんたちに褒められるのは嬉しい。けど。
その直後、宇髄さんがニヤリと笑い、爆弾を落とした。
「よし!筋力をつけるために、今日から○○には俺と同じトレーニングメニューをやらせる!」
「え、ちょ、待って、それ絶対死ぬやつ……」
「安心しろ!派手に追い込んでやる!」
安心できるか。
⸻
昼。
「……無理、死ぬ……」
私は庭の地面に大の字で転がっていた。腕はぷるぷる、足は棒。
なにせ「腕立て千回」「逆立ち歩きで庭十周」「丸太担いでダッシュ」などなど。
もはや訓練なのか、嫌がらせなのか判断がつかないレベル。
「まだ半分も終わってないぞ」
宇髄さんはケロリとした顔で笑う。ほんとバケモノかこの人。
「うぅぅ……」と呻いていると、雛鶴さんがタオルを差し出してくれた。
「はい。水分もちゃんと取らないと倒れるわよ」
「ありがとうございます……雛鶴さんが女神に見える」
「ふふ。須磨とまきをにも少しは見習ってほしいものね」
「ちょっと雛鶴!私だって応援してたし!」須磨さんが抗議する。
「応援より手を貸すべきだろうが」とまきをさんがツッコミ。
「喧嘩すんな。○○が余計に疲れるだろ」宇髄さんが苦笑い。
ああ、なんか……この空気。家族っぽくて、ちょっと温かい。
⸻
その夜。
稽古の疲れで頭がふらふらしていたせいか、夕食に出されたお酒をほんの少し口にしてしまった。
私は酒に弱い。ほんの一口で、顔が熱くなり、言葉がぽろぽろ口から出てしまう。
「はぁ……宇髄さん、今日のメニューは鬼畜すぎ……でも、でも……」
座布団に突っ伏しながら、気づけば本音が溢れていた。
「でも……宇髄さんが、なんか……見ててくれるの、嫌じゃなかった……」
沈黙。
顔を上げると、宇髄さんがぎょっとした顔で固まっていた。
嫁さんたちは顔を見合わせて、にやにや笑っている。
「きゃー!○○ちゃん、可愛い〜!」須磨さんが跳ねるように私に抱きつく。
「雛鶴……これ、完全に惚れてる顔だよな?」まきをさんが肘で突く。
「ええ。宇髄様、どう受け止めるの?」雛鶴さんの目が面白そうに光った。
「おい……」
宇髄さんが低く呟く。
その声音に、私は酔ってるはずなのに背筋がぞくりと震えた。
「……耐えろ、俺」
彼は額に手を当て、深呼吸していた。
「○○、今日は疲れてる。寝ろ」
「えー……まだ一緒にいたいのに……」
「っ……」
私は須磨さんに支えられて部屋へ運ばれていく。
背後で宇髄さんが小さく舌打ちしたような音を聞いた気がした。
——もし彼が理性を飛ばしていたら。
私はどうなっていたのだろう。
⸻
夜更け。
「なあ、雛鶴」
宇髄さんの声が廊下越しに漏れていた。
「俺、ちょっとやばいかもしれねぇ。あいつ、可愛すぎて……」
「ふふ、知ってるわ。須磨もまきをも気づいてる」
「……鬼ごときより、あいつにやられそうだ」
そう呟く彼の声を、私は半分夢の中で聞いた。
胸が熱くて眠れなかった。
今回甘々にしてみたんだけどどう⁉️
コメント
6件
甘々さいこー!
七瀬さん最高すぎ.. 鬼滅もハイキューも好みな作品すぎる、笑
初コメント失礼します!! めちゃ最高でした!🤭︎💕 次のお話待っています✨️