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Sara
220
輪廻 ▹▸ gtus
※長い。いつも以上に長い(2万文字)
これはあるゲームの中のキャラクターのお話。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
また。
「ハッ、はは、」
「……うっしー、?」
まただ。
「…なんで、」
「なんでいなくなるの、?」
また、目の前で彼が亡くなった。
何度も。何度も繰り返して見たこの光景。慣れようとも慣れることができない、逃げることもできないこの状況。
だって、この世界は
違うルートを通ることを許さない
同じ輪廻を繰り返すしかできない
ゲームの世界なんだから。
「はい、これ宜しくね」
「!」
「あ、あぁ…__コイン頂くよ」
あぁ、
また戻ったんだ。
目の前にいる客の姿を見て理解する。
この村に。最初に。いつからそうだってわかったんだっけ。
そう、過去のことを思い出す。
確か、泣き叫ぶほど、喉が痛くなるほど、泣いて泣くだけの日々を過ごしていたら、いつの間にかここに立ってて…それで、理解ができなかったけど、その時は過去に戻ったとでも思ってた。だけど、俺は大してなにも変わったことをしていないのに、グループの中の1人が前と違う行動をしているのに気付いて、そこから…あまり見ることの無い空を見ていたら、夕焼けも夜空もなかったんだ。ずっと、ストーリーが進まない限り昼間だったからだ。そこから、色々探っている中、また初めにうっしーがいなくなって、また戻って。探ってる内に気付いた。この世界が “ ゲーム ” という世界の中なのだということに。
「……はぁ、」
もう何百回と繰り返したせいか、悲しみもどこか消えたような気がした。だけど、設定上話す言葉は決められていて、特に何も無い時だけ簡単な言葉だけ発せる。
「あ!ガッチマ〜ン」
「あぁ、どうした?キヨ」
「急なんだけどさ!俺んとこ来てくんない!?」
「俺んとこ?」
俺のパーティに、だろ。そんなんもうわかってる。知ってるんだよ。
「俺のパーティ!」
「えぇ、もうおじさんだし…なまっちゃってると思うけど」
「それでもガッチさんは俺より強いでしょ!?いーから入ってよ〜!あと1人で旅に出れんの!」
「俺よりいい人いるって」
「ヤダ!ガッチさんがいいの!レトさんも居るし知り合いなんだからいーでしょ!」
「えぇ…なら一旦メンバー紹介してよ。レトさんがいるとはいえ、パーティは最低4人。あと1人は?」
「うげ、連れてこねーとじゃん!連れてくっからちょっとまってて〜」
ここは俺が降参しなければ変わらない場面。これもゲーム上の設定で、進めるにはメンバーを全員連れて来てくれないと進まないのだ。キヨは俺と話したあと周りにいる市民の人達に躊躇なく話しかけているところから、今回はキヨが誰かに操作されているのだと分かる。
俺の知っている限り、キヨとレトさん…レトルトの2人のどちらかが見知らぬ誰かに操作される。時には2人が違う行動をすることもあるから、多分2人同時に操作されてる時もあるのだと思う。今回は1人。それが分かる訳は2人の場合、俺の所に2人で来るから。
ここで疑問に思うだろう。何故俺とうっしーは操作されないのか。それはストーリーで『牛沢とガッチマンをパーティに誘う』という初めの課題があるからだ。=、俺とうっしーはこのゲーム上のキャラに過ぎないということ。コントロールが効かないキャラなのだ。だからこそなのだろう。俺がうっしーに_
「ガッチさん!」
「あぁ、連れてきたの?」
「そう!コイツがレトさんで〜」
「コイツちゃうわ!ていうかガッチさんなら俺のこと知ってるやろ。ガッチさんが聞きたいのはこっちやこっち」
「んも〜面倒臭いな〜」
「面倒臭い言うんやない」
「あ、ども…牛沢です」
_恋に落ちたのは。
「…うん、牛沢くん。宜しくね」
「「!」」
「ガッチさん今よろしくって言った!?」
「えー?うん」
「な、なら…」
「いいよ、入ったげる」
「や、」
「「やったぁ〜!!!」」
キヨとレトさんの2人は片手を上げて思い切り喜んでいた。その2人を見て笑ううっしーに目を奪われる。
そしてまた、4人での旅が始まる。
「村長〜」
「おぉ、ぎょうさん人連れてどうしたんや?」
「いやぁ、」
「観覧版に困り事がありますという張り紙してたのを見まして。助けようと思って来たんです」
「あぁ!そういやそんな張り紙しとったわ。まぁ困り事言うてもすぐ終わることやと思うけど…」
「村長さんの助けになれるのならばなんでも大丈夫ですよ」
「ほんまですか。なら言葉に甘えて…」
まずは初めのタスクから。ここは俺が話す場面だから淡々と自分の仕事をこなしていく。あとはキヨ達に任せるだけだから特にすることはない。その間にこの世界について調べるのだ。
村長から依頼内容を聞くキヨ達を横目に、俺はそっとその場を離れる。
どうせ内容は知っている。
『 村の外れにある森。最近魔物が増えているから数体討伐してきて欲しい。帰りに薬草も取ってきてくれ。 』
__そんな、初めの1歩みたいな依頼だ。
「……また同じ」
小さく呟いて、村の広場へ視線を向ける。
相変わらず同じ位置でずっと同じ事で笑う商人。話し掛けても同じ言葉を繰り返す子供。同じ場所を回る様に歩く猫。
時間が進まない時、この世界は壊れたように同じ動きを繰り返す。
気味が悪いほどに。
「……今日は違うこと、あるかな」
何百回繰り返したかも分からない言葉を落としながら、観覧板へ近付く。1つの紙に目が留まる。以前は無かった紙。
__いや、違う。前にも一度だけあった。確か、83回目。
あの時は、
「……うっしーが、」
そこで言葉を止めた。考えたって仕方ない。
どうせまた
俺が守れるまで繰り返すだけなんだから。
「ガッチマン」
「!?」
「ぁ、すんません」
突然の呼び捨てに驚いて肩が跳ねる。その声の張本人は何とも思っていなさそうな顔で呼んだらしく俺の反応にすぐ謝ってくれた。
「あや…別に大丈夫だよ。急に呼ばれちゃったからびっくりしただけだよ」
「…あの、俺だけガッチマンって呼ぶのもちょっと嫌なんでほかの2人のようにガッチさんって呼んでもいいすか。あと敬語も外していいですか。慣れてないもんで…」
「え、っあ…うん!大丈夫だよ。じゃあ…俺も牛沢くんって呼ぶの辞めてうっしーって呼んでもいいかな」
「どうぞ」
