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今日は 俺がここの教師になってから3回目のバレンタインデー。
毎年毎年、この日には手を焼いている。
一般的に見れば 、女の子が好きな男の子にチョコを渡す、という、学生時代陰キャだった俺には微塵も関係ない日だった。
それなのに、まさか教師になってからこんなにこの日にドキドキするのはあいつのせいだ。
俺がこの学校に来た時に、俺はある1年生の男の子にチョコをもらった。
その子曰く、俺に一目惚れしたらしい。
そんな珍しい子もいるんだ、とあの時は相手にしていなかったが、ここまで来るとさすがに本気だと思う他ない。
次の年のバレンタインデーには、チョコを渡されたと同時に告白をしてきた。もちろんその時は先生と生徒、未成年と成人男性という関係もあり断ったが、「絶対堕とすから!」と逆に火をつけてしまい、その日から毎日アピールをされている。
さて、今日が3回目のバレンタインデー。
だが、その日は帰りのホームルームが終わっても、あいつの姿は見えなかった。
『まぁ、それもそっか、あいつ今年受験だし、チョコなんて作ってる暇ないよな、』
最初から分かっていた、今年受験を控えているあいつ。いつもはおちゃらけているが根はすごく真面目で、頭も良い。
入試当日があと1週間と迫ったこの時期に、受験生がチョコを作ってくる方がおかしい。
わかってた、わかってたはずなのに。
『期待してた俺、バカみたいじゃん、』
教室から、部活に全力を注いでいる生徒たちを見ながら、ただただ立ち尽くしていた。
そんな俺を現実に引き戻したのは、
「吉田先生!!!」
あいつの声だった。
『佐野、』
「吉田先生!遅くなってごめん、せっかく期待してくれてたのに、 」
『聞いてたの、』
「ねぇ、吉田先生?期待してたってことはさ、俺も期待していいってこと、?」
俺に手作りのチョコを手渡しながら、 耳元で低く囁いてくる。
『いや、でも佐野は生徒で、俺は教師で、、』
「俺が卒業したらいいの?」
食いつくように佐野が核心を突いてくる。ここでスパッと言いきれない俺はきっと、佐野に惚れているんだろう。でも、俺には素直に言えるほどの性格は持ち合わせていない。だったらせめて、
『、勇斗が俺を堕としてくれるんでしょ?』
耳元で囁き返してやった。
その途端、佐野の目がギラつく。
「もちろん。卒業式、楽しみにしといてね?♡ 仁人せんせ?♡」
卒業式まであと1ヶ月ちょっと。
俺が勇斗の隣に立つまであと1ヶ月ちょっと。