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君へ贈る言葉

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君へ贈る言葉

6 - 「事は密なるを以って成る」

♥

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2024年12月28日

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川の清らかな音が俺の傍で鳴り響く。

俺はその音を聞きながら

誰かの助けを待っていた。




「秘中之秘」

足音が聞こえる。俺をいじめた奴らがまた戻ってきたのだろうか。

そう思うと怖い。

身体が震える。

もし戻ってきたら、また川に顔を突っ込まれる。


…あの恐怖を、また味わうことになる。


「…俺が、一体何をしたっていうんだよ…」

濡れた髪を1本抜きながら、ポツリと呟いた。


足音が段々と近付いてくる。

重い身体をなんとか動かして影になる場所に身を潜めた。


秋風がひゅうひゅうと音を鳴らしながら吹いている。

…寒い。

ずっとここにいたら死んでしまいそうだ。


…このまま死んでもいいかもしれない。

この寒さで凍え死んだらまたいじめられることはないし、天国へ行ける。

そっちの方がよっぽど楽だ。


川を見つめる。

入水自殺とか聞いたことあるかも。

でもあれって実際死ねるんだろうか。

溺死は苦しいから正直やりたくないけど


………今ならできそう。

川の近くに寄って手を入れてみる。

驚く程に冷たかった。

これ、溺れるより先に凍死すんじゃねぇの…?


………ま、どっちでもいっか。

川に身を投げようとした時、謎の明かりが俺に照らされた。

眩しくて、目を瞑る。


(??)

「………せみ、さん…?」

(瀬見)

「─────………え、」

振り向いた先には、スマホのライトを俺に照らす人影。

姿はよく見えなかったが、聞き覚えのある声が聞こえたので誰かはすぐに分かった。


─────川西の声。

川西が、また俺を助けに来てくれた。

その事実にまた泣きそうになる。

(川西)

「白布!瀬見さん見つけた!」

(白布)

「…!天童さん連れてくる!」

(川西)

「分かった!」

白布もいる。

こんなに必死な2人見たことなかった。

2人とも、必死に俺を探してくれてたんだ…

川西がゆっくりと近付いてくる。

怖くて咄嗟に身を引いた。

「何自殺しようとしてるんですか」とか、「馬鹿な真似やめてください」って怒鳴られそうで怖かったから。

逃げようとしたが腕を掴まれて逃げ場をなくした。

そのまま勢いよく引っ張られる。





………温かい。

濡れた制服がすぐ乾きそうなくらい温かかった。

今俺はまた川西に抱きしめられてる。

(瀬見)

「おい離せ、っ制服濡れてるから…」

(川西)

「探したよ、瀬見さん」

(瀬見)

「………!」

(川西)

「瀬見さんに会いたくて、」

「必死に探してた」

俺に会いたくて必死に探してた。

その言葉を聞いた時、俺は川西の腕の中で泣いた。

川西に会えた時点でもう嬉しいし、しかも前のような優しい言葉をかけてもらって、………俺はなんて幸せなんだ。




(川西)

「…ほんと、無事で、…よかった、っ」

(瀬見)

「、………川、西…?」

川西が、───泣いてる…?顔は見えないけど、声が震えてたから……多分、泣いてる。

(白布・天童)

「瀬見さん/英太君!」

白布がこっちに走ってくる。

………あ、天童もいたんだ。


(天童)

「英太君怪我ない?」

(瀬見)

「う、うん……大丈夫」

(白布)

「瀬見さん、あったかい飲み物持ってきたんで、とりあえずコレ飲んでください」

(瀬見)

「おう………さんきゅ…」

(天童)

「太一は一回離れよ?英太君が心配なのは分かるけど」

(川西)

「………っす…」

川西が渋々離れる。

俺はその場に座り、飲み物を受け取ってそれを喉に通した。

3人も俺に続いてしゃがむ。

(白布)

「…何があったんですか」

(瀬見)

「………別に、なんもない」

(天童)

「じゃあ何で夜遅くまでこんな所にいたの?」

(瀬見)

「…………それは、」

「えっと、………」

「ひ、…1人で、川で遊んでて」

「それで、………ずぶ濡れに」

(白布)

「あからさまな嘘ついてもバレバレですから」

(瀬見)

「、うぅ……」

いじめられたこと、さっきまで水責めされてたこと。

それを正直に話した。

3人共、真剣に話を聞いてくれた。


(天童)

「……めっちゃヤバくない?それ」

(白布)

「担任とか、他の先生には言ったんですか」

(瀬見)