相変わらず初めは無愛想な感じだな〜…
とキヨとレトルトの方に歩いていくうっしーを見ながら思う。気付けばまた、うっしーを目で追っていた。何度繰り返しても、俺は彼のことばかり考えてしまう。
俺はどこまで行ってもうっしーの事ばかり考えてしまうのだろうか。
「ガッチさ〜ん。行くよ〜!」
「はーい」
軽く返事をして3人の後を追う。
村の外れへ向かう道。舗装もされていない土道を歩きながら、キヨとレトさんは楽しそうに話していた。
「いや〜!やっと冒険始まるって感じだね!」
「さっきからお前だけテンション高すぎやろ」
「え?普通じゃない?」
「普通ではない」
そんな会話を聞きながら、俺は前方へ視線を向ける。
__あと少し進んだ所で、道が崩れている。
「そっち行かない方がいいよ」
「え?」
3人の足が止まる。
「え、なんで?」
「……崩れてるから」
言いながら、先に歩いて草木を避けてその先を見せる。そこには少しえぐれた地面があった。
「うわ、ほんまや」
「え、ガッチさんなんで分かったの!?」
「勘、かな」
適当に笑って誤魔化す。
本当は知っている。何度も、何度も歩いた道だから。何百回と見た道だから。
「……」
ふと、視線を感じて横を見る。少し後ろにはうっしーがじっとこちらを見ていた。鋭い目で、何かを不思議に思うような目だった。
「どうかした?」
「……いや」
それだけ言って視線を逸らされる。
相変わらず無愛想だな、なんて思いながらも、
勘がいい。
この頃から、うっしーだけは時々気付いたような目をする。
「ほら、行くよ〜!」
「はいはい」
キヨに呼ばれ、再び足を進める。そして森へ入って数分。ガサ、と横の草木が揺れた。
「っ、なんか居る!」
キヨの声と同時に影が飛び出す。出てきたのは狼のような魔物が3体。
__来た。
初戦闘。本来なら、ここは苦戦する場面。
「うお、まっ!?」
「キヨ下がって!」
レトさんが慌てて武器を構える中、1体が真っ直ぐうっしーへ飛び掛かった。
「っ!」
__また
またいなくなる。
そう思った瞬間、身体が勝手に動いた。
「うっしー!!」
気付けば前に出ていた。ガキン、と武器と狼の歯がぶつかる音。
「っ……ガッチさん?」
驚いた顔が見えた。
あぁ、居る。
まだ、生きてる。
「危ないから、下がってて」
自分でも分かるくらい、声が強張っていた。
「……」
後ろでうっしーが少しだけ眉を寄せる。
「え、ガッチさんめっちゃ強くない!?」 「おじさん言うてたやん……」
呑気な声が聞こえた。でも、そんなのどうでもよかった。今回こそ、
今度こそ
何度繰り返しても、何度俺が壊れても
絶対に守る。
そう決めたから。
「っ、ふぅ…」
「す、」
「?」
「す、っすげぇっ!!!」
「うわっ」
あぁ…そういや、この戦闘を1人でこなした後キヨに迫られたな…
そう思いながらキヨの興奮を宥める。レトさんとうっしーが迫ってこないのは剣士では無いという点。レトさんは魔法士、うっしーはある程度の剣のは使い方は分かるらしいが弓道士という職属性だから。
「今の何!?なんでそんな早く反応できたん!?てか武器いつ出したんだよ!いつの間に持ってた!?目で追えないくらい早かった!」
「ちょ、ちょっと…キヨ落ち着いて、」
横目でうっしーの姿を見る。怪我はパッと見無いようだった。その事実に声が漏れる。
「_よかった、」
「えっ、?」
「あっ、いや…皆無事でって意味ね」
その瞬間、うっしーの目が少し細くなった。その事に見て見ぬふりをして会話を続ける。
「…そんなうるさくしちゃったらまた魔物近付いてくるよ」
「あ、そっか…」
俺の言葉に理性を戻したのかすぐに落ち着いてくれた。
「村長は何匹くらい倒してくれたらいいって言ってたの?」
「んー、大体10匹よりは少ないくらいでって言ってたで。そんな労働させたないんやと思う」
「そっか。ならこの調子で行けそうだね」
「えぇ〜!俺らにも活躍させてよ〜」
「勿論そうしてもらわないと俺の体力も持たないよ」
「遠距離なら教えて。多分500mくらいなら外さないと思うから」
「ちょ、うっしーまで!?」
そんなこんなでまた再出発となり、木漏れ日の道を歩いていく。そんな中、隣から声が聞こえた。
「なんで俺が襲われるって分かったの?」
「えっ…いや、魔物がそっちに向かったのを見たから反射で…」
「…そう」
うっしーはあまり満足したような返事ではなかったけれど、上手く誤魔化せたようで良かった。
と、思っていた。だけれどあの目は何かを疑うような目だった。
暫くして大分進んだ頃、あまり魔物も現れることもなくなり村に戻ろうと来た道を戻るように歩いていた。そんな中、少しの物音が聞こえて俺が態勢を作る。他3人もすぐに構えるが特に大きなことはない。
「なんだ、びっくりした…」
「……待って」
「え?」
「…絶対いる、しかも大数」
まだ対した数を倒していないのにもう出てこないとは状況が張り紙と違いすぎる。そう違和感を持った俺はよく耳を澄ましていた。辺りを見渡すと太陽の光で少し光る目が数個あった。
「うわ゛っ!?」
横から葉が揺れる音がしたと同時にキヨの声が聞こえた。
「焦らないで。ゆっくりでいいから」
「う、うん…」
俺以外は初めての戦闘。何も分からない訳ではないだろうがここで怪我人を出すには行かない。すぐに慣れる訳でもないからサポートに回りながら戦闘することに決めた。その瞬間だった。
「っ!無理、!待っ_」
レトさんの声が後ろから聞こえ、その後になにか転けた音が聞こえた。
「い、っ…た、ぁ」
「っ!レトさ_っ、ちょこまかと、!」
音の方を見ると転けたようで中々立ち上がれないレトさんの姿があった。キヨもすぐに反応したようだったが目の前の魔物に苦戦しているようで助けには行けない様子だった。その視界の中で、レトさんに飛びかかる魔物の姿があった。
「レトルト!!!」
嫌だ。待って。
背筋が一気に凍る。
もう、誰も失いたくないのに。
でも、そんなことを思っていても俺には時間が足りなかった。目の前にいる敵、レトさんとの距離、そして視界を妨げるかのように目の前でうろうろとする魔物。それらのせいで俺には助けることが不可能だった。そんな時、あともう少しで襲われるというタイミングに矢が魔物の頭を貫いた。その矢は、レトさんよりも近い位置にいたうっしーが飛ばしたようだった。レトさんはそのお陰で助かった。だけれど、息付く間もなくうっしーを襲う魔物が飛んできた。
「っ!」
嫌だ!
