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こういう感じのテヒョナも好き!
アスファルトに反射する熱が僕を突き刺す。あれから僕は度々彼と会うようになった。
僕とは違う独特な価値観を持つ彼の色々な話を聞くのが楽しかった。
「ねぇ、クラゲってどうやって死ぬか知ってる?」
「クラゲ、?分かんないです」
彼は空を見上げながら微笑んで言った。
「傷つくとね、溶けて死んじゃうの」
面白いよねー、と言う彼を眺めながら違和感を覚えた。
目、いつもみたいに輝いてないな、、
彼の話は残酷なものが多かった。溺れてから死ぬまでの時間はどれくらいなのか、マリーアントワネットはどうして処刑されたのか、動物の寿命はどうして人間より短いのか、どうして人は自傷行為をするのか、人が死ぬ出血量はどれくらいなのか、、、
そんな話をする彼の瞳はいつも、軽く恐怖を覚えるほど輝いていたのに。
「海に溶けていくなんて、すごく綺麗。だけど、すごく残酷」
「、、ですね」
「でもおれはそういう死に方がいい」
彼と目が合った。その瞳は驚く程に冷たかった。
「今日は何する?」
「あ、、何しましょうね。ヒョンの家、」
「だめ」
「あ、えっと、ヒョンの家はマンションなのかって聞こうかと、」
「あぁ、、ごめんごめん笑 一軒家だよ」
出会って数ヶ月、まだ1度も彼の家に行ったことは無かった。頑なに入れようとしないどころか場所すら教えてもらえないのだ。
「公園にでも行こうか」
彼は街に出ようとしなかった。いつも2人で川を眺めたり、森の開けた場所で空を見上げたりしてひたすら会話をした。
それでも苦痛を感じないのはきっと、僕が彼に惹かれているからだろう。彼のことがもっと知りたい。何故か強く興味を引かれる。
「ヒョン、、今日は海に行きませんか?」
「でも海は隣町まで行かないと、、」
「バスに乗って。ほら、いつもは歩いて行ける場所ばかりだし。たまには遠出しましょう」
「綺麗、」
バスに乗って2時間。僕たちは海に来た。海とはいえ観光地になるほどは広くないため人はいなかった。
断られるかもしれないとダメ元で誘ってみたがまさか本当に来てくれるとは思っていなかった。何となく気不味くて顔を伏せる。
「どこ見てるの。せっかく来たのに」
目が合う。彼が微笑んだ。
「綺麗だね」
音が聞こえなくなった。風も感じない。僕の神経全てが、彼に引き込まれているようだ。目が離せない。
「ねぇ、おれに惹かれてるでしょ」
彼の右手が僕の頬に触れた。冷たい。
「おれに堕ちていってるのが分かる。目が逸らせないのもそのせいだよ」
喉に何かがつっかえた様に声が出なかった。
「ジョングガ」
あぁ僕は、この人にどうしようもなく恋してる。今までにないくらいに。知りたい。もっと、深くまで彼を知りたい。
「少しだけ入ってみようよ」
何事も無かったように無邪気に笑いながら歩いていく彼の後を追う。
「すごいよジョングガ。見て、魚がいる」
「魚ぐらいいますよ、海なんだから」
「なんでそんな冷たい言い方するのー笑」
「本当のことを言っただけです」
この感じ、何だか懐かしい。誰かともこんな会話をしたような気がする。誰だったのか思い出せない。僕の頭の中は、彼でいっぱいだった。
「そろそろ帰ろうか」
彼と並んでバスを待つ。
「お母さん、アイス買って!」
「今日はもう食べたでしょう?また明日ね」
隣で同じようにバスを待っていた親子の会話をただ聞いていた。
覚えていないだけで僕にもあんな事が言えた時があったのだろうか。母にアイスをねだるなんて、母と2人で出掛けるなんて。習い事と勉強だけの日々しか記憶に残っていない。おかしいのは分かっている。物凄く腹が立った。これはきっと嫉妬だろう。僕には無かった幸せを見せつけられていることに対しての。
「、、、ジョングガ、」
「はい」
「あの角を曲がった所に自販機があったよね。悪いけど水を買ってきてくれないかな、喉乾いちゃって。バスはまだ来ないと思うから」
「あぁ、分かりました。行ってきますね」
水を買って帰ると、あの親子はいなかった。バスを待たなかったのだろうか。
「どうぞ」
「ありがとう、助かったよ。お金返すね」
「いいですよそんなの笑」
「そう、ありがとう」
少しするとバスが来た。
「さっきの親子、バス待ってたんじゃなかったんですかね」
「あぁ、そういえばどこか寄り道するとか話してたよ」
「そうなんですね」
彼が微笑む。その瞳からは何も読み取れなかった。
……To be continued