「担任には言った。………言ったんだけど、」

担任は「いじめなんて、大袈裟だろ」って言ってた。

そう伝えると、3人共呆れた顔をした。

(川西)

「最低ですね、その先生…」

(白布)

「生徒がいじめに遭っているというのに…」

(天童)

「うーん…まぁ、ここで長話する訳にもいかないし」

「一旦寮戻ろ?英太君」

(瀬見)

「………うん、」

天童は俺の手を引いて歩いた。

こいつ、優しい一面もあるんだな…




(白布)

「……お前寮戻らねぇの?」

(川西)

「……………戻るよ」

(白布)

「戻るって言うくせに全然歩こうとしないじゃん」

(川西)

「…………………うん」

(白布)

「…お前、何かさっきからおかしいぞ、まじで」

「大丈夫かよ…?」

(川西)

「………白布、あのさ」

「さっき、瀬見さんが………」

(白布)

「瀬見さんがなに」

(川西)

「………」

「、いや、やっぱなんでもない」

(白布)

「はぁ?勿体ぶらずに言えよ」

(川西)

「なんでもないってば。ほら行くぞ」

(白布)

「っちょ、急に歩き出すなって、」





【瀬見の部屋】

(川西side)


(天童)

「えーたくんぐっすりだね〜」

(白布)

「相当疲れたんでしょうね」

俺達は瀬見さんを連れて寮に戻り、ベッドに寝かせた。

瀬見さんの寝顔があまりにも可愛すぎて思わず抱きしめたくなったが、今は白布や天童さんがいるからやめておこう。

(川西)

「あー、…ほんともう」

(白布)

「なに」

(川西)

「またレ⬛︎プされてるかと思った…」

(白布)

「だからそれ口に出すなって…」

(天童)

「は?レ⬛︎プって??」

(白布)

「えっと、…瀬見さんがいじめっ子達に、………やられたらしいです」

(天童)

「は…!?ガチ!?」

(川西)

「はい」

(天童)

「それ大問題じゃない!?早く先生に言った方がいいって!」

(川西)

「レ⬛︎プされた翌日、先生に言ったらしいんすよ」

(白布)

「だから口に出s………」

「………もういいや(諦め)」

(川西)

「でも、先生は信じてくれなかったみたいで…」

(天童)

「………そっかァ、」

「そりゃあ髪も抜きたくなるもんだ…」

(川西)

「は?髪も抜きたくなる?」

(白布)

「それってどういうことですか」

(天童)

「英太君、自分の髪抜いてるらしいんだよね」

「この前俺に相談してくれた」

(川西)

「………あ、じゃあ最近部室に落ちてる髪の毛って…」

(天童)

「英太君の。」

「多分、自然に抜け落ちたやつじゃなくて、意図的に抜いたものだと思う」

「何回も注意してるんだけどね〜、やめられないらしいよ」

やっぱり瀬見さんだったんだ。

でもまさか自分で抜いているとは思ってなかったな。

(白布)

「それ、抜毛症って言うんですよね。俺も中学の時受験のストレスでなりました」

(川西)

「そうなの?初耳なんだけど」

(白布)

「今はもう治った」

(川西)

「へー」

(天童)

「………あ!やべ!!」

(川西)

「どうしたんですか?」

(天童)

「若利君と今週のジャンプ読む約束してたんだった!!」

(白布)

「はぁ??」

(天童)

「ごめん2人共!俺先帰るわ!」

「じゃね!!」




(川西)

「抜毛症、かぁ…」

(白布)

「うん」

(川西)

「抜毛症ってさ、自分の髪の毛を抜くんでしょ?」

(白布)

「うん」

(川西)

「…それどんな感じなの?」

(白布)

「どんな感じとは?」

(川西)

「いや、自分の髪の毛抜いてたらどんな気持ちになるのかなって」

(白布)

「…俺の場合、気が少し楽になる」

(川西)

「へー…そんなもんなの」

(白布)

「うん。抜くことで快感を得たり、不安が和らぐ人が殆どらしい」

(川西)

「へぇ…」

その後、暫く白布から抜毛症について色々教えてもらった。

抜毛症は精神障害の一種で、日常生活の精神的ストレスから逃れるために抜毛行為を始める人が多いらしい。

正直、精神障害とかよく分かんないって思ってたけど話を聞いているうちに段々と興味が湧いてきた。




…話題変えるけどさ、瀬見さんを川辺で見つけた時に、


見ちゃったんだよね…



──瀬見さんが、自殺しようとしてるところを。

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