嫌だ、辞めてくれ。
もうこれ以上、俺の大切な人を
その一心で、俺はうっしーの元に駆け寄り、うっしーの体全体を守るように抱きしめて背中に鋭い痛みが走る。
「っ゛ぁあ゛、!」
「ガッチさん!!!」
耳元に聞こえる大きなうっしーの声。背中が燃えるように熱い。呼吸も段々浅くなっていく。でも、そんなことより目の前のうっしーの姿を見て安堵してしまう。
「_」
良かった。
「…無事で、」
「は、?」
「ガッチさん!」
「!_キヨ!後ろ!」
「え!?わぁっ゛!?」
キヨが駆け寄ってくるのが見えて未だ魔物がいることに気付き、すぐに声を出す。キヨは咄嗟の判断ですぐに倒すことができたようだった。残りの魔物たちは『コイツらに勝つことができなさそうだ』とでも思ったのか逃げていった。
「ガッチさん、大丈夫?」
「あぁ、うん…大丈夫だよ。平気平気、ちょっと深く入っちゃっただけだし…」
「いやどこがなん!?」
「とりあえず、うっ_みんなは、大丈夫?」
「え、っ?あ…まぁ、捻ったけど俺は大丈夫やで」
「…俺もそんなに噛まれたとかないし…目立った怪我は無いよ」
「うっしー、は?」
「え、いや…ガッチさんが庇ってくれた、から…特には、」
「そ、っか…よかった、」
「ってそんなん今はいいの!先にガッチさん!せめて包帯、っ」
「ぁ、うん…」
話している途中でも、背中の熱は冷めることなくジクジクと何かを刺すような痛みが走り続ける。息も落ち着いてはいるものの浅いまま。意識も段々と遠のいていく。
「_チさん?」
「…うん、」
「待って、今飛ばないで、!お願い、!ねぇ、ガッチさん!」
「れ、レトさん…ヒールとか使えないの?」
「そんなん、こんなデカイ傷にしても意味ない、!」
「っ、ガッチさん!起きて!」
揺らされているのが分かる。だけれどどうにも返事も返せず意識が遠のいていくだけ。
「起きて、」
3人の声が聞こえる。
「ねぇ、おねがい、」
「起きてよガッチさん!ねぇってば!!!」
「ガッチさん、」
起きなきゃって分かってるのに、体が鉛になったみたいに重くて、動かなくて。
ごめん、
俺は、そのまま意識を飛ばしてしまった。
「ガッチさんってば!!!」
「ねぇ、ガッチさん!!」
キヨとレトルトの2人も、焦って名前を呼ぶだけになっている。すぐに応急処置をしなければいけないというのが頭では分かってる。分かっているけど、
「ガッチさん、!」
「おねがい、」
「起きてよ…」
必死になって動けない。
呼吸が浅い。
血も止まらない。
なんで、
なんで。
息が詰まる。
こんなのおかしい。
出会って、数時間の相手なのに。
なんで、
こんなにも
必死になってしまうんだろう。
なんでこんなにも
いなくなってしまうのが怖いんだろう。
「起きてってば!!!」
思わず強く肩を掴んで、大きな声を出してしまう。
「俺、まだ…何も返せていないのに、」
そんなことを呟いても、目の前の人は目を開けてくれない。
「畜生…もう起きてくんねぇ、」
「何か、何か…っ」
2人は焦ってパニックになっている。
「包帯、っ…止血しないと」
「うっしー?」
「血が減ったら危ない。まず押さえる、…たしか_」
自分の声が少し震えてる。
でも手は止まらない。
止まったら、
この人が本当にいなくなってしまう気がして。
もう二度と目を開けてくれない気がして。
「わかった、キヨくん、ガッチさんの体起こして」
「うん、」
今は、この人を助けることにしか頭がなかった。
「…一旦、雑だけど簡単に巻いたで」
「ありがと。次は移動したい、けど…」
段々日も暮れて辺りは暗くなっている。
「これじゃ村に戻るのも難しいだろ」
「…そう、なんだけど」
この人をどうにかしたい。だから正直に言えばすぐにでも村に帰って医者に見せたい。だけれどこんな暗くなった道を歩くとなると体力もそうだが他の魔物にも遭遇してしまうかもしれない。
「…こ、っち、」
「えっ、」
微かに下から声が聞こえた。
「ガッチさん!?」
もう意識はとっくのとうに失っていると思っていたのに。
「みぎ、いって…」
「わかった」
「うっしー!?」
ガッチさんの指示通り、右方向を確認してみると小さな小屋があった。
「小屋がある。とにかく早く行こう」
「わ、わかった…」
「って俺だけがガッチさん運ぶのかよ!」
「だって体力ないんやもん」
「うるせぇよ2人とも。魔物きたらどうすんだよ」
「……すんません」
大きい音は立てないように小屋へ足を進める。小屋に着いたら、すぐにベッドでもなんでも横になれる場所を探す。捨て小屋なのか所々木が腐っているがそこまで気にする程ではないようでガッチさんを横にする。
「2人は食料探してきて。俺は手当するから」
「分かった、もし起きたらすぐ呼んでや」
「…近くにいるんだったらな」
そう2人を見送ってすぐに手当に取り掛かる。ガッチさんの服を上だけ全て脱がせる。そこには、何も知らない俺にだけが驚きそうなものがあった。
「な、にこれ…」
傷を手当するだけのつもりだったのに、その周りには古傷だらけ。
刃物、
噛み跡、
焼け跡。
その他にも沢山の古傷があった。
普通じゃない。
「……なんで」
なんでこの人は、そこまで体を張って、自身を犠牲にして人を助ける?
余計、この人という者が分からなくなった気がした。
2人が帰ってきて、誰もが知っているような薬草があったと言われ水と混ぜてガッチさんに飲ませた。悪かった顔色も手当をしたおかげか随分と良くなっていたが、顔はずっと顰めたまま。きっとまだ傷が痛むのだろう。そう思っていた。
「_……嫌、いやだ…」
浅い呼吸のまま、寝言が聞こえた。
「…うっしー、」
「え、?」
「まだ、いかないで…」
「まだ……死なないで」
少しは騒がしかった部屋が、ガッチさんのその一言で一気に静まり返る。
「…なんで、うっしー?」
「分かんない、」
そう答えたはいいものの、何か分かる気がした。心臓が痛くなる程、頭に響く程鼓動が早くなっていた。
分からない。
なのに、何故か分かる気がするのはなんでなんだろう。
今日初めて出会った人。数時間前までは顔も知らない他人だった。
なのに、
俺を庇ったあの時の顔。
” 良かった “と安堵した声。
大きな怪我をしてまで俺を守ったこと。
そして今の、『 死なないで 』という寝言。
点と点が線になっていくように、気持ち悪い程に綺麗に繋がる。
「……なぁ、」
思わず、小さく声が漏れる。
「ガッチさん、てさ…」
「前から…俺の事知ってた?」
眠る彼の顔を見ながらそう言う。その顔はずっと変わらず顰めたまま。
「「え?」」
キヨとレトルトは2人して顔を見た。
「いや、だっておかしいじゃん…」
「何が、」
「道が崩れてることも知ってたし、魔物が出る場所も、タイミングも知ってた」
「……俺が、襲われるのも」
「知らないにしては、偶然にしては…出来すぎてる」
「……考えすぎちゃう?」
最初に口を開いたのはレトルトだった。
「たまたま勘が良かっただけかもしれへんし。強い人ってそういうの分かるんちゃう?」
「いやでも流石におかしくね!?」
キヨが腕を組みながらガッチさんを見る。
「俺もさ、ちょっと思った。あの反応速度、普通じゃないし」
「それに……」
俺は視線を眠るガッチさんの背中へ向く。包帯の隙間から覗く、無数の傷跡。
「こんな怪我してんのも、おかしいじゃん」
静かな部屋にぽつりと落ちる。
「……まるで」
少しだけ言葉に迷う。
怖いのに、 聞きたくないのに、 知りたい。
「何回も、死にかけてるみたい…で、」
その瞬間、
「っ、やめ……!」
小さな声が静かな部屋に響いた。3人が一斉に顔を上げた。ベッドの上で、ガッチさんの指先が微かに震えていた。
「うっしー、にげ…」
呼吸は浅いまま。苦しそうに眉を寄せながら、
「今度こそ、守るから……」
それだけを言ってまた眠りについた。
「…今度こそ、って」
「もう既にあんな怪我してるのによう言うな」
「…ガッチさん、絶対なにか秘密隠してる」
「…それは、そうだと思う、けど」
「……とりま、今日は寝ん?もう…いい時間ではあるし、」
