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「……さぁ、これでいいわね?」

「うん……」

「じゃあ、私は行くけど……

あなたはどうするの?」

「ここにいるよ。ここで待っている。

あの子のことを待っていてあげるつもりなんだ。

ずっと待っていてあげようと思うんだ。

それがぼくの役目だから……」

「……えぇ、そうしてちょうだい。

それがきっと一番良い方法だと思うわ。

私にとってもね……」

「ねぇ、ひとつだけ教えてくれるかな……?」

「あら、何かしら?」

「どうしてきみは、そこまでしてくれるの?」

「……それは、あなたのためじゃないわ。

私の願いのためでもあるのよ。

それに……あなたにも知っておいてほしいの。

私がどんな気持ちだったかを。

そして、これから何をしようとしているのかを。

それを知れば、あなただって分かるはずだわ。

自分の本当の姿を。自分が本当は、どんな存在なのかを……」

「きみは自分の正体を知っているのかい? 自分自身が何者なのか……知っているっていうの?」

「……もちろんよ。

忘れたことなんて一度もなかったわ。

今までもこれからも、私は永遠に変わらない。

私はただの人形であり続けるしかないのよ。

どれだけ願っても……決して変わることはできない。彼は、自分が望むモノを手に入れられるとは思っていない。

それは彼の中だけにあるものなのだから。

それでも、彼は探し続ける。

たとえ無意味であっても……。

そしてまた、別の映像が流れはじめる……。

だが、映し出されるのは断片のみだ。

断片的に映される過去の記録。

まるで映画のフィルムのようなものだ。

そこにあるはずの記憶はない。

だが、ひとつだけ確かなことがある。

これは、彼の瞳の記憶であり、願望であるということ。

つまり、彼だけの物語だということだ。

これは、彼の記憶の物語。

現実とは違う、もうひとつの真実の記録。

だから、これは夢ではない。

「ああ……」

彼の口から声にならない吐息が漏れる。

そこは暗く冷たい闇に満たされていた。

しかし、恐怖はなかった。むしろ安堵感があったのだ。

「やっと会えたね」

暗闇の向こう側にいる人物に向かって語りかける。

相手の顔はよくわからない。ただシルエットだけは見える。

相手は何も答えず沈黙を貫く。それも当然のことかもしれない。なぜなら自分は……

「ずっと君に会いたかったんだよ」

彼は嬉しそうな声で言った。

なぜこんなにも嬉しい気持ちになるのか自分でもよくわからなかった。

相手が自分にとって大切な存在であることはわかるのだが、それ以上のことが思い出せないのだ。

「君は僕を知っているかい?」

彼は尋ねた。

だが、相変わらず返事はなく、相手は無言のまま佇んでいた。

「僕は君のことをよく知っているよ」

彼は、そう言った。

「君は僕と似ているね……」

それは、ただの言葉だったかもしれないし、 彼だけの思い込みであったのかもしれない。

だが、それでも……

あの時の彼の言葉がなければ、 今の私はなかっただろうと思うのだ。

私はきっと……

彼に救われていたに違いない。

私が見ることのできる景色……

それを共有できる人が欲しくて、彼は日記を書き始めたのだ。

それはきっと、ささやかな願いだったろう。

だが、彼の想いとは裏腹に、 その結晶はやがて変質していった。

妄想を暴走させながら……。

そして、最後には狂気へと堕ちてしまった。

その結果が……あの結末なのだとしたら、 とても悲しいことだと思うよ。……少女の記憶の断片……

白い部屋に閉じ込められていた記憶……

彼女はずっと泣いていた。

自分の身体が自分のものでなくなったことを嘆き……

それでもまだ生きていたいと願った。

しかし、彼女が生きるためには……

あまりにも多くの代償が必要になった。

自分が自分でなくなる恐怖……

自分以外の何かになる絶望感……

それは想像を絶するものだろう。

彼女の涙の意味を知る者は誰もいない。

誰もが無関心だからだ。

だが、もし仮に……

この世界に意味などなかったとしても、 それでも、生きたいと望むことは許されるはずだ。

なぜならば、死とは救いでもあるからだ。

自らの命を自ら絶つことでしか、 解放されることのできない狂気の世界。

この少女は何を求めているのだろう……。

なぜこれほどまでに、 孤独な戦いを続けているのだろうか……。

彼女が抱えているのは、闇よりも深い孤独……。

そして、そこから生まれる憎しみと悲しみ。

彼女を縛りつける呪いの正体とは……? おそらく、それは彼女自身にもわからないのだ。

それでも、この世界のどこかにいるはずの、 本当の敵を探し求めている。

その敵こそが、 彼女の運命を変えてくれると信じているかのように……。彼女が失ったものは、大きすぎたのだ……。

この記憶の持ち主は、おそらく死んでいる。

それでもなお、この場所に留まり続けている……。

ここに残っているのは、 あまりにも悲しい記憶だけなのだ。……彼女はなぜ、この街に来たのだろう。

この映像では、わからないことだらけだ。

彼女は、何を思っていたのだろう。

クラヤミソロカル

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