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(川西side)
数日前からサポーター片方無くしててさ、どこやったっけな〜って思ってたら次の時間が体育で。
丁度探せるじゃんって思ってまず倉庫の中から探そうとしたんだよ。
そしたらさ、瀬見さんが裸で倒れてたからびっくりした。
このまま追い出すわけにも自分が出ていく訳にも行かないから、瀬見さんの着替えを手伝おうとした。
でも瀬見さんの制服はびちゃびちゃで絶対着れない。
どうしてこうなった、という疑問は一旦置いといて。
悩みに悩んだ挙句、俺が瀬見さんを背負って、保健室連れていこうってなった。
瀬見さんは俺の背中に乗ることを躊躇ったけど、最後は素直に乗ってくれた。
その後、保健室で身体を綺麗に拭いて話を聞いた。
どうやら瀬見さんはずっと前からいじめを受けていて、レ■プされたらしい。
瀬見さんって、自分がどんなに辛くても周りにそれを伝えようとしないし、誰かに助けを求めることもしない。
だから瀬見さんがいじめられてることも、その時初めて知った。
普段は周りに気を使っていつも笑顔な瀬見さんが、今はとても悲しそうな顔をしていて。
俺は目の前の身体をそっと抱きしめ、自分なりの優しい言葉をかけた。
少しでも瀬見さんが安心できることを願いながら。
その後、寮まで送ると言って瀬見さんの荷物と俺の部屋にある替えの服(姉ちゃんのおさがりのジャージ)を取るべく、瀬見さんのクラスに行き荷物を背負って、寮にある自分の部屋まで走って行った。
多分人生の中で1番本気で走ったと思う。
今ならオリンピックとか出場できそう。
走りながらそう思った。
息を切らしながら保健室に戻ると、瀬見さんがベッドですやすやと眠ってて、とりあえずジャージ着せて、また背中に乗せて寮まで送ろう、そう思ったけど。
多分さっきも背中に乗せて移動してたから背中がマジで痛いから、縦抱きで寮まで歩こうってなった。
意識のない人間って、脱力してるから案の定重くて。
まぁひとまず移動しようと立ち上がって歩き出した。
予想通り学校廊下で注目を浴びて、それを避けるように前を進んで何とか学校の外に出た。
授業中だったため外に人は誰もいなかった。
そのまま寮まで歩く。
一旦立ち止まって顔を見て、天使のような寝顔で俺は思わず微笑んだ。
灰色の綺麗な前髪を耳にかけてあげ、露わになったその額に唇を優しく押し付けた。
「恋は盲目」
寮の前に着くと、グッドタイミングで白布と遭遇した。
白布は「うわぁ何してんの。先輩のこと誘拐しようとしてんの?」と言いたげな顔をしている。
いやごめんって。
でもそんな顔しないで。
とりあえず白布に手伝ってもらおうと頼んだら案の定「は?」って言われた。
悲しい。
今度の昼飯代奢る約束で白布は渋々承諾してくれた。
瀬見さんの部屋まで行き、ベッドに寝かせた。
瀬見さんはまだ眠っている。
白布に事情を話すと、彼は珍しく真剣に聞いてくれた。
俺のくだらない日常会話はまともに聞かないくせに…
白布に瀬見さんの面倒を任せて帰ったのは単に恥ずかしかったから。
だって部活の先輩に内緒でキスしたんだよ?本人と顔を合わせられるわけがない。
そもそも俺がキスをした理由は瀬見さんが好きだから。
俺がバレー部に入部して、一番最初に話しかけてくれた人。
練習を怠らず、後輩達の面倒を見て、よく笑顔を見せる人。
そういう所を見て単に、すげぇなって思った。
瀬見さんに対する尊敬が、気付いたら恋になっていた。
だから瀬見さんがいじめられているって知った時は、顔には出さなかったけど心の中では超ショックだった。
もっと早く気付いていれば、そうしたら瀬見さんが傷付くこともなかったのに、と後悔もした。
恋は盲目。
恋に落ちると理性や常識を失ってしまうこと。
自分に最もあてはまることわざだと思う。
俺は実際あんな事をしたんだから、理性や常識の欠片もない。
恋のためなら、どんなことでもやる。
それが俺。
翌日。
瀬見さんはいつも通り元気だけど、何故か瀬見さんはずーっと俺を見つめてる。
見つめてるというか、…睨んでる?俺なんかした?なんにしても気になるから瀬見さんに話しかけてみても「なんでもない」の一点張りだった。
えぇ…なんでもないんだったら見つめてこないでよ。
試合に集中できないでしょ。
俺はコートの中にいる先輩に呼ばれて渋々コートに戻った。
最近、3年の部屋から啜り泣く声が聞こえるらしい。
天童さんから聞いた。
天童さんは「幽霊だったら怖くない!?」って目をキラキラさせながら俺に言ってくるけど、幽霊信じてないし、全く怖くない。
そう言えば、天童さんは「えー、つまんないの〜」と言いながら去っていった。
瀬見さんがずーっと俺を見てるって話したでしょ?どうしても気になるから俺から話しかけに言ったんだよ。
そしたらさ、瀬見さんの目が赤く腫れてて。
ほんと、可哀想なくらい。
だからさ、その天童さんが言ってる啜り泣く声の正体は瀬見さんなんじゃないかって思ってる。
あと、部室に髪の毛が落ちているのをよく見かける。
多分色的に、瀬見さんのものだと思う。
抜け毛か、それとも自分で──、
………それは流石にないか。
食事と風呂を済ませて脱衣所に戻ると天童さんがいた。
…なんか面倒臭いことになりそう。
(天童)
「あ!ねぇ太一!」
うわバレた最悪。
(川西)
「何ですか」
(天童)
「ちょっと聞いてよ!」
(川西)
「嫌ですよ、天童さんの話毎回くだらないじゃないですか」
(天童)
「いや、今回はくだらなくない!不思議な話」
不思議な話?