「…分かった、俺はここで寝るから…2人は違うとこで寝てて」
「え、いや…手当してもらったんやから俺が、」
「まだ調べたいことがあんの。いいでしょ?」
「…わかったよ、でもちゃんと寝てよ」
「…わかってるよ」
2人の寝息が聞こえ始めた頃。小屋の中は静かだった。木が軋む音と、外の風の音だけが耳に入る。
「……」
眠れない。というより、寝る気になれない。目の前には苦しそうに呼吸をするガッチさん。時折、浅く眉を寄せて、
「……だめ、」
なんて寝言を漏らしている。その姿を見る度、胸の奥がざわつく。
「……何なんだよ、あんた」
ぽつりと漏れる。出会って数時間。それなのに、どうしてこんなに放っておけないんだろう。ふと、視線が横へ向く。床に置かれた、ガッチさんの荷物。
軽くなく、相当使わないと慣れないくらいの重さの剣。 使い込まれた古めのポーチ。 そして、少し古びた手帳。
「……」
勝手に見るのはどうなんだ。そう思う。思うのに、手が止まらない。手帳を開くと雑な文字がびっしりと並んでいた。
『83回目。今回は2回目の仕事で失った。』
失った?何を?それに、83回目って何だよ。
疑問が溢れ出して止まることを知らないかのように沢山出てきてしまう。それでも、読む目は止まることを知らないかのように次々と頭に内容が入ってくる。
『119回目。あともう少しだったのに、最後の戦闘で失った。』
『…今回も、また守れなかった』
「は?」
その次の文章には、見慣れた自分の名前が書かれていた。
『次こそは、うっしーを守り抜く。その気持ちは一生変えない』
「…うっしー、?」
突然の声に肩が跳ねる。視界を手帳から声のしたガッチさんの方を見ると寝ぼけ眼で俺を見つめる目と目が合った。その顔は熱に浮かされたような顔だった。なのに俺の顔を見た瞬間、すぐに安心したように笑って
「…よかったぁ、」
小さく、息を吐く声が聞こえた。
「今回も、生きてる…」
「…は、」
俺に確信させるような言葉を発した後、すぐにガッチさんは眠りについた。
「……俺が、何回も死んでるってこと、かよ…?」
だけど、分かったとしてもその内容が理解出来ずただただ頭を抱えるしか無かった。意味がわからない。分かるはずがない。だって、
” 何回も死んでる “
なんて事、そんなことあるわけが無いだろう。
「…夢、?」
ぽつりと確かめるように言う。だけど辺りを見渡しても全ては現実のもの。手にある手帳の重さも、包帯越しに見える古傷も、苦しそうな顔をしながら寝ているガッチさんも。全てが物語っているようだった。
視線がまた下の手帳に落ちる。これ以上見るべきではないと分かっている。でも、知らないままの方が怖かった。そっと震える手でページを捲る。
『148回目。今回は普段あまり笑ってくれないのによく笑ってくれた気がする。距離が縮まった気がした。』
「……は?」
『でも、1番笑ってくれた日の次の日に、結局失った。』
息が止まる。
また。
『151回目。初めて名前をしっかり呼んでくれた。嬉しかった。けど怪我が悪化したせいで失った。』
また、
『157回目。庇えたけれど、結果は俺が死んだ。』
「……死……?は、?」
『でも、うっしーが生きてるなら、良かったのかも。でもまた戻った』
戻ってる…?
指先が震えたまま止まらない。ページを捲る度に見える
” 失った “
” 守れなかった “
” また “
” 次こそ “
” 絶対諦めない “
そんな言葉ばかり並んでいた。
何度も、何度も何度も…まるで同じ人生を何百回と繰り返しているような、 固い意思が残っている日記。
「…?」
最後のページ近くで手が止まる。今のところ、最後の日記。
『今回こそ、守る。もしバレたとしても、うっしーが生きてくれるなら。もう、うっしーを失うのが嫌だ。』
「っ……」
その言葉に胸が苦しくなる。なんで、なんで出会って間もない人をこんなにも守ってくれるのか、分かった気がした。
ここまで想われていることが分かって、恥ずかしさと苦しさが混じる。
「…ばかじゃん」
そんなに本気になって、俺を守るだなんて。
その時、微かな声がまた聞こえた。
「……さむぃ、」
「…ほんとバカじゃん、」
小さく笑いが溢れそうになる。でも、その奥が少し痛かった。こんなんになるまで、何度も1人で繰り返して。
「…ちゃんと頼れっての」
ガッチさんに掛ける為の毛布を探しに腰を上げて部屋を出ようとする。その瞬間、ガッチさんの声が聞こえる。
「うっしぃ…?」
「…なに?」
「どこいくの、?」
「毛布とか、探しに行く」
「なんで、?」
「ガッチさんが寒いって言ったからでしょ」
「いい、いらない…」
「寒いんでしょ?風邪引くよ?」
「うっしーがいなくなるよりいいから、おねがい…」
「…はぁ、わかったよ。ここにいる」
そう言ってベッドの横に座り直す。すると手に温もりを感じた。
「……は?」
服の袖が軽く引かれた。視線を落とせば、熱で赤くなった顔のまま、ガッチさんが弱く服を掴んでいた。
「いか、ないで…」
掠れた声。まるで、確認するみたいに。
「……また、いなくなんないで、」
「……」
胸が変に苦しくなる。
何回。
何回、俺がいなくなったんだ。
どれだけ、この人をひとりにしたんだ。
「……行かねぇよ」
気付けば、そんな言葉が出ていた。
「…少なくとも今は、ちゃんと居る」
すると少しだけ力が抜けて、
「……そっか」
安心したように、小さく笑う。安心したようでゆっくりと瞼を下ろして眠りにつく。何度この人は起きて寝たら気が済むんだと思うもなんだか馬鹿らしくなって考えるのをやめた。そして、俺も安心してしまったのか、ガッチさんの手を握りながら眠りについてしまった。
薄く差し込む朝日。小鳥のさえずりと、窓の隙間から入る冷たい風でゆっくり目が覚める。
「……ん、」
最初に感じたのは、手に感じる妙な重さだった。
「……?」
ぼやけた視界を擦りながら下を見る。そこには、自分の手を握ったまま眠るうっしーの姿があった。
「……え、」
一瞬、思考が止まる。
なんで。
なんで、うっしーがこんな近くに。
というか、
「……生きてる、」
ぽつりと声が漏れた。
生きてる。
ちゃんと居る。
昨日、守れたんだ。
安堵が一気に押し寄せる。涙が出そうになってぐっとこらえる。でも起き上がった瞬間、
「っ、い゛っ……!?」
背中に激痛が走った。
「ガッチさん?」
ぴくりと肩が動いたことで、うっしーが目を覚ます。寝起きなのに、すぐ顔を覗き込んでくる。
「大丈夫か?」
「えっ、!?あ……うん、大丈夫…だよ?」
反射で笑う。
いつものように。
何も無かったみたいに。
「昨日はごめんねぇ、迷惑掛けちゃった」
そう言ってベッドから起き上がろうとする。でも、うっしーの手が近付いてきて
「無理すんな」
肩を押さえられて、止められた。少し低い声。昨日までより、どこか距離の近い声音。
「……」
なんだろう。変だ。うっしーの空気が少し違う。
そう疑問を抱いた瞬間だった。
「……ガッチさん」
名前を呼ばれる。その声に、なんとなく嫌な予感がした。
「な、何、?」
「聞きたいことがある」
真っ直ぐな目。鋭いいつもの目で、逃げられない、と思った。
「なんで、そんなにも俺を守ろうとしてくれんの?」
「え、えぇ…?」
「それと、『 死なないで 』…って、なに」
「……え?」
突然の言葉に、声が出ない。
そんなの、零した記憶もないのに。
「昨日、俺を庇って貴方は意識を失った。その時に、悪夢に魘されるようにそんな言葉を発したんだよ。それに、他の2人の名前は出さずに、俺だけを呼んで」
「…」
いつか、バレることは正直分かっていた。
「なんで、なんで…そんなにも自身を犠牲にしてまで俺を守ろうとしてくれるんだよ、っ」
言葉にショックを受けていたら、目の前の彼はボロボロと大粒の涙を流していた。
「!?」
「もっと、もっとガッチさんは自分を大切にしてよ、っ」
「そ、れは…」
「もう俺の運命が分かってるみたいに行動しないでよっ、」
「っ!」
バレてた。いつから?
「何回、何回繰り返してんだよ、俺のためにってずっと繰り返すんじゃねぇよ…」
掠れた声。泣きながら怒るみたいに、震えた声で言われる。
「……」
もう、隠せない。ここまで知られてしまったなら。言った方が、うっしーはすぐに飲んでくれる。
「……言うつもり、なかったんだけどなぁ」
ぽつりと零す。
「なに、なんだよ」
涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、うっしーが俺を睨むように見る。その顔を見て、少しだけ困ったように笑ってしまった。
「……好きだから、だよ」
「……は?」
「うっしーのこと、好きなの」
小さく息を吐く。もう誤魔化せない。
「好きだから、何回でも繰り返してる」
「っ……」
「だって、目の前で死ぬんだもん」
その言葉だけ、少し震えた。
「何回も。何回も」
笑おうとしたのに、うまく笑えない。
「最初は、助けられなかったのが嫌だっただけなんだよ?」
「でも、繰り返してるうちにさ」
目を伏せる。
「うっしーが笑ってくれた、とか、ちょっと話してくれた、とか、名前呼んでくれた、とか」
「そういうの、そういうのだけでも嬉しくなっちゃって」
「気付いたら、好きになってたんだ」
静かな部屋。風の音だけが聞こえる。
「だから、ごめんね」
「……自分より、うっしー優先になっちゃった」
静かな時間が流れる。うっしーの鼻をすする音だけがこの部屋に響く。何も言わないうっしーに、やっぱり引かれたかな、なんて思った時。
「……っ」
うっしーの顔が突然上がり、そしてすぐに頬を捕まれぐしゃ、と顔が歪んだ。
「ふっざけんなバーカ!!!!!」
「!?!?」
今までで聞いた事のないくらい大きなうっしーの声に肩が跳ねる。
「何百回も繰り返して!?勝手に傷だらけになって!?好きだからって何だよ!!」
「う、うっしー…」
「そんな理由で死ぬな!!そんな理由だけで体張るなよ!!!」
ぼろぼろとうっしーの目から涙が落ちる。なのに、怒ってる。子供みたいに。
「俺が死ぬのが嫌なら、お前も死にかけんなバカ!!!」
「…」
「置いてかれる辛さを知ってんだったら、俺を置いてくなよ!!!」
「っ、!」
「そんなの、」
息を詰まらせる。うっしーはただ俺を怒るために声をあげる。それが、嬉しいのに何故か辛くて、苦しい。
「そんなの……知らされたこっちが、嫌だろ…」
うっしーの声が弱くなる。
「……そんな顔で、好きとか言われたら」
「放っとけねぇじゃんかぁ…」
「っ〜!」
息が詰まる。大切な人を失いたくなかった。それだけの気持ちでもう何百回と繰り返してきた。だけど、その結果は彼を泣かせてしまった。その事実に、胸が酷く痛む。鼻の奥もツンと痛み、熱が集まる。視界も段々ぼやけていることから、泣きそうなことが分かってしまう。俺が泣く資格なんてないというのに。ずっと、堪えれていたというのに。
「……ぇ、」
ぽたりと、1つの雫が俺の目から零れ落ちる。頬を伝った冷たい水の感覚に俺まで驚いてしまう。
「…あ、れ、ぇ…?」
なんで。
今まで嫌という程、指なんかじゃ数え切れない程繰り返したのに。
その度に失って、 その度に戻って、
1人で抱えてきたのに。
なんで、今になって_
「ガッチさん…泣いてるの、?」
うっしーの優しい声に、溢れ返らないよう留めておいた鎖のようなものが崩れた気がした。そのせいか、震えた声が勝手に出てしまった。
「…俺、だって…」
呼吸が上手く出来ない。
「俺だって、!」
「ガッチさん?」
「怖かった、んだよ…」
その一言で、空気が止まる。
「次こそ、戻れないかも…とか、」
「もう、一生守れないのかも、とか」
「次も、居なくなっちゃうのかも、とかさ…」
「そういうの、考えたらキリがなくて…」
「毎回、毎回……っ」
声が震える。
「目の前で、うっしーが死ぬの、見んの…もう嫌だった…」
ぽろぽろ涙が零れる。格好悪い。こんなの見せるつもりじゃなかった。
なのに止まらない。
「だから…俺が死ぬ方が、マシだった…」
「俺なら戻れるからって、思ってた」
「だから、っ……」
震える手で顔を隠そうとした瞬間。
「……バカ」
そんな弱い言葉が聞こえながら、ぐい、と手首を掴まれる。
「そういうの、1人で抱えんなって言ってんの」
泣きそうな顔のまま、うっしーが睨む。でもその目は、少しだけ柔らかい。
「……俺にも、背負わせろよ」
「っ゛…!」
コイツは何度俺を泣かせたら気が済むんだろう。でも、それよりも、うっしーの言葉に言葉が詰まる。
背負うって何を?
守る?誰を?
こんな、終わりがないものを背負うって言うのか?バカにも程がある。
「なに、言ってんの?そんなん…うっしーには何も、」
「そんなことわかってる。戻れるのはガッチさんだけ。俺には出来ることが無いかもしれない。それでも、俺は…俺は!」
「 ガッチさんを守りたいんだよ!!! 」
うっしーは鼻をすすりながら、ぐしゃぐしゃの顔のまま言葉を続ける。
「何百回とか、ゲームとか、戻るとか、正直まだ意味分かってない!」
「でも、」
掴んだ手首に、少しだけ力が入る。
「ガッチさんが、1人で苦しんでたってことだけは俺にだって分かる!」
「……」
「それなのに、また1人で何とかしようとしてさ」
「勝手に俺守って」
「勝手に死にかけて」
「……マジでムカつく」
そう言いながらも、うっしーの声は少し震えていた。
「なのに、それなのに…」
少し視線を逸らして、小さく続ける。
「…どうやっても、放っとけないんだよ」
「っ……」
また、胸が苦しくなる。
どうして、どうして俺に対して…
こんなにも優しいんだろう。
「だから、一旦」
うっしーが深く息を吐く。
「時間をくれ」
「……時間?」
「ガッチさんが傷を治す間」
少し言葉を探すように黙って、大きく息を吸う。
「俺、自分で強くなる」
「え、」
「もう守られるだけなのは嫌なんだよ」
真っ直ぐ目が合う。逃げ場がないくらい、真っ直ぐ。
「次、また同じこと起きた時」
「次、ガッチさんに危険が及んだ時」
「今度は俺が守れるようになる」
「……うっしー、」
「だから」
少しだけ眉を寄せて、
「勝手に1人で死ぬな」
その時。
ガタガタッ
「うわっ!」
「ちょっ!痛い!」
ドアの向こうから物音ともにこの場にはいないはずの2人の声が聞こえて、涙が引っ込む。
「……何してんの?2人共」
「「…あ、」」
うっしーはドアの方に近付き、開ける。
「……」
「……」
「……」
そこには、めちゃくちゃ気まずそうな顔したキヨとレトルト。
「……え、っと」
キヨが手を挙げる。
「俺ら、起きてた」
「…あ、うん……」
「……いつから?」
うっしーの低い声が小屋に響く。
「『ふっざけんなバーカ!!!!!』くらいから」
「ほぼ最初じゃん…」
「はぁ〜〜!?!?」
うっしーが頭抱える。
「盗み聞きしてんじゃねぇよ!!」
「いや声デカすぎんだって!!!」
「小屋中響いてたで!?」
「あとガッチさん、」
少しの言い合いを挟んだ後、レトさんが少し真面目な顔になる。
「今後1人で抱え込むん禁止な?」
「……え」
「俺ら、仲間なんやろ?」
キヨも腕組みして頷く。
「そーそー!ていうか俺、普通に怒ってるからね!?」
「ガッチさんが勝手に何百回も苦しんでたの」
「相談しろよ!!」
「え、いや……えぇ、?」
なんでこんなに俺が責められてんの、?