(天童)
「あのね、この前啜り泣く声の話したじゃん」
(川西)
「はい」
(天童)
「今日もまた聞いてみようと思ったんだけど」
「でも今日は声が聞こえなかったんだよね!!」
うわくだらね〜〜。
(川西)
「うわくだらね〜〜。」
(天童)
「せめて心の中で言ってくんない?」
やべ、心の声が漏れた。
(天童)
「毎日聞こえたのに今日だけ聞こえなかったんだよ?変じゃない?」
(川西)
「そんなに気になるんなら見に行けばいいじゃないですか」
(天童)
「なら太一も一緒に来て!」
(川西)
「嫌ですよ…面倒だし」
「それとも怖いんですか」
(天童)
「べ、べべ別にここ怖くねーし!?」
(川西)
「怖いんですね」
見に行きたいんなら1人でどーぞ、と告げその場を後にした。
面倒だとは言ったけどさ、やっぱ気になるじゃん。
瀬見さんの部屋のドアの前で耳をすませる。
…何も聞こえない。
傍から見たら今の俺ただの変質者だな。
一応ノックをして中に入ったけど誰もいなかった。
山形さんは風呂かな。
天童さんと一緒にいたし。
………じゃあ瀬見さんは?
食堂でも風呂でも見かけなかった。
瀬見さんは一体どこへ?
………うーん。
まぁいっか、寝よ。
瀬見さんのことが気になったけど、それよりも今は早く寝たくて仕方がなかった。
明日の部活に支障きたしたら困るし。
うん寝よう。
俺は自分の部屋に早足で戻ってすぐさま自分のベッドにダイブした。
「何やってんのお前」って白布(同室者)の冷たい言葉が俺に降りかかってくる。
俺はそんな優しさの欠片もない白布に枕に顔を埋めながら質問を投げかけた。
(川西)
「お前さぁ」
(白布)
「なに」
(川西)
「瀬見さん見なかった?」
(白布)
「は?瀬見さん?」
(川西)
「うん、食堂にも風呂にもいないんだよ」
(白布)
「じゃあ外にでもいるんじゃねぇの」
(川西)
「外かぁ…」
(白布)
「てか何でそんなに瀬見さんの行方が気になんの」
(川西)
「何かあったら心配だから」
(白布)
「ふーん。………あ、そういえば」
(川西)
「何?」
(白布)
「瀬見さんさっき見たかも」
(川西)
「まじ!?」
(白布)
「うわびっくりした…」
「さっきなんとなく窓の外見てたらさ、瀬見さんが瀬見さんの同級生5、6人と歩いてた」
(川西)
「へぇ…」
(白布)
「でも瀬見さんは何かすげぇ嫌そうな顔してた」
(川西)
「それを早く言えよ!!」
(白布)
「うわびっくりした…(2回目)」
(川西)
「だってもしかしたら今頃瀬見さんがまたいじめられてるかも知れないんだぞ!?」
「あと、この前みたいに、また…」
(白布)
「また?」
(川西)
「野外レ⬛︎プされてるかもしれない!!!」
(白布)
「そういうのあんま大声で言うなよ、…まぁでも確かに、可能性はゼロではないな」
(川西)
「よし!そうと決まればいくぞ白布!」
(白布)
「は?どこに!?」
(川西)
「瀬見さんを探しにだよ!」
(白布)
「今から!?」
(川西)
「だって瀬見さんに何かあってからじゃ遅いだろ?その前に俺らが助けないと!」
(白布)
「面倒くせぇ…」
(川西)
「ならお前は瀬見さんを見捨てるって言うのか?」
(白布)
「………」
(川西)
「違うんなら準備して早く行くぞ、ほら早く!」
(白布)
「………(面倒くせぇ…)」
俺と白布は瀬見さんの行方を追うために走った。
道中天童さんと遭遇したからついでに引っ張って連れて行った。
…瀬見さん無事であれ。