「…でも、」
「でもとかじゃない!俺ら4人でパーティなんだから!軽い悩み事でも、重い悩み事でも…ちゃんと言えっての!」
「…俺が、自分のこと守れてたらそんなことなってないよ」
「ちょっ、も〜!うっしーはうっしーでそんなこと言わんの!」
「俺がガッチさんのこと守れてたら、こんな大怪我しなかったじゃん!」
「それがムカつくって言ってんの!分かる!?」
「…」
「” 4人で “…のパーティなんやから」
その言葉に、喉が詰まる。
1人で抱えるのが当たり前だった。
1人で守るのが当たり前だった。
だって、どうせ誰も知らない。 どうせ誰も分からない。
そう思っていたのに。
「……っ、」
言葉にならない。ただ、熱くなる視界だけが酷くて。
4人。仲間。パーティ。そんなのずっとあったこと。
でも、今までは全部自分しか背負っていなかった。
だから、誰にも言えなかった。頼ることができなかった。理解して貰えないとも思ったし、言ってしまえばこの世界が崩壊してしまいそうで。怖かった。
だから、全部1人で抱え込むしか無かった。
「……でも、それでも…」
「怖いもんは怖いんだよ、」
俺の小さく弱い声に3人は顔をあげる。
「…知らない終わり方をしたら、とか」
「今度こそ、戻れなくなったら…とか」
「うっしーが…3人が、また目の前で……_思ったら怖くて…」
「慣れてもくれなくて、」
もう、言いたくもない。
あの3人の最期も、自身の最期も。
何回も目の当たりにした最期のことを。
「……もう、嫌でしかないんだよ、」
視界はずっとぼやけたまま、足元は小さな雫の後が残る。
「…守れないことが、」
その言葉を言い終わった瞬間、すぐに頭に重さを感じたと思えばぐしゃぐしゃとかき混ぜるかのように乱暴に撫でてくる手があった。
「うわっ、」
「そんなもん、慣れねぇし怖いに決まってんだろ!」
声はキヨだった。いつもの軽いお調子者の声。なのに、どこか重さがあるように感じて。少し優しくも感じた。
「でもさ?」
キヨは俺の目の前にしゃがみ込む。
「今回、は違うっしょ?」
「え、?」
「皆、ガッチさんの事情を知ってる」
その言葉に顔をあげると目が合ったレトさんも頷いていた。
「知らんまま死ぬんと知ってるから対策出来るの違いはちゃうやろ」
「だからさ!」
空気を変えるように、キヨがぱんっと手を叩く。
「一旦!休養!!!」
「は?」
「ガッチさん重傷!以上!」
「いやでも、」
「でもじゃない!」
キヨがびしっと俺に向けて指を差す。
「うっしーも強くなりたいんでしょ?」 「……まぁ」
「じゃあ1週間!修行期間!」
「急やなぁ」
レトルトが苦笑する。
「でも、ええかもな。ガッチさんもその傷じゃまともに動けんやろ」
「っ……」
反論しようとして、言葉が止まる。その瞬間。
「分かった」
うっしーが真っ直ぐ見る。
「その代わり」
少し眉を寄せて、
「勝手に無理したら、今度こそ本気で怒る」
「……ぇ」
「もう、1人で抱えんな」
その言葉に、何故か少しだけ。
肩の力が抜けた気がした。
__今回は、少しだけ違うのかもしれない。
「…分かったよ。降参。とりあえず村に帰ろう」
「おし!ガッチさんはゆっくり歩いてくれよな。俺らは時々変わってガッチさんの介護に回るから!」
「か、介護って…言い方他になかったぁ…?」
少しだけ空気が軽くなる。昨日まで死にかけていたとは思えないくらい、いつものようなやり取り。
……少しだけ、安心した。
こんな時間も、あったんだ。
小屋を出て、森の中を歩き始めて少し。
「……こっち」
ぽつり、とキヨが口を開く。
「え?」
キヨの指差す先は、森の奥。昨日通った道とは真逆だった。
「いや、村あっちやろ?」
レトさんが首を傾げる。でも、キヨは何故か表情を変えない。
「……こっちに行こ」
「なんで?」
うっしーが少し眉を寄せる。
「多分、まだ安全だから」
その言葉に、空気が止まった。
「……え?」
” 安全 “
その言い方。
「…はじ、まったかも」
「え、?」
「操作……始まった、のかも」
うっしーが振り返る。その横で、キヨは無表情のまま森の奥を見ていた。
「……こっち」
「嫌だ。村に戻る」
うっしーは即答で返す。空気が少し張る。
「キヨ、そっちは_」
「なんで?」
「……だって」
少し間が空き、そして、うっしーがぽつりと続ける。
「ガ◇?さんが、こっちって言ってた」
「……は?」
一瞬、全員が固まる。
「え、今なんて?」
レトさんが眉を寄せる。
「ガ54:さ$がこっち、って…」
「…なんで、」
「…妨害だからだよ」
「え、?」
「…その世界はキヨが中心となって生きてる。だからキヨの選択通りにならないと、何も変わらない…」
「そ、んな…っ!すぐにでも村に行って診てもらわないとなのに!?」
「……無理、だと思う」
「え?」
俺は小さく目を伏せる。
「キヨが、動き出したら……大体こうなる」
「……は?」
「止めても、流れが変わんないんだよ」
掠れた声。
「俺が、何回も見てきたから」
「っ……」
「無理に逆らうと、もっと酷い方向に行く」
「…なら、」
ずっと無言だったうっしーが口を開いた。
「俺がガッチさんを帰す。だから、レトルトはキヨを見ててくれ」
「ぇ、っ…で、でも」
「ぇ、っ…でも」
「……お願い」
珍しく、うっしーが少しだけ弱い声を出す。
「キヨ、今変だろ」
「……」
キヨはうっしーの言葉が聞こえていないとでも言うような顔をしたままだった。
「1人にしたくない」
その一言で、レトさんの顔が少し変わる。
「……わかった」
レトさんは難しそうな顔をしながら、渋々キヨに着いていくことになった。
「…行こ、レトさん」
「ぁ、うん……」
「…レトさん、キヨのこと、目離さないで」
「え、」
レトさんにだけ聞こえるような声量で、少し引き留める。
「操作…強い時のキヨ……何するか分かんないから、」
「は、?」
それだけを言い残して、キヨとレトさんの姿は森の中に消えていった。
「…ガッチさん、?」
「あぁ、ごめんね。早く帰ろう」
「…慣れてんじゃねぇっての」
「え、?」
「別に。ガッチさんにキレてただけ」
「え、なん、?」
「ほら、行こ」
「何にキレてたのかだけは教えて!?」
「……」
うっしーは少し前を歩いたまま、返事をしない。ただただ森の中を歩いていく。枝を踏む音だけが静かに響く。
「う、うっしー?」
「……慣れてる顔してたから」
その声は小さい声だった。
「え?」
「” こうなる “って顔してた」
足を止めず、でも少しだけ声が硬い。
「キヨが操作されるのも」
「レトさんと離れるのも」
「自分が怪我してるのも」
「全部、”いつものこと”みたいな顔してた」
「……っ」
言葉が詰まる。だって、実際そうなのだから。何百回も繰り返した。 慣れたくなくても、対処法だけは増えていった。
「……慣れた、って訳じゃないよ」
やっと絞り出した声は、小さい。
「怖いし、嫌だし……毎回、やだって思ってる」
「じゃあ頼れよ」
即答だった。うっしーが振り返る。少し怒った顔。 でも、その奥に泣きそうな色。
「また1人で抱え込んで、” 仕方ない “みたいな顔すんな」
「……」
「俺、さっき言ったよな」
少しだけ歩幅を緩めて、隣に来る。
「背負わせろって」
「うっしー……」
「あと」
少し気まずそうに視線を逸らす。
「……好きとか言っといて、勝手に離れんな」
「っ、」
「責任、取れよ」
「……えぇ?」
思わず変な声が出る。すると、うっしーは耳を少し赤くしながら睨んだ。
「なんだよ!!」
「いや、だってぇ……」
「笑うな!!」
「笑ってないよぉ!」
「……俺、放っとけねぇって言ったろ」
その声だけ少し弱い。
「だから、ちゃんと隣いろ」
「っ……」
心臓が、痛いくらい鳴る。何百回も繰り返したのに。こんな未来、知らない。
でも、
――悪くない、かもしれない。
そう、微かに思ってしまった。
「あぁっ!帰ってきた!」
「うわっ、と…そ、村長さん?」
「よかった、良かったよ…生きてて、」
「……」
そうだ。俺達は1日間この村に姿を現さなかった。ただ数体倒すだけで済む仕事なのだから、その日のうちに帰れた。でも、この傷のせいで…
「村長さん。この村に病院はありませんか」
「病院?誰か怪我…_」
「ぁ、」
俺にハグをしてくれた村長さんの手には俺の血がべっとりと付いていた。
「うわぁっ!?」
「とりあえず、容態を軽く言うと深めに傷が入ってしまったんです。大きくなくてもいいので近くに_」
「あぁ、勿論案内する。こっちだ」
うっしーが俺を置いてけぼりにするかのように村長さんに話してくれたおかげで、すぐに手当をしてもらえることになった。
「中級ポーションを飲めば大体1週間…長くて1週間半で治ります」
「ありがとうございます、」
病態という訳では無いため、薬ではなくポーションを渡され村長さんに用意された部屋に向かった。
「はぁっ、」
今日はクタクタだ。うっしーと村長さんは沢山心配してくれたおかげで色々ものが増えた。
「こんなもん絶対いらないだろって思うんだけどな」
明らかにおもちゃみたいなものも紛れて入っている。
「ガッチさん」
「ぁ、どうしたの?」
ドア越しに聞こえてきたうっしーの声に少し驚きながら返事を返す。
「…2人共、帰ってきたよ」
「そ、そっか…よかった」
操作されているとはいえ村には帰らず違う仕事をしているかもしれないと不安になっていたが今回はそんなこともなく帰ってきたようだった。
「…でも、」
「ぇ、?」
「……キヨが、重症、で」
その言葉に頭を殴られたような気がした。
おれが、俺が止めれなかったから_
「…ごめん、俺が」
「違う」
「っ!?れ、レトさん、?」
「俺が、しっかり止めんかったんや」
「そんなの違う!」
「お前ら1回止まれ」
うっしーの言葉に俺もレトさんも口を閉じる。
「キヨは魔物の攻撃のせいで暫くの間は熱が下がんない。その間にガッチさんは休んでて」
「で、でも」
「それが嫌ならせめてキヨの面倒見てて」
「……わかったよ」
「俺とレトルトはその間夜以外は出来る仕事をしてくる」
「そ、っ!んな…それはダメ_」
「俺だって強くなりたい」
「俺も…もう皆が傷ついてる所見た無い」
「だから、止められても行く」
「そっ、んなのダメ!俺が許さ_」
「許してくれなくたっていい。守られてるだけは嫌だ。俺は強くなりたい」
「っ、」
「俺も、もう皆が傷付いとるとこ見たくない」
「…」
その2人の言葉に俺は何も言えなくなる。俺だってそうだったから。俺だってずっとその繰り返しだったから。
「だから俺らのこと信じて待ってて」
「え、?」
「俺の事も、レトルトの事もキヨの事も」
「ちゃんと帰ってくるって信じてろ」
真っ直ぐな声が扉越しでも部屋に響く。
「…分かったよ、」
真っ直ぐな意志をしっかりと伝わってしまったせいで、降参せざるを得なくなってしまった。
「じゃあ、行ってくる」
「…うん」
翌日。2人はすぐに仕事を見つけてきたらしく朝早くから出発するらしい。
「ガッチさん、安静にしててよ」
「…分かってる」
「キヨくんのとこ行ったり来たりしそうやから同部屋にしてもらったんやから」
「…承知しております」
「夕方には帰ってくるから。晩飯もなんか買ってくる」
「うん、」
「「行ってきます」」
「行ってらっしゃい」
扉が閉まる音。
「……行った、かな」
キヨの吐息の音が残る静かになった部屋に、ぽつりと声が落ちる。
なんだろう、妙に落ち着かない。昨日まで、ずっと一緒に居たからか。 それとも…
頭の中に、昨日の言葉が浮かぶ。
『ガッチさんを守りたいんだよ!!!』
「っ……」
思い出して、1人で変な顔になる。口角が上がってしまって元に戻らない。
「いや、なんだよあれ……」
守りたい、って言われた。 しかもあんな顔で。 泣きながら。怒りながら。
「……そんなの、恥ずかしくなるに決まってんじゃんか、」
耳が熱い。でも。
『ちゃんと隣いろ』
あの言葉も、ずっと引っかかってる。
「……責任取れよ、って何だよ」
小さく笑いそうになった瞬間。
「……うぅ、」
隣のベッドから苦しそうな声が耳を通る。
「キヨ?」
慌てて近寄ると、熱に浮かされた顔のキヨが浅く息をしていた。
「あつ…ぃ…」
「大丈夫か?」
キヨの額に触れる。その額は熱くて手が溶けそうな程熱は上がっていた。
「……れとさん、?」
ぼんやりとした目がこちらに向く。髪色でそう思ったのか。それとも言動でなのかは分からないが真っ先に飛んできた言葉はその言葉だった。
「いや、俺だよ。ガッチマン」
「……あれ」
話し方からして熱で頭回ってないようだ。
「れとさんは、?うっしーも…どこ、?」
「お仕事」
「……そっかぁ」
しゅん、とした顔。その顔が少し珍しくて、俺は思わず笑ってしまう。
流石最年少ってとこかな。
「心配?」
「……だって、うっしーも…むちゃするでしょ、?」
「ガッチさんと、にてるし…」
「……え?」
その言葉に少しだけ、胸が詰まる。改めてキヨは俺達のことをちゃんと見てたんだな、と実感した。
「……ちゃんと、かえってくるかな」
熱に浮かされた声。少しだけ不安そうな顔。
「帰ってくるよ」
気付けば、俺は口を開いてそう言っていた。
「うっしーも、レトさんも…ちゃんと帰ってくる」
「……ガッチさん、なんでそんな言い切れんの」
「だって」
少しだけ笑う。
「信じてろって、言われたからさ」
「……ふは」
キヨが小さく笑う。馬鹿みたいと言うような顔で。
「なにそれ、恋人みたい」
「っ!?!?ち、違っ……」
反射で否定しかけて、止まる。反射で昨日のことを思い出してしまったのだ。
『俺だって強くなりたい』
『ちゃんと隣いろ』
『責任取れよ』
「……ぁ、」
顔が熱い。火照てしまう程顔全体が熱くなる。
「……あ、やっぱなんかあったんだ…」
「うるさい、寝てなよ」
「ずぼしなんだ〜」
熱で弱ってるくせに、妙に楽しそうに笑うキヨ。それがなんだかいい事なのに軽くイラッときて強めに水で濡らしたタオルを頭に落とした。
その日から昼はキヨの看病。 夜は帰ってきた2人と、その日の報告の日々が続いた。少しずつ熱が下がるキヨ。 少しずつ増える、うっしー達の戦果。
「今日、1人で倒せたんだよね」
「すごいじゃん!」
「でもコイツすっごい前行くから危なかったんやで」
「おい」
そんな会話が増えて。
そして気付けば、1週間が経っていた。
1週間後
俺は傷も少しずつ塞がって、歩けるくらいには回復した。
うっしーはその間、レトさんと一緒に依頼や仕事に取り組みこなしていた。正直、危なっかしかった。何度も止めたかった。でも、
『守られるだけなの嫌なんだよ』
そう言われたら、止められなかった。そして久しぶりに4人で依頼を終えた帰り道。前の2人は楽しそうに話しているのを横目にうっしーとの会話を楽しむ。
「……なぁ、ガッチさん」
隣を歩いてたうっしーが、不意に足を止める。
「ん、どした?」
少しだけ言いにくそうに視線を逸らして、
「……確認、なんだけど」
「まだ、好き?」
「……え?」
一瞬、時間が止まる。
「いや、だって……勢いだったかもしんないし…何百回も繰り返してた時の気持ちかもしんないし」
うっしーの耳が少し赤い。恥ずかしながら話してるんだ。
「今のガッチさんの気持ち、ちゃんと聞きたい」
その瞬間、鼻の奥がツンとして何故か、泣きそうになる。
何百回繰り返しても
守ることばかり考えて
隣に居る未来なんて、
本当は
とうの昔に諦めてた。
なのに今、その諦めた運命が目の前にある。
「……好きだよ」
小さく、でも迷わず言う。
「何回繰り返しても、きっとうっしーの事を好きになる」
「何度だって、諦めなかったんだから」
「っ……」
うっしーが顔を逸らす。照れて俺の顔見れないのかな。可愛い。
「……じゃあさ」
少しだけ間を挟んでうっしーは話し出した。
「 俺も、好きになっていい? 」
「……ぇ」
「正直、まだ整理ついてないよ。でも、放っとけないし…ガッチさんが傷だらけになるの、もう見たくない」
うっしーは俺の方を見て少し笑みを零した。
「だから、隣で見張る…って言い方悪いか、その……付き合いますか、」
不器用な言葉でも、それさえも愛おしくて思わず抱き締めてしまった。
「え、っえぇ、?」
「うっしーさ、前『責任取れ』みたいなこと言ったよね」
「え、あぁ…言ったかもしんない、けどそれが何、」
「だ、だから…その……」
情けないくらい声が震える。改めて伝えるだけなのに心臓の音がうるさい。
「俺と、居てくれる……?」
「っ、!」
「ちゃんと、隣に…居たい」
「今度は、守るだけじゃなくて」
「 ……恋人、として 」
数秒、数分静かな時間が流れる。うっしーの返事が一切聞こえない。焦って何か言おうとするとうっしーがその空気を切るように声を出してくれた。
「そ、いうの…」
「えっ?」
「そういうのずるい、」
抱き締めているから顔は見れないけれど、熱が伝わって照れているのが良く分かる。
「断れる空気じゃねぇだろ、」
「……嫌、だった…?」
不安で聞いてしまうとすぐにその返事は帰ってきた。
「嫌なわけあるかバカ」
少し強めの声。それでも、裏ではとても喜んでいるのが丸見えな声。
「……俺も、放っとけねぇって言ったろ」
小さく、うっしーは腕に顔を埋めた。
「だから、ちゃんと隣居て」
「っ、!」
その言葉に嬉しくなって思わず軽く涙が出てしまう。思いっきり抱き締める力を強くしたせいでうっしーの「苦しい」と言う声が聞こえてすぐに離す。
「やぁっと付き合った!!!!!」
「わっ!?」
「2人共長すぎるんやって!」
「え、えぇ、?」
振り返れば、いつの間にか前にいたはずの2人がニマニマとこちらを見ていた。
「聞いてたのかよ!!!」
「いや聞こえるって!!」
「うっしー声デカいんやもん!」
「レトさんまで!?」
「てかガッチさん泣いてる〜!」
「うるさいよぉ!!」
珍しく慌てる俺を見て、2人は楽しそうに笑って分かりやすく茶化してくる。
その横で、
「……お前ら、マジで………くそ、」
うっしーだけは話す数も減って耳は真っ赤。
「照れてる〜」
「うるせぇ!!!」
キヨは悪ノリでいつものように笑い飛ばす。
「いやでも、やっとやなぁ」
レトさんが腕組みをしながら少し安心したように笑う。
「うっしー、仕事終わり毎回ガッチさんに甘いもん買ってこうとしてたし」
「え」
「……は?」
一瞬、思考が止まる。隣のうっしーは言われると思ってなかったのかいつもより低めの声が出ていた。
「え、」
「ちょっ゛、レトルト!!!!!」
うっしーが勢いよくレトさんの元へ歩いていく。
「いやだって本当やん
『これガッチさん食うかな』
『怪我人甘いもん好きそうじゃね?』
『あの人野菜食べらんねぇの可愛いよな』
『無理しやすくなったの俺のせいなんだろうな』
『落ち着いてる雰囲気なくせに天然っていうの面白くね?』
『ちょっと聞いただけだけど剣だけじゃなくてあんまここらではない銃とか使い慣れてるって聞いたんだよな…かっこよ過ぎて死にそう…』
とか…ずっと言ってたで?」
「っ、〜〜〜!!!」
うっしーが完全に固まる。耳どころか顔まで赤い。
「……それって、ほんと?」
「っ、うるさい」
本人に思わず聞くとぷい、と顔を逸らす。でも、荷物の横から見覚えのない包みが少し見えていた。
「……あ」
気付いた瞬間。
「見るな!!!!」
うっしーが慌てて隠す。
「えぇ、可愛い……」
「言うなバカ!!!」
「うっしーかわい〜」
「キヨ黙れ!!!」
久しぶりに、4人で笑った気がした。その時間がとても楽しくて。幸せで。特別な時間だった。
今度こそ。
ちゃんと、隣で。
「幸せにするからね」
「……うるっせ」
その後の輪廻がどうなったかは、未来の俺次第。でもきっと、皆で生きて、幸せに暮らしてると思う。
「え、キスまだ!?」
「キヨ黙れ!!!」
「いや俺ら祝福ムードやん?」
「空気読めよ!!!」
「うっしー顔真っ赤やで」
「レトルトも黙れ!!!」
そんな騒がしい声が森に響く。
……でも、不思議と嫌じゃなかった。
今度こそ。
ちゃんと、4人で進める。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ながぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいいいいいい😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭
長い!長すぎる!!!まだ書きたかったけど長くなりすぎてやめた!!!!!話わけたらいいのにって思われるかもしれませんがね!!!これ短編集なんです!!!私のプライドというものが許してくれませんでした!!!!!
諦めないで何度も繰り返しをする🥷はこんなにもいいのだと伝えたかった。伝わりました?これ。
これを投稿したということは誕生日小説書いたと思いました???書いてません。自分に追い討ちかけてます😇
コメント
8件
感動系…良いですわぁ…🫠 一人で頑張ろうとする🚴を皆の友情、いわば愛で止めて行くの尊い🤦♀️ やっぱお付き合いした後の茶化しが一番和む😭👏💞
なんやねんこれ凄すぎだろもう好き 2万字とは?え?人間が書けるのか?! なんかもうとりあえず好き(*^ω^*)
あー!!!!もう、凄すぎ!!!!! 二万文字も凄いし、内容も凄い…!! もしかして…、この前の雑談の一致しすぎて怖かったやつかい…、笑? てか、まず、ゲームっていう発想が天才!!!!!文章も天才だし…、、!もう…、全てが尊敬!!!!!!神を本当にありがとうございます!!!!分かるわ…。短編集だから譲れないよね!?そこは笑…!!!!!! いいのだと伝わったわ!最高です!!